『クロコーチ』公式サイトより

昭和の有名な未解決事件、三億円事件の謎に迫ったTBS系金曜10時の『クロコーチ』がいよいよ佳境に入っている。視聴率は7話までの平均が9.51%と今ひとつパッとしないが、見応えは十分だ(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。

『リーガルハイ』が予想通りの面白さとクオリティーなら、『クロコーチ』は予想以上の仕上がりといったところか。

三億円事件の犯人がまだ生きているという仮説に基づいて、ひとつの結論まで描こうとしているこのドラマ。結末を迎える前に、ここまでの流れをおさらいしておこう。

 

キャストの交代も影響は最小限に

『クロコーチ』の原作は、週刊漫画ゴラクで連載中のリチャード・ウー(作)とコウノコウジ(画)による同名コミック。リチャード・ウーというのは長崎尚志のペンネームで、浦沢直樹とともに映画『20世紀少年』などを作った人だ。

この作品の主人公は、政治家や実業家の弱みを握って多額の金とさまざまな情報を得ている悪徳刑事・黒河内。違法捜査から証拠隠滅まで何でもやるが、その大きな目的は、三億円事件の真相に迫ることだった。ドラマではその黒河内を長瀬智也が演じている。

原作とドラマの大きな違いは、まず黒河内の相棒である清家を男性から女性にしていること。原作では清家真吾という男性のキャリア管理官だが、ドラマでは清家真代というキャリアの女性警部補になっている。演じているのは剛力彩芽。これは原作通りにやると、さすがに登場人物が男ばかりになってしまうからだと思う。

常盤貴子と深津絵里が出演していた『カバチタレ!』や、綾瀬はるかが出演していた『鹿男あをによし』など、登場人物の性別を原作とは変えてドラマ化するケースは意外とある。

女性キャストの投入ということでは、科捜研の研究員として、澤眞知子という人物もドラマのオリジナルキャラクターとして登場させていた。この澤は香椎由宇が演じていたのだが、妊娠による体調不良のため第3話で降板。代わりに芦名星が斑目八重子という役で第4話から出演している。

澤はちょっとレズっ気のあるキャラクターで、マジメな清家との絡みがドラマのアクセントになっていたのだが、斑目も同じタイプの人間という設定にしていて、配役交代の影響を最小限に抑えている。
 

キャストの途中降板というのは大きな出来事なので、そんなに多くはないと思うが、古くは山口百恵が主演していた『赤い疑惑』で八千草薫から渡辺美佐子へ、NHKの朝ドラ『春よ、来い』では安田成美から中田喜子へ、2003年の『いつもふたりで』では柏原崇から葛山信吾へ、2005年の『がんばっていきまっしょい』では内博貴から田口淳之介へ代わった例などがある。

そして、もうひとつ原作とかなり変えているのが、渡部篤郎が演じる沢渡のキャラクターだ。原作の沢渡は単なる政治家だが、ドラマでは元警察官僚で、警察内部に存在する組織「桜吹雪会」の中心的な人物になっている。

この桜吹雪会というのが三億円事件を契機に作られた組織で、警察関係者が絡む犯罪や警察の権威を失墜させる事案を裏で処理している。原作と同じようにドラマの沢渡も過去の事件への関与で逮捕・勾留されたりするのだが、そういう状態からも桜吹雪会のメンバーに対してさまざまな指示を出せるようになっているところが、ドラマをよりスリリングにしている。