「決して違うおいなりさんを想像しないでください」
「おいなりさんラーメン」は、高橋さんの「おいなりさんに最大限のリスペクトを表したい」という想いから生まれた販売数限定のスペシャルラーメン。食券機にある通り、「店主の気が向いた時だけ」発売するとのことだが、「メニューとして売っていない日、売っていない時間の方が圧倒的に多くなっちゃいそう……」とかなりレアな商品になりそう。
何よりキニナルのは、おいなりさんがラーメンとマッチするのか否かという点だが、その点については「合うか合わないかそれを聞くのは野暮というもの」と一蹴。「おいなりさんラーメン」は「ただそこにおいなりさんがあったから」生まれたラーメンなのだ。
で、その高橋さんが理想とするおいなりさんはというと?
合うか合わないかは問題でないとは言いつつも、やはりそこはラーメン店の店主。その奇抜なコラボをうまく成立させるために、いろいろと思考を重ねたよう。
「お揚げがスープを吸って濃くなっても、マシマシに盛られたもやしが中和してくれるんじゃないかと思って」とガッツリラーメンに合わせた理由を説明。さらに、ラーメンの味を壊さないよう、お揚げも酢飯もあくまでも控えめに仕上げたいとイメージを語る。
軽く流してしまおうと思ったのだが、その恐ろしく太い麺に唖然呆然の筆者。その太さはというと、生の状態でも6~7mmという衝撃の超極太縮れ麺。高橋さんが学生時代にハマったという堀切菖蒲園にあった店のガッツリ系ラーメンをイメージして発注しているのだとか。
「ふっ、太い!」と感動しきりの筆者に「かなり攻撃的です」とあくまでも挑発的。
挑むようなその視線に、興奮が増す。「受けて立ちますよ!」
隣で「僕、少食だからアテにしないでくださいよ」としつこいくらいに念を押す根性なし松山を無視して、ラーメンを待つ間店内を見渡す。
座席はL字型のカウンターのみで全部で11席。新しい業態への挑戦ということもあり、コスト面でのリスクを抑えるため、店舗は看板を付け替えた程度でほぼ前店のまま。もちろん、例の大漁旗も健在だ。
と、そこに「モノノフ」の文字が。
ん? ももクロ好きなんですか……?
「いや、当時はやたらハマってたんですけど、今はなかなかライブチケットが取れなくなっちゃって」と苦笑いの高橋さん。
今は、ももクロの妹分「私立恵比寿中学」にハマっているらしく、店内音楽も「エビ中」オンリー。「そこもあえてチャレンジングに行きたい」という狙い通り、筆者滞在中にも「音楽はどなたの選曲なんですか?」と男性客が食いつく姿が。
そして、お待ちかねのラーメン完成!
けっこうなボリュームだ。
さり気ないながらも、強く何かを主張する「おいなりさん」。
ラーメンに「おいなりさん」2個はかなり重たい気もするが、そこは店主のこだわり。「おいなりさんは2個じゃないと」。確かに……
見た目は、所謂「二郎インスパイア」系のガッツリこってりな印象。しかし、一口スープをすすると意外にあっさりクリアな味わいに驚かされる。とはいえ、物足りなさはまったくなく、ほんのり甘辛さが口の中に広がり、一口飲むともう一口と後を引く。
一方、麺は見た目以上に噛みごたえたっぷり。口の中にほおばるとそれはもう大騒ぎ状態。筆者のこれまでの人生の中で、ここまで「麺」をしっかりと感じてラーメンを食したことがあっただろうか。にじみ出る小麦の風味が、こだわりのスープと相まって絶妙な味わい。
これなら全然イケル! と、丼を抱えて「おいなりさん」にむしゃぶりつく秋山。そして「すごいですね」と恐ろしい化物を見るかのような目でカメラマンに徹する敏腕編集者。
う~ん、お腹いっぱいと家に帰り早速メールを開くと、送られてきたのは悪意に満ちたこの写真。
彼との付き合い方を改めようと実感したのは言うまでもない。
取材を終えて
日吉駅周辺は学生街ということもあって、かなりのラーメン激戦区。ガッツリ系ラーメン店も同店から半径100mエリアに「おいなりさん」を含めて計3店舗と熾烈な競争を繰り広げる。
そんな中あえて勝負を挑むかのような今回の出店。ホントに大丈夫なの? と他人事ながら心配になるところだが、チャレンジ精神旺盛な当の高橋さんは、「日吉はあくまでも実験店」といたって冷静。
先行するほかの2店には根強いファンもついていることだろう。今回の目的はそこに勝つことではない。これからの時代を捉えガッツリラーメン店の展開を視野に入れ、ここでノウハウを確立することが目的なのだ。
長い店名のラーメン屋から一変、突然のリニューアルに驚かされたが、今回の「おいなりさん」は当面変える予定はないとのこと。
ラーメンファンはもちろん、おいなり好きの方もぜひ訪れてみてほしい。
●ガッツリラーメン それは私のおいなりさんだ
住所/横浜市港北区日吉本町1-2-6
営業時間/11:00~23:00
定休日/ほぼなし(年末年始、お盆休みの可能性)
※本記事は2014年2月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。
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