菅井友香 (C)エンタメOVO

 俳優として舞台作品に出演するだけでなく、乗馬という特技を生かし、競馬番組の総合司会も務めるなど幅広い活動を行っている菅井友香。10月28日から開幕する、明治座創業150周年記念「赤ひげ」には、女中のお杉役で出演する。菅井に本作への意気込みや役どころについて、さらには今後の目標や俳優業への思いなどを聞いた。

-最初に脚本を読んだときの率直な感想を聞かせてください。

 江戸時代の貧困や病に本気で向き合う赤ひげ先生をはじめとした医師の皆さんや患者さんの思いを強く感じて、誰もが一生懸命生きていたんだとすごく考えさせられる作品でした。命と向き合う姿が真摯(しんし)に描かれているので、胸に迫るシーンが多い作品ですが、笑える場面もあって、盛り沢山な内容になっていると思います。

-菅井さんが演じるお杉という人物は、どのような役柄ですか。

 お杉は病を抱えているお嬢様のお世話をしている女中ですが、とにかく一生懸命でたくましい女性です。強い責任感を持ってひたむきに小石川養生所で働きながらも、一人の女性としての顔ものぞかせていて、その間で葛藤しているのも感じました。

-演じる上では、どんなところを意識していますか。

 お杉の懸命に責任を果たそうとする姿や、人生を選択しながら養生所の皆さんと共に色々なことを乗り越えていく姿に、少しでも勇気を届けられたらいいなと思っています。お稽古をしていて、お杉は人にしっかり物を伝える強さを持っていると感じているので、芯を表現できるように特訓中です。

-菅井さんとしては、今回、初めて和装でのお芝居をするというのも見どころの一つでは?

 そうなんです、本格的な着物やカツラをつけてのお芝居は初めてなので、ビジュアル撮影のときからすごく新鮮でした。この作品に入る前は、自分で浴衣を着ることもできなかったので、なるべく自分でできるように初めて着付け教室に通って、稽古の前に勉強もしました。

-主人公の新出去定こと赤ひげ役は、船越英一郎さんが務めます。船越さんは本作が初舞台となりますが、今回の共演で楽しみにしていることを教えてください。

 船越さんは、自分が小さな頃からテレビの中で活躍されていた存在でしたので、初舞台と聞いて驚きましたが、そんな船越さんの挑戦の一部として関わらせていただけることは本当にありがたいことだと思っています。お優しい方で、最初にお話したときも、「グループの曲を聞いてたよ」とか「その衣装似合っているね」とおっしゃってくださったので、すごくうれしかったです。

-ところで、エンタメOVOでは2月に上演された「新・幕末純情伝」の稽古前にも取材をさせていただきました。そのときは、グループ卒業後、初舞台主演ということで緊張しつつも気合いが入っているのを感じました。実際に公演を終えたときの率直な思いを聞かせてください。

 卒業後初主演で、しかもつかこうへいさんの作品でエネルギーがすごく必要でしたので、いかに自分の限界を超えられるかということが毎日の課題でした。今、改めて振り返ってみると、まだまだだなと思いますが、あの当時の自分のベストは出せたと思います。全力でやり切ることはできたので、何か一つ越えられたのかなという思いはありました。

-稽古場に男性がいることに慣れないと話していましたが、今は慣れましたか。

 慣れました(笑)! 「新・幕末純情伝」のときに、皆さんがざっくばらんにお話をしてくださったので、ラフな気持ちで過ごせましたし、とても居心地が良かったです。

-舞台に立つことや役を演じることに対する思いに変化はありましたか。

 1つの作品を作り上げるために、みんなで試行錯誤するという過程が私はすごく好きです。そこに役者としてのやりがいを感じますし、そうしてみんなで一生懸命に作った作品が見てくださった方の力になって、ポジティブな感情が生まれたらうれしいなと思います。

-グループを卒業して早くも1年が経ちます。この1年はどんな1年でしたか。

 今、改めて振り返ると、グループでは大人数だからこそできることがあったんだなと感じました。ですが同時に、1人になったからこそ挑戦できることもありました。この1年は、お仕事も、私自身の人生においても、いろいろと挑戦をさせていただいた1年だったと思います。20代のうちに経験してみたいと思っていたことをできる限りやらせていただいたので、彩り豊かになった1年でした。

-どんな挑戦をしたのですか。

 1人旅や留学をしました! オーストラリアに1カ月間留学をしたのですが、初めて1カ月間もお仕事をお休みさせてもらったんですよ。語学学校に通って、普通の学校生活を送って、たくさんの国際的な出会いがあったので、改めて自分を見つめ直すきっかけにもなりました。少しは自立できたように思いますし、ポジティブになれた感じがします。

-そうした経験を経て、仕事に対する思いも変わりましたか。

 変わったというよりは、むしろ、変わらずに何でも頑張っていきたいと思いました。自分のやりたいことについてもう一度考え、やっぱり作品を作るのが好きなんだと改めて実感しました。グループ時代を通して、私はとても恵まれた環境にいると思うので、改めて感謝の気持ちが芽生えましたし、8年もこの芸能の活動を続けさせてもらえるとは本当に思ってもいなかったので、人生分からないなと思いました(笑)。

-現在は、競馬番組の総合司会を務めたり、ラジオ番組に出演したりと、俳優業以外にもさまざまな活動をしていますが、今後はどんな活動をしていきたいですか。

 今年を振り返ると、競馬に携わる機会をいただけたことは大きな変化だったと思っています。大好きな馬に関するお仕事ができることはとてもうれしいですし、今も学びながら楽しんで番組MCを務めさせていただいています。私自身、何にでも挑戦していきたいと思っていますので、任せていただける限り全力で頑張ります。俳優業でも、すてきな作品にたくさん出会い、いいものを届けられる人になりたいです。

-ところで、本作の赤ひげは、病を治すことで、人に幸せを届けています。菅井さんにとって、幸せを感じる瞬間は?

 いっぱいありますが、私は新しいチャレンジができることです! 新しいことにチャレンジするのは緊張しますが、変化がないと進化できないと思うんです。私、ずっと家にいると顔色が悪くなっちゃうんですよ(笑)。ドキドキやワクワク、チャンスをつかもうとする気持ちが生きている実感につながっているのかなと思います。

-では、今、現在、チャレンジしたいと思っていることはありますか。

 たくさんあります! お仕事では、舞台に出演させていただくことが多かったので、映像のお仕事もチャレンジできたらうれしいです。昔からの夢で、いつか馬術経験を生かして馬に乗る役を任せていただけるよう頑張りたいです。その日のために、また時間を見つけて乗馬のレッスンに行きたいと思います!

(取材・文・写真/嶋田真己)

 明治座創業150周年記念「赤ひげ」は、10月28日~11月12日に都内・明治座、12月14日~16日に大阪・新歌舞伎座で上演。