開催中のカンヌ映画祭でコンペ作品として上映されたデヴィッド・クローネンバーグ監督作『Maps to the Stars』の公式会見が、現地時間19日に行われた。
『Maps to the Stars』は、ハリウッドスターの狂った内情を描く風刺劇。登場人物は、やはり女優だった母が昔出た映画のリメイク版に、同じ役で出演を切望する女優ハバナ(ジュリアン・ムーア)、彼女のパーソナルアシスタントで暗い過去を抱える若い女性アガサ(ミア・ワシコウスカ)、アガサの弟で子役俳優として成功したベンジー(エヴァン・バード)、ふたりの両親(ジョン・キューザック、オリヴィア・ウィリアムス)、リムジン運転手ジェローム(ロバート・パティンソン)。
まだ年若いというのに周囲の人間やファンに対してスター気取りの傲慢な態度を取るベンジーの姿は、何人かの実在するティーンアイドルを思わせ、ライバルに不幸が起こったことから役を獲得できて大喜びするハバナの様子にも、リアリティがある。ダークなユーモアに満ちていることを指摘されると、バイオレントな映画で知られてきたクローネンバーグは、「僕の映画はいつだってコメディだよ」と一笑した。
「たまにはコメディも作ってみたら? と言われたりするけれど、僕自身は、コメディ以外作ったことがないと感じている。舞台はたまたまハリウッドだが、この物語は、ウォール街やシリコンバレーに設定しても、十分通じると思うよ。野心的で、欲望に満ち、同時に恐れを抱いている人々を語るものだから」(クローネンバーグ)。
しかしキューザックは、ハリウッドこそ名声への願望と執着が最も顕著に現れるところで、これはやはりハリウッドの物語と考えているようで、「脚本を読んだ時、誇張しすぎているとは思わなかったな。むしろ、正しい描写だと感じたよ」。パティンソンは、2年前にも、クローネンバーグ監督作『コスモポリス』でカンヌ入りしているが、「脚本も読まずに、出演を承諾したんだ。彼との仕事はいつもエキサイティング。彼の世界に関わっていたいのさ」。
『コスモポリス』ではリムジンに乗っているほうの立場で、ジュリエット・ビノシュとのセックスシーンがあったが、今作ではムーアとのセックスシーンがある。どちらが良かったかと聞かれると、顔を真っ赤にし、隣にいるムーアに気を遣いつつ、「もちろんジュリアンだよ。素敵な体験だった」と、恥ずかしそうに笑いながら答えた。
取材・文・写真:猿渡由紀