映画の発展に尽力した今は亡きふたりの映画人、川喜多かしこと高野悦子が世界の埋もれた名画の発掘・上映を目標に岩波ホールを拠点に立ち上げた活動「エキプ・ド・シネマ(フランス語で「映画の仲間」の意)」。その発足40周年を今月迎えたのを記念して、現在、鎌倉市川喜多映画記念館で企画展<世界に名画を求めて~エキプ・ド・シネマの40年~>が開催中だ。
「私個人としては作品ごとに当時の想い出がよみがえりました」と語るのは岩波ホールの岩波律子支配人。この言葉が物語るように今回の企画展には、第1回上映作品となるインドの巨匠、サタジット・レイ監督の『大樹のうた』からはじまり、『八月の鯨』『宋家の三姉妹』など、現在まで上映された世界46か国、全210作品のポスターがずらりと並ぶ。
ほかの展示も劇場パンフレットや来日時の監督をおさめたパネル写真など、当時がしのばれる品々ばかり。その資料の数々に触れると、いかにエキプ・ド・シネマであり岩波ホールが、世界各国の映画を通して、多様な文化や芸術を日本に紹介してきたかが分かるに違いない。それはあらゆる国の映画が観られる現在の状況を作ることに、大きな役割を果たしたといっても過言ではないだろう。岩波支配人は「よくこれだけ多くの国の映画と監督を紹介できたなと思います。でも、それも皆さんの支えがあってこそ。4月5日(土)から公開となる『ワレサ 連帯の男』のアンジェイ・ワイダ監督をはじめ縁の深い監督たちもそうですが、なによりも支持してくださる“映画の仲間”である観客の皆さんがどの作品にもいてくださった。そのことに深く感謝します」と40年を振り返る。会期中の今月22日には<エキプ・ド・シネマ40周年のあれこれ>としたトークショーを実施。「題名通り、これまでのあれこれを(笑)いろいろとお話したいと思います」と岩波支配人は語る。
また、<エキプ・ド・シネマ40周年記念作品>として公開が始まった105歳の巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『家族の灯り』も注目。「おそらく最後のフィルム上映になると思います」と岩波支配人が語るように本作の公開後、岩波ホールはフィルム上映の映写機を残しながらもデジタル上映へとシステムが変わる。劇場が新たな歩みを始める前の感慨深い上映になることは間違いない。なお、現在、同劇場でもこれまで上映された全作品のチラシを年度事に展示中。劇場を訪れた際はぜひチェックしてほしい。
<世界に名画を求めて~エキプ・ド・シネマの40年~>
3月30日(日)まで鎌倉市川喜多映画記念館で開催中
入場料一般200円/小・中学生100円
『ワレサ 連帯の男』
4月5日(土)岩波ホールほか全国順次ロードショー
『家族の灯り』
公開中
取材・文・写真:水上賢治