【家電コンサルのお得な話・227】東京都は市町村と連携して、都内すべての市町村で学校給食費の無償化を実施できるよう、2024年9月の補正予算案で17億円を計上して「市町村総合交付金(政策連携枠)」を拡充した。補正計上額は、2025年1~3月までの3カ月間の3学期相当分になる。持続可能な施策にするためには、国の関与が欠かせない。
東京都の補完で自治体の負担が軽減
東京都の学校給食無償化の施策は、国が給食無償化について自らの責任で実施するまでの間、特例的に市町村の一般財源を補完するものである。
東京都が給食費負担軽減事業の補助を拡充し、自治体負担の軽減をさらに進めたことにより、これまで慎重な姿勢を見せていた自治体も完全無償化に踏み切ることができる。交付金により給食費の補助率は実質8分の7に引き上げられ、自治体は残りの負担を受け持つだけでよくなったからだ。
これにより、例えば小金井市や町田市など、これまで完全無償化に踏み切れていなかったすべての自治体が、2025年1月から無償化の実施を決めた。
栄養バランスの採れた給食の提供で学習意欲の向上も期待
東京都内の小中学校の給食費が完全無償化されることは、子育て世帯にとって非常に大きな支援となる画期的な取り組みである。これにより、公立小中学校に通うすべての児童・生徒が、保護者の負担なく給食を利用できる環境が整う。
学校給食費の無償化は、子育て世帯の経済的な負担を直接的に軽減するだけではなく、東京都内全域で子どもたちが平等な環境で学べるようになる。すべての子どもたちに栄養バランスの採れた食事を提供することで、健康面の改善だけでなく、学習意欲や学力の向上にもつながることが期待されている。
一方で、給食費の無償化は自治体や都の財政負担を伴う。東京都の小池知事は、この取り組みが本来国の責任と財源で行われるべきものであるとの見解を示している。都はこれまでも国に対して要請してきたが、今後も引き続き働きかけを続ける意向である。こうした背景から、無償化を安定的かつ長期的に維持するには、国の関与が欠かせない。
今回の施策は、都民全体に対する東京都の強い支援の姿勢を示している。しかし、持続可能な政策として定着させるためには、国を巻き込んだ議論や制度設計が必要であり、根本的な解決には所得倍増が不可欠である。失われた30年を取り戻すためには、新自由主義から脱却し、所得倍増を目指す国政が求められるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。