2025年3月1日(土)13:30~16:30、多摩美術大学八王子キャンパスにて開催します。

多摩美術大学アートアーカイヴセンター(略称:AAC、所長:光田由里)と国立アートリサーチセンター(略称:NCAR、センター長:片岡真実)は、第7回多摩美術大学アートアーカイヴシンポジウム・NCARシンポジウム004「マルセル・デュシャン《大ガラス》レプリカをめぐって──ストックホルム・ロンドン・東京・パリ」を、2025年3月1日(土)に多摩美術大学八王子キャンパスにて開催します。

デザイン:加藤勝也

マルセル・デュシャンの代表作のひとつ《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称:大ガラス)(1915-23、フィラデルフィア美術館蔵)は、8年の歳月をかけて制作された未完成のオブジェで、解釈の幅が広く、多くの議論を呼ぶ作品として知られています。ガラスという素材の性質上移送が困難なため、展覧会の機会などにこれまで複数のレプリカが制作されてきました。アジアにおける唯一のレプリカ《大ガラス東京ヴァージョン》(1980、東京大学駒場博物館蔵)は、デュシャンの死後、彼と交流のあった瀧口修造と東野芳明(多摩美術大学教授、当時)が監修を務め、東京大学と多摩美術大学の学生らがファブリケーターとなって制作されたものです。
 実際の制作に先立ち、多摩美術大学の学生たちは準備・研究を始め、上野毛キャンパスのある教室で試作群を手がけていました。それら試作群の一部がそのまま多摩美術大学に保管されていましたが、本年、デュシャンの遺品を管理し作品を世界に広めるマルセル・デュシャン・アソシエーションの承認を受け、他の関連資料群とともにAACで正式にアーカイヴ化することになりました。
 これを記念し、ヨーロッパと日本で制作された《大ガラス》のレプリカと関連資料を考察する初めての機会として国際シンポジウムを開催します。ストックホルム、ロンドン、パリ、そして東京から、レプリカ所蔵機関のキュレーターや研究者らが一堂に会し、それぞれの制作経緯と歴史、関連アーカイヴを含めたレプリカの保存と活用について情報を共有するとともに、マルセル・デュシャンの代表作をレプリカの視点から見直し、同レプリカが持つ特性やアーカイヴ化することの意義、今後の具体的な活用のアイディアを提案します。

【シンポジウム概要】

【関連イベント】

デザイン:加藤勝也



【登壇者プロフィール】


アンナ・テルグレン(博士) Anna TELLGREN
ストックホルム近代美術館 写真部門キュレーター、リサーチ部門長
これまでにラース・ツンビヨルク、インタ・ルカ、アニカ・エリザベス・フォン・ハウスヴォルフなど、北欧圏で活動するアーティスト、写真家の個展をはじめ、数多くの展覧会を企画。2011年、「もう一つの物語:ストックホルム近代美術館の写真コレクション」展を担当。また美術館の50周年を機に出版された『ストックホルム近代美術館の歴史 1958-2008』(2008)の編集に携わった他、美術館の元館長でマルセル・デュシャン作品収蔵に尽力したポントゥス・フルテンに関する書籍も手掛けている。





ナタリア・シドリーナ(博士) Natalia SIDLINA
テート美術館 国際近代美術部門キュレーター
近代の亡命/移民芸術(emigre art)を専門とする。20世紀初頭の東西ヨーロッパにおける美術的実践を通じた文化横断的な歴史やつながりの形成、グローバルな知の交換に焦点をあてた研究・企画を行う。2015年より現職。現在2025年に開催予定の「The Theatre of Picasso(ピカソの劇場)」展に向け、ピカソ作品におけるパフォーマンス性について研究を進めている。近年の展示に「ゾフィー・トイバー=アルプ」(2021)、「セザンヌ」(2022)、「表現主義者たち: カンディンスキー、ミュンターと青騎士」(2024)など。





光田由里 MITSUDA Yuri
美術評論家、多摩美術大学大学院教授、アートアーカイヴセンター所長
兵庫県生まれ。専門は20世紀美術史・写真史。富山県美術館、渋谷区立松濤美術館、DIC川村記念美術館の学芸員を経て現職。著書に『高松次郎 言葉ともの』(水声社、2011)、『写真、芸術との界面に』(青弓社、2006、日本写真協会賞)ほか。共著に『日本美術の近現代史』(東京書籍、2014)、『美術批評集成1955-64』(藝華社、2021)ほか。企画展に「ハイレッド・センター 直接行動の軌跡」(2013-14)、「鏡と穴―写真と彫刻の界面」(2017)、「描く、そして現れる--画家が彫刻を作るとき」(2019)ほか多数。





パスカル・ゴブロ Pascal GOBLOT
パフォーマー、映像作家、映画監督
2020年に「Richard Hamilton in the reflection of Marcel Duchamp(マルセル・デュシャンを通して見たリチャード・ハミルトン)」(SCAMスター賞)を発表。2006年以降、マルセル・デュシャンの《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)》に着目し、《The Legend of the Large Glass(大ガラス伝説)》という名の一連の作品を発表している。その一環として2014年に《大ガラス》のコピーを10年の期限付きで制作し、2024年にそれを破壊するパフォーマンス《To Be Broken》を行った。



【多摩美術大学アートアーカイヴセンター概要】
多摩美術大学アートアーカイヴセンター(AAC)は、多摩美術大学(東京都世田谷区、八王子市、学長:内藤廣)の附属施設で、現在、19の資料体を有し、アーカイヴの構築、公開、活用、研究を行っています。活動の成果は、シンポジウムや年報/紀要『軌跡』にて発信しています。また、AACの資料を活用した展覧会をアートアーカイヴセンターギャラリー(八王子キャンパス)にて定期的に開催しています。
公式サイト:https://aac.tamabi.ac.jp
X/Instagram:@tamabi_aac

【国立アートリサーチセンターの事業について】
国立アートリサーチセンター(NCAR)は、国内外の美術館、研究機関をはじめ社会のさまざまな人々をつなぐアート振興の新たな拠点として、2023年3月に設立されました。NCARの事業やこれまでの活動についてはウェブサイト(https://ncar.artmuseums.go.jp/) をご覧ください。
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