NANDチップの在庫ダブつきが原因で内蔵SSDの単価は大幅に下落。メーカーは減産で下落を止めようと奮闘した。2023年9月に1GBあたりの単価(GB単価)は底をうち、その後下落と同じスピードで上昇に転じ、ようやく一年前の水準にまで戻っていることが、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」により明らかとなった。
直近3年間の内蔵SSDにおけるGB単価の動きを追った。21年から22年までは例年のGB単価の動きに準じていた。年初から上昇し始め、春ごろにピークに達し、年末にかけてなだらかに下落するというサイクルだ。しかし、22年は年末にかけて大幅にGB単価が下落、23年に入っても上昇に転ずる気配はみられず、下落は加速。23年9月にGB単価は7.41円と底値を記録し、その後ようやく上昇に転じた。24年3月時点では10.71円まで戻り、ほぼ一年前の23年2月の10.77円と同水準となった。
容量の動向に目を転じると、21年2月時点では平均容量は701.83GB、同年年末には808.17GBと100GB増加。22年12月も927.45GBとやはり100GB程度の増加だった。しかし、GB単価の急落を背景に大容量化が一気に進行。23年6月に1107.61GBを記録し、約半年で200GB近く増加した。その後24年3月まで10か月連続で1TB超で推移しており、中でも23年11月に1265.19GBと平均容量は過去最高値に達している。
内蔵SSDは、M.2などのボード型とそれ以外の2.5"内蔵型の2種類の販売数量が大半を占める。そこで次にボード型と2.5"内蔵型に絞り込んでGB単価を比較していく。3年間では、ボード型の方が2.5"内蔵型よりもGB単価が高いということに変化はない。しかし、着実に両者のGB単価の差は縮まりつつある。21年2月時点のそれぞれのGB単価は、ボード型15.13円に対し、2.5"内蔵型は11.62円と3.51円の差があった。24年1月に両者の差が最も縮まり、ボード型は9.67円、2.5"内蔵型は9.19円と0.48円差となった。
両者の構成比を算出したところ、2.5"内蔵型等は半数超を占めていた。しかし、こうした単価差の変化により、ボード型は右肩上がりに需要が増加し、23年6月にボード型が51.2%と瞬間的に半数を超えた。その後は再び5割を下回ったが、同年11月から5か月連続で50%を超えて推移している。ボード型の需要は今後も増えていくだろう。
NANDチップの在庫ダブつきは、スマートフォンとパソコンが世界的な需要減に陥ったことに端を発している。冒頭にも書いたように、メーカーは減産によって、価格下落をくい止め、上昇させた格好だ。今後はAIの普及拡大により、内蔵SSDの需要も回復に向かうと見込まれており、価格は今以上に上昇していくと考えられる。(BCN総研・森英二)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。