青木琴美氏、小泉徳宏監督

佐藤健主演で公開中の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』。累計発行部数450万部を誇る原作漫画を現在も連載中の青木琴美氏と実写化のメガホンを握った小泉徳宏監督の対談が実現。漫画原作の実写化への思い、作品に込めた思いを語り合った。

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若くして「天才」と称されるサウンドクリエイターの秋と才能を見出されて歌姫として成功の道を歩み始める女子高生の理子の恋を軸に物語は展開する。

最初に青木の元に映画化の話が届いたのは、原作コミックの1、2巻が同時発売された頃というからかなり早い段階。青木は当初「自分でもまだ話がどう転がるか分からない時期で、無理だと思った」という。過去に「僕は妹に恋をする」「僕の初恋をキミに捧ぐ」の2作が映画化されているが、いずれも連載終了後のこと。「連載が終わってキャラクターたちとお別れするのって寂しいんです。それが映画という形で『またあの子たちに会える!』といううれしさがありました」。今回はいまなお連載中。過去2作とは勝手が違ったが「プロデューサーと何度もお話して、最終的には映像として観てみたいと思えた」と明かす。

小泉監督にとっても漫画原作の映画化は初挑戦。「過去に自分が観てきた漫画原作の映画を観て、抱えてきた思いをこの作品にぶつけた」という。「原作を再現しようとするあまり、2時間の映画としてまとまっていない作品にはしたくなかった。リスペクトするのは当然。でも囚われ過ぎず、むしろ『こっちが原作だ!』くらいの気持ちで(笑)。そうやって強気で原作を読む内に、本当に描くべき“芯”の部分が見えてきました」。

「キャラクターの設定を原作から変えないこと」、そして何より「カッコいい音楽」。当初からふたりが考える本作の実写化における「軸」はピッタリと一致していた。その上で変える部分は変え、再現すべきシーンは忠実に再現した。象徴的なのは冒頭のヘリコプターのシーン。原作の第1話で読者の心を掴んだオープニングのシーンをスタイリッシュに再現し、生みの親である青木をして「何であんなにカッコよく撮れるんですか?」と言わしめた。

青木は続ける。「あのシーンは漫画だからこそとも言える表現。それを映像にすると往々にして寒々しくなるものだけど、映画を観てカッコいいと思える。ここに限らずそういう場面がたくさんありました」。小泉監督は「あえて言うなら僕自身がすごく恥ずかしがりだから、寒々しくならないように、という頭が常に働いていたかも。その上で、カメラ、衣裳やメイク、ロケーション、音楽、そして俳優の演技などなど、あらゆる要素からベストと思われる選択をしていって、その積み重ねがいい結果として現れたのだと思う。決して『これさえあれば』という魔法のスパイスがあるわけではないですよ。あったら欲しいくらい」と原作者の最大限の称賛にはにかむような笑顔を浮かべた。

『カノジョは嘘を愛しすぎてる』
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