ルーシー・リュー Photo by Eric Charbonneau

 実は最強なのに、中身は子どものヒーロー・シャザム(ザッカリー・リーバイ)と、迫り来る“神”との闘いを描く、DC最新作のバトル・アドベンチャー『シャザム!~神々の怒り~』が、3月17日(金)から日米同時公開となる。今回シャザムと相対するのは、“神の娘”の三姉妹。三者三様の個性でシャザムを翻弄(ほんろう)するのは、冷酷で聡明(そうめい)な長女ヘスペラ(ヘレン・ミレン)、凶暴で野心が煮えたぎる次女カリプソ、姉妹の中でも異端で謎だらけの三女アンというくせ者ぞろい。今回は、カリプソとアンを演じたルーシー・リューとレイチェル・ゼグラーに話を聞いた。

-今回、大ベテランのヘレン・ミレンさんも加えて、親子孫のような不思議な姉妹を演じてみて、いかがでしたか。また、女神を演じた感想を。

ルーシー ヘレン・ミレンとの共演は本当にスリリングでした。彼女はカメラが回っていてもいなくても、それこそ女神のような存在で、まれにみる寛大な心の持ち主。私たち2人の面倒もよく見てくれたし、撮影時間外もいろいろな話を聞かせてくれました。

レイチェル ヘレンはとても謙虚だし、気さく。それにいろんな冗談を言って笑わせてくれたので、こちらも緊張が解けました。多分いろんな人も彼女に会うと気構えてしまうのでしょう。だからあえて気さくにしているのかもしれません。私がヘレンと初めて会ったのは衣装部屋でした。私はびっくりしてしまいましたが、「どうも、はじめまして」とにこやかにあいさつしてくれました。彼女からは、気品や、女神らしさについて、いろいろと学んだ気がします。彼女の姿を見ているだけで学ぶことが多かったです。

ルーシー 女神を演じる上でも、品格と重みを持って演じることについて教わりました。女神は、大群衆を目の前にするときも、まるでモーゼが目の前の海を割ったかのように、道が開けることを当然のことと思っているような表情をするといいと。ヘレン自身もそのように演じていました。しかも面白おかしく。

-アンとカリプソは真逆の性格ですが、撮影現場ではいかがでしたか。それぞれ役柄と対照的な部分や、似ている部分はありますか。

レイチェル 私は結構アンに似ているところがあると思います。ませているところがあるから、割と素で演じることができました。年齢が6000歳ということにも、あまり違和感を抱かずに演じられました(笑)。ただ、アンとカリプソとの関係は、私とルーシーとの関係とは全く違います。姉妹愛はあるけれど、ライバル意識はありません。カリプソがアンに向かって「つまらない女!」と意地悪を言うシーンがあるけれど、テイクを終えると、「今のは意地悪だったね、ごめんね」とルーシーに謝られました。

ルーシー 三姉妹の力学については、製作陣は意識して伏線を張っていたと思います。というのも、途中から3人の関係性が変わるので。最初はカリプソの味方をしていたヘスペラが、後半ではアンの味方をするようになる。3人の関係性がそうやって変化すると、リアルさが出てきます。撮影現場3人はとても相性が良く、自然でした。そういう意味では、とてもラッキーだったと思います。プレスツアーでも、3人1組でやらせてもらえるようにお願いをしたほどでした。私にはカリプソと似ているところはあまりないと思っています。彼女は、自分の行動が周りにどういう影響を与えるかに関しては無関心だし、ミッションを追求する上での視野が狭い。私は、カリプソよりも物事を客観視することができるし、もっと柔らかい人間だと思います。

-『シャザム』の1作目を見たときの感想と、今回の脚本を読んだときの印象は? 何か変化はありましたか。

レイチェル 1作目は大好きでした。とても心の温まる映画で、『E.T.』(82)や『グーニーズ』(85)のような、古いアンブリン映画を思い起こさせるところがありました。美しい家族の物語である一方、異世界を描くSF的な要素も満載です。でも根底にあるのは家族愛の物語。今回の脚本を読んだときは、三姉妹の要素が加わったのはとてもいいチョイスだと思ったし、二つの家族が対照的に描かれているところが、神々の領域と人間界とを対比させる上でも効果的で、面白いと思いました。

ルーシー 1作目は軽やかだったし、笑えたし、とても面白いと思いました。スーパーヒーローになる子どもたちの世界を描いているわけですが、その世界観は純粋無垢(むく)。だから大人だけではもたらすことができない特別な味わいがあります。そういう遊び心が満載な感じが良かったです。

 今回は多くの続編と同じように、スケールアップしていて、より幅広い客層に向けた作品に仕上げています。ところが、今回はスーパーヒーロー同士の対決ではなく、ギリシア神話の女神たちとの対決という、一段と遠い異世界を描いています。そうやって、この先も自由にストーリー展開を模索できるように作っているところがスマートだと思うし、この作品を特別なものにしていると思います。ヒーロー物といえば、悪党や富豪、世界を滅ぼそうとたくらみ科学実験をする悪人などとの対決がお決まりだけど、このように女神を登場させることはあまりないですよね。

-最後に、日本の観客に向けたメッセージと見どころを。

レイチェル この映画は魔法、ドラゴンなど、素晴らしい視覚効果と笑いが満載で、キャスト同士の愛が伝わる映画だと思います。日本の皆さんにぜひ見てほしいです。

ルーシー 私は日本が大好きです。日本の文化、言葉、日本の皆さんが大好きだし、日本ほどファンの愛があふれている国はないと思います。そして日本を訪れるたびに皆さんの歓迎ぶりに感動します。

 レイチェルの説明に付け加えていうなら、これは遊び心と喜びにあふれている映画。最近はいろんな映画が作られているから、さまざまなCGやユニバースやマルチバースが出現して、追い駆けきれないところまで来ているけれど、この作品は神話のクリーチャーやキャラクターが登場するから一味違うと思います。そして思いっきりエンターテインメントをやっています。だから、ただただ2時間を楽しんでもらえたらうれしいです。

 日本の皆さんは映画をリピートして見ることが多く、あれこれ調べたり、いろんな話題で盛り上がったりするらしいですね。それは他の国でも見られる傾向だけど、日本はアニメでも最先端を行っている。世界中のさまざまな創造性につながるような、種をまく国なのだと思います。そんな日本の皆さんに、この作品を見てもらえるのはとても光栄なことです。

(取材・文/田中雄二)