磯村勇斗 (C)エンタメOVO

 2021年7月からWOWOWで放送・配信され、大好評を博したオリジナルドラマ「演じ屋」に続く第2弾「演じ屋 Re:act」(全7話)が5月24日から放送・配信スタートとなる。依頼された役になり切る仕事を生業とする演じ屋ファミリーが、演じることを通して、人を救おうとする姿を、さまざまな社会問題を絡めて描いたヒューマンストーリーだ。前作に続いて演じ屋ファミリーの柴崎トモキを演じ、奈緒と共にダブル主演を務めるのが昨年、多数の映画賞を受賞し、俳優としての評価をさらに高めた磯村勇斗。本作の舞台裏や作品に込めた思いを聞いた。

-続編の制作が決まった時のお気持ちは?

 まず制作が決まった時は、前作の「演じ屋」を多くの方にご覧いただいた結果なので、皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいでした。今回の作品に関しては、キャストの皆さんも前作の後、色々な現場を経験してさらにパワーアップしているはずですし、三浦貴大さんをはじめ、新しいキャストも加わるので、また新たな「演じ屋」になるのでは、とワクワクしました。

-久しぶりのトモキは違和感なく演じられましたか。

 久しぶりに演じ屋ファミリーの皆さんと再会してみたら、当時の雰囲気そのままだったので、自然にトモキに戻ることができました。お芝居については、前作はトモキが演じ屋ファミリーに加わるところからのスタートでしたが、その後、ファミリーの一員としていろんな仕事を経験してきたはずなので、今回はなじんでいる雰囲気を出したいと思っていました。

-トモキとアイカの対照的なキャラクターが、今回も作品を引き立てていますが、ダブル主演を務めるアイカ役の奈緒さんとの共演はいかがでしたか。

 自由気ままで破天荒なアイカを、前作と変わらず奈緒さんがしっかりと演じてくれています。だから僕は、対照的な方向でバランスを取ることを心掛けました。といっても、特に2人で打ち合わせをするわけでもなく、お互いに空気を読みながら、それぞれのキャラクターが成立するようなコミュニケーションを、お芝居を通して行えていたような気がします。それはやっぱり、前作を経験していたおかげだと思います。

-トモキたち演じ屋ファミリーは、演じることで人を救うことを仕事にしていますが、磯村さんご自身は俳優として、演じることで人を救うことができると思いますか。

 ファンの方から時々、「苦しかったけど、磯村さんの作品を見て、勇気をもらいました」といったお手紙やメッセージをいただくことがあります。それを見ると、演じることで少しは誰かの力になれているのかな、と思います。

-本作ではさまざまな社会問題を絡めながら、人情味あふれる物語が展開します。その中で、磯村さんご自身にとって新たな発見はありましたか。

 今回は「家族」について、深く考える機会になりました。俳優になる前は、当然のように「家族は血がつながっているもの」という認識でいましたが、いろんなことを見聞きする中で、血がつながらなくとも「家族」と呼べる形があることを知りました。この作品の演じ屋ファミリーもその一つです。彼らを家族として結び付けているのは、「(演じ屋ファミリーを本当の家族だと信じる)幼いセイルちゃんを守る」という共通の意識です。逆に今回の作品では、血のつながった家族に疑問を投げかける部分もあり、血のつながりが家族の絶対条件ではないんだなと、さらに強く感じるようになりました。

-本作では「家族」のほかに、ホームレスの問題なども扱っていますが、演じる上で意識したことは?

 明るくポップなテイストの中に、社会問題を絡めた絶妙なバランス感覚が、「演じ屋」の魅力です。そういう問題を軽率に扱うわけにはいきませんが、あまり重くなりすぎても作風が変わってしまうので、演じる上ではそのバランスを忘れないように心掛けました。

-磯村さんは昨年、『渇水』『月』『正欲』などの社会派映画でも活躍し、キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞を受賞した際のインタビューで、「社会に切り込んでいく映画に携わりたかった」と語っています。役者として社会派の作品に引かれる部分もあるのでしょうか。

 社会的な問題については、俳優になる前から関心を持っていました。特にここ5年くらいは、世界でさまざまな事件が続いていることもあり、そういう関心がより強くなってきて。その点、社会派の作品に携わる機会をいただけることは、とてもありがたく思っています。この「演じ屋 Re:act」もそういう作品の一つで、大事なことがたくさん詰まっていると思うので、皆さんがさまざまな問題に関心を持つきっかけになってくれたらうれしいです。

-昨年はほかにも多数の映画賞を受賞しましたが、お気持ちはいかがですか。

 多くの賞をいただき、率直にうれしい気持ちはあります。とはいえ、いずれも一緒に作りあげた監督やスタッフ、出演者の皆さんを代表していただいた賞だと思っています。だから、僕自身は浮かれることなく、さらに精進しなければ、とプレッシャーも感じています。同時に、難しい作品ほど、乗り越えるべき壁も大きいので、その点ではやりがいも感じているところです。

(取材・文・写真/井上健一)

連続ドラマW-30「演じ屋 Re:act」は、WOWOWで2024年5月24日(金)午後11時放送・配信スタート(全7話)