ホラーの中にマニアック要素を散りばめた作品
――キャラクターデザインはディズニーがモチーフだということですが、一方でストーリーに登場する要素は原作を意識されていますね。
ええ。なのでストーリーはディズニーのアニメーションは全て避けて、パブリックドメイン(著作権切れ)である原作に焦点を当てました。
――ダフネやミルン、アッシュダウン・フォレストといった、原作に直接は登場しない背景の要素も登場しています。
映画には原作から多くのイースターエッグ(隠し要素)を入れようとしました。
例えば、アッシュダウン・フォレストと100エーカーの森は実際にイギリスにある場所だから、登場させたかったのです。
ダフネとアラン・ミルンは、原作のクリストファーの両親と同じです。
※筆者註:「クマのプーさん」の著者アラン・ミルンは、アッシュダウン・フォレストという森に家を持っており、そこで息子クリストファーが遊んでいる様子を元に物語を作りました。息子クリストファーが、クリストファー・ロビンのモデルで、アッシュダウン・フォレストが100エーカーの森のモデルになりました。
プーの要素をホラーで再現
また、『プー2』の冒頭で「クマのプーさん」の一節を引用したのは、この映画の雰囲気作りに役立つと思ったからです。
「クマのプーさん」の本には、100エーカーの森の地図が描かれていますが、そのようなものを登場させようとしました。
「プー棒投げ」という、橋の上から棒を投げて、どの棒が先に橋の向こう側にいくかを競うゲームがありますが、そのホラーバージョンをやってみました。
撮影中、オリジナルの「プー棒投げ橋」やミルンが住んだ家を使おうとしたこともありましたが、残念ながらどちらも断られました。
――『プー2』では、クリストファー・ロビンと双子のビリーも登場します。ビリーという名前は、原作のクリストファーの幼少期の呼び名ですね。
そうです。オリジナルと明らかに異なるのは、クリストファーは双子ではなかったということです。
双子というのは、2人のキャラクターに運命のような要素を与えると思って入れたかった要素です。
(ホラー映画『ハロウィン』シリーズの)ローリー・ストロードがマイケル・マイヤーズのきょうだいだったような関係なんです。
実在しない双子の名前を探していたとき、2つの理由からビリーに決めました。
ひとつは、クリストファーの幼少期のあだ名がビリー・ムーンだったから。
だから、彼はクリストファーの鏡のような存在なんです。
2つ目の理由は、クマの名前としてとてもポピュラーなのがビリーで、映画の中でもよく耳にしますし、“クマのビリー”みたいにごく一般的な名前だからです。