西村寿恵子役の浜辺美波 (C)NHK

 NHKで放送中の連続テレビ小説「らんまん」。“日本の植物分類学の父”牧野富太郎博士をモデルに、愛する植物のため、明治から昭和へと激動の時代をいちずに突き進む主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の波瀾(はらん)万丈な生涯を描く物語だ。東京で研究に打ち込む万太郎が思いを寄せる女性が、和菓子屋・白梅堂の一人娘・西村寿恵子。相思相愛の万太郎と寿恵子は、やがて夫婦として共に人生を歩んでいくことになる。寿恵子役の浜辺美波が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

-寿恵子と万太郎はもうすぐ結婚するようですが、寿恵子は万太郎のどんなところに引かれたのでしょうか。

 万太郎さんに比べると、寿恵子はすごく狭い世界で生きてきたんです。学校にはほぼ行っていないので、友だちもいないですし、付き合いがあるのは、店のお客さんのほかは、母親のまつさん(牧瀬里穂)と、店の菓子職人の文太さん(池内万作)、みえ叔母さん(宮澤エマ)ぐらい。なので、高知から東京に出てきた万太郎さんが、いろんなところに植物採集に出かけたり、東大に通ったりして、自分の知らない世界を見せてくれるのは、日本から海外を見るぐらいのギャップがあったんじゃないでしょうか。そこから、「この人が見る世界の広さを見てみたい」と思ったのかなと。

-なるほど。

 もちろん、寿恵子にも抽象的な夢はありますが、それをかなえたいという確固たる思いがあったわけではないので、万太郎さんの夢を聞いてすごく驚いた。だから、自分の夢をかなえるために突き進んでいく万太郎さんの姿をずっと見続けたくなった。そんなふうに、伸び伸びとした人柄に引かれていったのではないかなと思っています。

-万太郎に思いを寄せていく寿恵子を演じる上で心掛けたことは?

 万太郎さんと最初に出会ったときの寿恵子は17歳なので、少女らしい恋愛を心掛けました。そこからだんだん関係が深まっていく中で、大人の恋愛的な部分を見せていけたら…と思っていました。

-女性として、万太郎と寿恵子のカップルに憧れる部分はありますか。

 一緒に話しているとお互いに楽しくなって、他の人には見せない表情になるなど、2人だけの関係性があります。他の人に見向きもせず、お互いを尊重し合って、2人だけの気持ちのやり取りがあるのは憧れます。高藤(雅修/伊礼彼方)さんは寿恵子に熱烈アプローチをしていましたが、入り込む隙はなかったんじゃないでしょうか。

-寿恵子のモデルになった牧野富太郎博士の妻・壽衛(すえ)さんから演技のインスピレーションを受けた部分はありますか。

 壽衛さんの写真を見たら、笑顔いっぱいで天真らんまんな富太郎さんと違って、一点を見詰めるような写真が多かったので、意思の強い、真っすぐな女性という印象を受けました。なので、演じる上でもそういう心は受け継いでいこうと。また、最後まで添い遂げたことから、富太郎さんのことを思っていたことは間違いないので、その夢を一緒に支えた壽衛さんの力強さはくみ取っていきたいと思いました。

-これまでの中で印象に残っているシーンは?

 舞踏練習会発足式のダンスシーンはとても印象に残っています。(ダンスの相手である)伊礼さんと何度も練習を重ねてはいたのですが、「こうすればいい」という最後の答えが見つからないまま本番を迎えたんです。そうしたら、本番中に「これが答えだったんだ」というものが見つかって。おかげで、達成感もあったので、終わった後は2人でハグしてしまいました。劇中では高藤さんとの決別のダンスのように描かれていましたが、撮影は私が伊礼さんとご一緒する最終日だったので、すごくすがすがしいラストを迎えられました。

-それは、ご自身にとってどんな経験になりましたか。

 撮影が終わってからダンスの練習に行くことも多く、「足が重いな」と感じることもあったのですが、一度も休まずに通うことができました。当たり前と言えば当たり前ですが、逃げずに頑張れたことは、自分の中でささやかな自信になりました。それも、伊礼さんがいてくれたおかげです。伊礼さんの明るさや前向きな姿勢にすごく助けられました。私は人見知りの部分があるのですが、今回そうやって伊礼さんとすてきな関係性を築くことができたので、これからも初対面の方といい関係性を築いていけたらという希望にもなりました。

-今後、万太郎と寿恵子は夫婦として歩んでいくことになりますが、長い人生を演じるのは朝ドラならではの特徴です。その点、役者として面白さややりがいをどう感じていますか。

 この先どうなっていくのか、私にもまだ分からないことが多いんです。ただ、山あり、谷あり、いろんなことが起きる中、それを乗り越えて成長しつつ、17歳の寿恵子とは違った物ごとの捉え方をしていくんだろうなと思っています。神木さんからは、今後どう演じていきたいのかのお話を伺っているので、メークなども含めて、寿恵子はどうしようかと考えているところです。母親になったときは声もやや低くしてみるなど、女性ならではの成長を見せられたらいいなと思っています。私自身も楽しみです。

-撮影が進む中で、17歳の頃の寿恵子との変化をどのように感じていますか。

 17歳の寿恵子を演じるときは、監督から「時代劇ということは意識せず、今の高校生ぐらいの感覚で、もっとキャピキャピした感じに」と言われていたので、少女性みたいなものを重視していました。今振り返ってみると、だいぶふわふわした感じです。現在は結婚後の場面を撮影中ですが、家庭を支えながら、すぐに植物採集に行ってしまう万太郎さんの代わりにお金のやりくりもしなければいけません。なので、少女のままではいられないという強さが出始めたところかなと思っています。

-最後に、これからの見どころを教えてください。

 波瀾(はらん)万丈な万太郎さんと一緒なので、順風満帆に進むわけはなく、高知へ行ったり、また東京に帰ってきたりと、いろんなことが起きます。そういったさまざまな出来事を2人が前向きに乗り越えていく姿が見どころです。寿恵子としては、万太郎さんが起こすいろんな波を一緒に乗り越えていくことで、女性として、1人の人間として、成長していけるのではないかと期待しています。視聴者の皆さんに、さらに元気を感じていただけるような作品を目指していきます。応援よろしくお願いします。

(取材・文/井上健一)