花井「現在も時間さえあればインターネットでメガマウスについて調べています。朝起きたら、まずメガマウスについて検索。私はこれを『朝マウス』と呼んでいます。
Twitterでメガマウスについてつぶやいている人がいたら啓蒙活動の一環として即リツイート。『気持ち悪い』ってブロックされたこともありました。昨年NHKでメガマウスが出る特番(『深海の巨大生物 謎の海底サメ王国』)があった時は、あまりにたくさんメガマウスってつぶやきすぎてアカウントを凍結されたこともあります(笑)」
そんなふうにおそらく世界でもっともメガマウスという単語をツイートしている花井さんがアイドルとして活動を始めたきっかけはなんだったのでしょう?
花井「東京でナレーターや声優の仕事をしていた頃、友達とスタジオを借りて独自にネットラジオ番組をやっていたんです。そこで『メガマウスっていうサメが好きだ』っていう話をしていたら、スタジオの方が『じゃあ音楽を作ってその想いを伝えればいい。曲を作れる人がいるから紹介してあげるよ』ってことになって。軽い気持ちで私がアカペラでうたったテープをお渡ししたら、すごいちゃんとした曲になって帰ってきたんです。これはもう、うたうしかないなと」
さらに、友達がメガマウスのかぶりもの作ってくれたり、メガマウス音頭の振り付けを考えてくれたり、YouTubeにあげるPVを撮ってくれたりと、しだいにあとに引けなくなってきた花井さん。いよいよサメアイドルとしての東京で活動を開始…しようとしていた矢先に事態は急変。東日本大震災によって仕事を失い、窮地に立たされたのです。
花井「本職の仕事もバイトもすべて失ってしまって、家賃も食糧費も払えなくなりました。それで大阪へ戻り、知人宅やお店を転々と寝泊まりして、しばらくはまるで野良犬のように暮らしていたんです。
そんなふうに路頭に迷っているときからお世話になっているバー『銭ゲバ』の店主ムヤニーさんが、『10minutes(テンミニッツ)というアイドル発掘プロジェクトの予選会にフランクフルトを売りに行くので、一緒においでよ。一曲だけでも歌わせてもらえないか頼んであげるから』と言ってくれたんです。そしたら、なんと当日になって出演者のキャンセルが出て、急きょエントリーできて、そしたら……」
フランクフルトを焼くふりをして潜入したアイドル発掘イベントの予選会場で欠員が生じ、穴埋め要因として突如出場がかなった花井さん。ステージでメガマウスへの愛を絶唱したその結果は……なんと審査員特別賞を獲得! 後日さらに決勝大会へと駒を進め、グランプリこそあの「いずこねこ」に奪われたものの、準グランプリに匹敵する賞を受賞。これが花井さんのアイドルとしての第一歩、ならぬ第一泳となりました。