【社会人のためのTOEIC Program・4】この連載では、「社会人のためのTOEIC Program」と題して、社会人が英語を学ぶ目的、英語を学ぶ際のコツや注意点、企業における英語研修などについて解説しています。第4回目のテーマは、「TOEIC Tests(TOEIC L&RやTOEIC S&W)で高得点をとった人はどんな勉強をしているの?」です。高得点を取ることでどんな効果があるのか、どうすればTOEIC Testsで高得点を取れるのか、実際に高得点を取った人はどのような勉強を行っているのかなど、日本でTOEIC Programを実施・運営するIIBCが実際に高得点を取った受験者へのインタビューやデータからお伝えします。
TOEIC Testsで高得点を取るということ
「TOEICで○○点を取った」「TOEIC○○点が必要です」と聞いた時、皆さんはどのようなスキルを想像されるでしょうか。多くの受験者が語る点数、多くの企業や学校で採用されている点数は「TOEIC L&R」が基準であることがほとんどです。
TOEIC L&Rはその中のリスニングとリーディングというインプットの能力を測定しています。インプット能力が高いと英語を話す潜在力は高いと言えますが、TOEIC L&Rのスコアが高いからどんなビジネスの場でも英語を使いこなせるというのはやや飛躍があるといえます。インプット能力が高くても話せるようになるには一定期間話すためのトレーニングが必要です。
「英語が使える」という状態になるためには、リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングと4技能のバランスが大事です。そのため、TOEIC L&Rで600点が見えてきたらスピーキングやライティング能力を測るTOEIC S&Wを受験し、4技能のバランスを意識していくことをおすすめします。
TOEIC L&RとTOEIC S&Wの相関関係
IIBCでは、TOEIC L&RとTOEIC S&Wの過去の受験者データからそれぞれの点数の比較表を作成しています。この中でTOEIC L&R 600点を取れる受験者は、TOEIC S&W でもSpeakingで200点中110点、Writingで200点中120点という予測スコアが示されています。これくらいの点数が取れると、ある程度の手ごたえがつかめ、自信にもつながると思います。
自信がつくと実際に話してみようというコミュニケーション意欲につながり、コミュニケーションが取れるようになるとさらに勉強のモチベーションも上がるというポジティブなスパイラルにつながります。
また、TOEIC S&WはAIなどの自動採点ではなく、人が採点するという特徴があります。人が採点するということは、単語や文法、発音などが正しいかどうかはもちろん、「コミュニケーションをきちんと取れているか」ということに重点を置いて評価しています。そのため、予め想定解があってそこから文法ミスなどで減点していく方式に対して、多少間違いがあっても伝わった部分があれば加点していく、という採点方法になっています。
言いよどみや言い直しがあったとしても、全体のコミュニケーションとして伝わっていれば評価されるので、伝わったという成功体験を得やすく、モチベーションにつながっていくのです。
TOEIC Tests高得点者の効果的な勉強法
では、どういった勉強法が高得点取得や実践的英語力につながるのでしょうか。IIBCでは英語学習者の体験をインタビューし、HPで公開しています。
高得点者の回答では、公式問題集を使って学習した人が多いようです。TOEIC Testsは受験した問題が公開されていないため、問題や形式を練習するためには公式問題集が一番実践に近いといえます。また、日常生活やビジネスの場面を題材にした問題が多いので、TOEIC Testsの問題を徹底的にやり尽くし、継続的に学習をしたことで実際に使える英語力が身に付いたという人も多いようです。
TOEIC L&Rの公式問題集には、テスト2回分の問題が入っています。問題集を徹底的にやり尽くすためには、例えばそのうちの一回分は解説を読み込んでやり直す、リーディングであれば声に出してみる、リスニングであればシャドーイングしてみるなどの反復練習が有効です。そして、本番前にもう一回分を実践さながらに解いてみる。このような勉強法を高得点者は実践しているようです。
4技能別の勉強法実例
英語力というとリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングという四つの技能から成り立ちますが、技能ごとに勉強するというのは難しいものです。モチベーションを保つためには、自分の興味がある素材を使って学習をすることも有効です。例えば、洋画や海外ドラマ、洋楽などです。また、学習の方法としてはインプットをある程度やったらアウトプットの練習をしてみる、という方法が有効です。
リスニングの練習としては、自分の興味がある題材や自分が知っている内容を日常的に聞いてみることをおすすめします。スキマ時間などを使って反復して聞きこむことで、内容をつかみ、徐々に聞き取れるようになっていくでしょう。
リーディングの練習をしていると、知らない単語も出てくると思います。もちろん辞書を引くことは重要ですが、時間がかかってしまうこと、また複数の意味が載っていますので、自分で意味を正確につかむのが難しいケースもあります。そのため、リーディングの練習をするためには、和訳がついている英文を読んでいくこともおすすめします。
具体的には公式問題集も和訳が載っていますし、和英対訳がついている新聞や小説などを読むのも有効です。正しい翻訳が分かった状態で英語を読むことで自然と頭に入ってきますし、難しい題材であってもチャレンジしやすくなります。さらに、それが自身の興味のある題材であればモチベーションにもつながるでしょう。
スピーキングの練習は音源がついている素材で話している内容を真似するのがいいでしょう。会話問題などは場面を想起しながら、登場人物になりきって会話を真似てみましょう。
ライティングにおいては、ビジネスで最も使う機会が多いのがメールやチャットの文面でしょう。TOEIC Testsにおいても、そういった場面を想定した問題が多く出題されます。メールなどのビジネス文章にはある程度定型がありますので、それを真似して書いて覚えていくのが近道といえます。
実践に生かせる英語学習に向けて
言語を問わず、実際のコミュニケーションにおいては、とっさの反応が必要になります。自分が学んだ英語が実際のコミュニケーションの場ですぐ出るように、反復練習をして身になじませておくことが、実践練習になるといえます。
「継続は力なり」という言葉の通りで、どんな小さな練習でも続けていくことで必ず実力に結びつきます。とはいえ、「1日1時間頑張る」「週末にまとめて勉強しよう」と肩ひじを張る必要はありません。通勤時間でリスニングを聞いてみるとか、スキマ時間でe-Learningを1問だけ解いてみるとか、そういったちょっとの練習を繰り返し、習慣化することが大切です。
また、これもよくある悩みですが、「1年勉強を続けたのに点数が伸びなかった」という声も聞かれます。しかし、落胆することはありません。何もしなければ英語力は落ちてしまうでしょう。仮に1年後、同じ点数を取れているということは、きちんと努力が実り、英語力が維持できている証だといえるでしょう。
「英語が使えるようになりたい」といっても、必ずしも壮大な目標や大変な努力が必要ということではありません。自身のモチベーションを保てる素材を使いつつ、毎日少しずつでも学習を続けていくことが結果的に英語力向上の一番の近道になると思います。(国際ビジネスコミュニケーション協会・高津 誠)(高は「はしごだか」)
高津 誠(高は「はしごだか」)
大手旅行代理店勤務を経て、日本企業の国際化に貢献するために国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)に入団。法人営業、プロモーション責任者を歴任後、2024年度からTOEIC Program公開テストに関するプロモーション部の責任者に着任。