家電量販店の店頭でもポータブル電源は常設展示に

【注目集めるポータブル電源・Vol.1】家電量販店ではポータブル電源の常設コーナーを設ける店舗が増えている。ポータブル電源の発売メーカーやブランド、ラインアップは増加しているが、製品について知らないことが意外と多いのではないだろうか。購入の検討時や製品選びで押さえておきたいポイントを解説する。

ポータブル電源とモバイルバッテリはどこが違うのか

このところ、おすすめ製品を紹介するWebサイトも増えて注目度が急激に高まってきたポータブル電源。ポータブル電源はそれ自体で機能せず、電力を必要とするほかの製品と組み合わせることではじめて機能するものだ。表示部以外にこれといって見える形の可動部はなく、充電や給電を繰り返す役割しかない。

家電量販店の店頭で展示品を見ても、極論をいえばただの箱だ。デザインはともかく、展示している製品群から用途やニーズに合った製品を選ぶには、事前にしっかりと調べておくことが必須となる。

本体に充電して、ほかの製品に給電する機器としてモバイルバッテリがある。用途としてはポータブル電源と同じだが、そもそも両製品に明確な定義付けはない。それぞれの呼称で販売されている製品を比較する限り、ほかの製品に供給する出力の大きさと出力端子が異なっているぐらいしか差はない。

モバイルバッテリはスマホやタブレットへの電力供給を目的として最大出力が100W未満、出力端子はUSBポートのみという製品が多い。モバイルバッテリ本体への充電はUSB経由、1回のフル充電でスマホやダブレットへは複数回の給電が可能だが、ほぼ10回未満と考えてよい。

ポータブル電源はモバイルバッテリよりも出力が大きく、出力端子はUSBポートのほかにAC電源やシガーソケットに対応。また、ポータブル電源への充電はAC電源やシガーソケット、ソーラーパネルなどに対応している。

これらのほかに、そもそもモバイルバッテリとポータブル電源は本体のサイズや重量も大きく異なり、製品価格にも大きな違いがある。

ビジネスでの出張や交通インフラを利用する旅行などではスマホやタブレット、ノートPCへの給電用としてモバイルバッテリ。キャンプや自宅でAC電源を必要とする機器の使用はポータブル電源という使い分けを考えるとよいだろう。

内蔵のリチウム電池は2種類のタイプがある

ポータブル電源は家庭の壁にあるAC電源やUSB、車のシガーソケット、太陽光を受けるソーラーパネルから本体に充電する。本体に入ってきた電力は内蔵の充電池に溜められ、各出力ポートから接続機器に電力を供給する仕組みである。

充電池に採用されているのがリチウムイオン電池。一般的にポータブル電源で使用されているリチウムイオン電池を大別すると、三元系リチウムイオン電池(以下、三元系)とリン酸鉄リチウムイオン電池(以下、リン酸鉄)の二種類に分けられる。

三元系とは、主にレアメタルであるニッケルとマンガン、コバルトの3元素を電池の正極の主材料とし、リン酸鉄は文字通りリンや鉄が正極の主材料。最近ではリン酸鉄の採用が増加しているが、それぞれにメリットとデメリットがある。

リン酸鉄のメリットは充放電を繰り返せる回数が三元系よりはるかに多いため寿命が長く、安全性も高い。さらに自然放電も少なく、最近の内蔵充電池の主流となっている。一方で三元系よりも充電池のサイズが大きくなり、製造工程におけるコストによって三元系よりも価格が高くなりがちだ。製品を選ぶ際は、それぞれのメリットとデメリットを踏まえておこう。

使用したい機器を想定して容量を選ぼう

ポータブル電源の容量は100W程度~3000Wを超えるものまで幅広い。ポータブル電源を選ぶ際に気をつけたいのは、接続して電力を供給したい機器が何台あり、その機器すべての総出力がどのくらいのW数になるかを把握しておくことだ。

例えばキャンプ場にホットプレートを持って行って料理を作りたいという場合、ホットプレートの消費電力が1200Wだとすると、それ以上の容量があるポータブル電源でなければホットプレートに電力を供給できない。「使用したい機器の消費電力<ポータブル電源の容量」が使用上の最大の注意点だ。

注意したいポイントはもう一つ。上記の消費電力1200Wのホットプレートは1時間使用した際の電力量で、2時間の連続使用だと×2で2400Wとなる。容量が2000Wのポータブル電源だと理論上、電力を供給できる再長時間は1.2時間となり、2時間は使えない計算となる。

また、同時に使いたい機器が3台ある場合、当然AC電源の出力ポートも三つ必要。仮に三つあったとしても3台の合計消費電力がポータブル電源の容量よりも大きい場合は、前述のように電力供給ができなくなる。

このような点から、ポータブル電源を選ぶときは最低限使用したい機器の合計出力や使用想定時間を考えた上で、余裕のある容量の製品を選ぼう。

ポータブル電源の寿命を左右する充放電サイクルとは

スマホのバッテリを長期間使用していると残量の減りが早くなり寿命を迎えるのと同様に、ポータブル電源にも寿命がある。寿命が近づくと、フル充電までの充電時間が今までよりも長くかかったり、充電できる容量が減ったりして、ポータブル電源としての機能性がダウンしてしまう。

この寿命を左右するのが充放電サイクルの回数だ。100%のフル充電状態から残量0%になるまでほかの機器に電力を供給する過程を「充放電サイクル」という。充電の回数=充放電サイクルではないので注意しよう。

ちょっとややこしいのだが、容量2000Wのポータブル電源を例として整理すると、100%のフル充電から1回の使用で2000W使って残量0%になった場合は1回とカウント。1回で1000W使い、充電をしないまま2回目でも1000W使って残量0%になった場合もカウントは1回だ。

また、1回目で700W使ってフル充電し、2回目で800W使った後、3回目で500W使ったという場合も1回とカウントする。つまり、充電回数や使用回数、残量とは関係なく容量分を使い切った時点で1回とカウントするのだ。

ポータブル電源の寿命をサイクルでカウントすると、500~4000回と幅が広く、保管や使用環境によっても寿命は変わる。前述のリン酸鉄は三元系に比べて3~5倍の寿命があるといわれ、仮に4000回だとすると、毎日1回で容量を使い切るような使い方をしても4000日、つまり10年以上は使用が可能ということだ。

ポータブル電源は決して安価な製品ではない。容量にもよるが、10万円を超える売価の製品も多い。それだけに用途を想定した上で、上記のポイントに気をつけて製品を選ぼう。