外食業界と記念日の関係

【外食業界のリアル・15】日本にはさまざまな記念日が存在し、飲食関連の記念日も多数ある。だが国が定めた祝日ではなく、記念日だからといって休日となるわけではない。とはいえ、各業界では記念日をきっかけにさまざまな普及活動やプロモーションを行っている。今回は、外食業界と記念日について語りたいと思う。

記念日とは何か?

まず記念日とは何か、の定義は人それぞれではあるが、ここでは日本記念日協会に登録されているものを記念日としたい。同協会では、エントリーされた申請者の情報・記念日の名称・日付・由来・目的・活動内容などを元に審査をし、そこで認められた上で一定の費用を支払うことで登録される。記念日にはさまざまな由来があるが、同協会で登録されたものは第三者が客観的に相応しい認めたものといえるだろう。

さまざまなジャンルの記念日が毎日のように存在しているが、それは記念日として登録することに魅力を感じている企業や団体が多いことが伺える。同協会では記念日の効果として、「対外的なアピールだけでなく、社内、団体内のモチベーションの向上、イベント企画のきっかけづくりなどにも役立ちます」「登録されたものの成り立ちの歴史や年月の深さを後世に伝えることができます。また、社会的に周知・記憶されることで、誇りとなります」などを挙げている。

つまり、直接的な売り上げに寄与するわけではないが、記念日をきっかけとして活用していくことを意図しているわけである。登録されている記念日の中で、飲食関連のものは比較的多いように感じられる。食自体が歴史的な背景をきっかけに生まれたものが多く、発祥ということで記念日として設けられたものもあるし、生活者と直接的に関わる分野であるがゆえに競合他社が多く、社会的に周知・記憶してもらうことで差別化を図っているのもある。

飲食関連の記念日について

毎日のように存在する飲食関連の記念日を見ていくと、大きく「食品カテゴリ」「特定の商品」とに分けられる。12月の記念日でも、食品カテゴリは「下仁田葱の日」「有機農業の日」「スープの日」などがある。特定商品では、「明治ヨーグルトR-1の日」「ダースの日」などといったものがある。

協会に登録する際に必ず「由来」が必要となるのだが、内容は多岐にわたっており、非常に興味深い。創意工夫に満ちており、記念日師というプロがいるのではないかと思うぐらい、さまざまな視点・切り口で定義されている。それこそが、記念日の醍醐味といっても過言ではない。

飲食関連の記念日の由来については大きく分けると、「語呂」「始まり」「ギミック」の三つとなる。なお、これらの分析については主観的であり独断と偏見となっているところが否めない点はご了承いただければ幸いである。

語呂については、日付をもじったものやダジャレ的なものとなる。11月29日は「いいフグの日」だが、「いい(11)フ(2)グ(9)」の語呂合わせからきている。12月22日は「スープの日」だが、「い(1)つ(2)もフー(2)フー(2)」からきている。また、10月29日は「国産とり肉の日」だが、干支の10番目が「酉とり」なことと「に(2)く(9)」の語呂からきている。

始まりは、誕生日や発売にちなんだものとなる。12月1日は「カレー南蛮の日」だが、カレー南蛮を考案した角田つのだ酉之助とりのすけ氏の誕生日から制定されている。12月10日は「アロエヨーグルトの日」だが、1994年12月10日に日本で初めてアロエ葉肉入りのヨーグルトが発売されたことにちなんだものとなる。

ギミックは非常にユニークな由来であり、記念日ならではのものといえるかもしれない。11月4日は「かき揚げの日」だが、かき揚げはうどんやそばなどの麺類に乗せて食べることが多く、11月11日が「めんの日」として制定されていて、その真上にあたる11月4日というのが由来となっている。8月1日は「カフェオーレの日」だが、「牛乳の日(6月1日)」と「コーヒーの日(10月1日)」の間であることからとなる。

また、10月10日は「亀田の柿の種の日」だが、「1」を種に「0」をピーナッツに見立てると柿ピーが並んでいるように見えることにちなんだものとなる。その他にもユニークなものが多いので興味があれば、ぜひ調べてみて欲しい。

記念日が“きっかけ”に

飲食関連の記念日は数多くあるもののそれは制定した企業や団体だけでクローズしてしまっているものが多いのが実情だ。とはいえ、10月30日は「たまごかけごはんの日」だったが、一部の飲食店では「TKGを食べよう」とSNSで呼びかけるなど、記念日を活用するケースが少しずつ出てきている。

外食業界に携わる身としては、多くの人に飲食店へ足を運んでほしいと望んでいる。記念日というのはその食材や商品を知ってもらうための“きっかけ”にはなるので、もっと業界全体で活用して欲しい。どうしても1企業、1団体だけでは限界があるが、外食業界全体で取り組めばもっと変わっていくはずではないだろうか。そして、それが外食業界として一丸となる“きっかけ”ともなればうれしい限りである。(イデア・レコード・左川裕規)