©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社

 ベストセラー作家、東野圭吾のミステリーを映画化した『ある閉ざされた雪の山荘で』が1月12日から公開となる。人気劇団“水滸”が実施した新作舞台の主演オーディション。四日間の合宿形式で行われるその最終選考に、7人の役者たちが集まってくる。だが、その最中に連続殺人が発生し、メンバーたちが1人、また1人と姿を消していく。果たしてこれは、フィクションなのか、それとも…? 間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵ら人気俳優が一堂に会した本作の主演を務めるのは、重岡大毅。映画単独初主演作となる本作の舞台裏や役者としての意気込みを聞いた。

ーオファーを受けて、台本を読んだときの印象は?

 僕は常に、「どんな球でも打ち返しまっせ!」という野球のバッターのような気分で、頂いたお仕事には全力で向き合うつもりでいます。ただ今回は、その球を投げてくるピッチャーが、東野圭吾先生と聞き、心の中で帽子を脱ぎ、「お願いします」とまず一礼してから、心して台本を読ませていただきました。もちろん、作品に向き合う気持ちはいつも同じですが、「サスペンス・エンターテインメント」をうたっているこの作品では、どんな事件が起きるんだろうと。その驚きは、最初に読んだときしか味わえないな、と思って。

ー確かにそうですね。

 その後、何度も読み返しましたが、いろんなところに伏線が張られているので、誰がどこでどう行動しているのか、分析しながら読み込んでいったら、その緻密さにまたうなって。撮影の時も、現場でそのシーンの台本を読み直し、この前にこういうことがあり、ここにつながる…ということを普段以上に意識しながら演じていました。

ーその中で、ご自身が演じる主人公・久我和幸をどんな人物と捉えましたか。

 久我は、劇団“水滸”のオーディションに、外部から参加した唯一の人間です。僕も今回、他の皆さんがお芝居を中心に仕事をしてきた中で、ちょっと違うところからその輪に飛び込んでいくような立ち位置です。その“外部感”が、久我と重なる部分もあったので、演じる際にそのまま生かすことができました。

ー単独初主演映画ということで、プレッシャーもあったと思いますが、気持ちの整理はどのように?

 もちろん、プレッシャーはありました。といっても、その点について全然かっこいいことは言えなくて、自分の手の届く範囲のことを頑張るしかないんですよね。僕の大好きなプロボクサーの井上尚弥選手も「基本が大事」と言ってますし。

ー本作には、第一線で活躍されている同世代の俳優の方々がそろっていますが、現場での距離感などはいかがでしたか。

 クランクインの日が、みんなが一堂に会する場面だったんです。他のみんなは、既に知り合い同士だったらしく、お互いに「久しぶり!」みたいなあいさつをしていたんですけど、僕は堀田さんぐらいしか共演経験のある人がいなくて。そこでどうしようかな…と思っていたら、キーマンを見つけたんです。それが、天音くんでした。僕がいろんなことを振ると、天音くんが面白いリアクションを返してくれるんです。それをみんなが笑って…という感じでじゃれ合っていたら、間宮くんから、「高校時代からの親友か!?」と言われるくらいなじんでしまって(笑)。だから、僕がみんなとなじめたのは、天音くんのおかげです。

ーワンシチュエーションのミステリーですが、お芝居はどのように?役を事前に作り込んでいったのでしょうか、それとも現場でセッションするような感じで?

 その両方ですね。僕の大好きな冒険家の植村直己さんが「準備こそすべて」という名言を残しています。やれることは事前にすべてやり、現場ではすべて捨てる。本当にその通りで、事前の作り込みはもちろん大事ですが、あまりそこに凝り固まっていると、柔軟さがなくなってしまいますから。だから、その両方をいいあんばいでコントロールすることが大事なのかなと。

ーそういう意味では、久我には重岡さんの素の部分も出ていると?

 思いっきり出てますね。僕はどの役でも、自分の中にあるものを、いかに出せるかが勝負だと思っています。例えば、僕自身が劇団“水滸”に入りたいと思っているわけではありませんが、久我がそこまで入りたい劇団“水滸”に当たるものは、僕にとっては何だろうと。そんなふうに自分に置き換え、お芝居に反映していくんです。だから結局、突き詰めていくと、お芝居はすべて“自分ごと”になっていくんだなと。それが正解かどうかわかりませんが、僕はそんなふうにお芝居に取り組んでいます。

ーでは、劇中でも登場人物たちが「芝居とは何か?」という問いに答える場面がありますが、重岡さんにとって芝居とは?

 いろんなことを経験させていただく中で、一言で言うのはなかなか難しいな、とずっと思っていたんです。でも最近、ようやく「これかも」というものが見つかって。それが、「生きざま」です。自分が今までやってきたことや、人との出会いから生まれたもので勝負することになるので、芝居には「生きざま」が現れるな、と思って。

ーそうすると、お芝居にとって大切なのは、自分自身を磨き続けることでしょうか。

 そうですね。結局、未来は過去から作られるわけですから。それと、僕が常に言い続けているのが「健康第一」。仕事で十分なパフォーマンスを発揮するには、まずは食事や睡眠など、体調を整えて健康でいること。そうすると、心も健やかになり、結果的にいいパフォーマンスが発揮できるようになります。「健康第一」は、僕が20代からずっと言い続けてきたことですが、30代を迎えた今は「シン・健康第一」に進化しました(笑)。また、僕はアスリートに憧れているので、格闘家がリングに立つような気持ちでコンディションを整え、本番に備えようと思っています。そういう意味では、気持ちはアスリートと一緒です。

ーでは、この作品から重岡さんが俳優として得たものは?

 たくさんあります。いろんな人に出会えることが役者の仕事の魅力なので、そういう意味では、このメンバーでやれてよかったなと思います。やっぱりみんな、たくさんの現場を経験してきているだけあって、それぞれオンリーワンのものを持っているんですよね。だから、そばにいるだけでも「どんなことをするんだろう?」とわくわくするし、お芝居にも引き込まれてしまいます。逆に間宮くんが「一緒にやりたかった」と言ってくれたことも、僕の財産になりました。飯塚(健)監督からも刺激をたくさん受けましたし、いろんな収穫のあった作品です。

(取材・文/井上健一)

『ある閉ざされた雪の山荘で』

1月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ