『ルパン三世』実写化という最高難易度のプロジェクトにひるむことなく立ち向かった小栗旬、玉山鉄二、綾野剛。スクリーンで躍動する3人が、公開を前に改めてこのミッションを振り返った。
あちこちに散りばめられたおなじみのセリフや仕種。3人とも随所でアニメ版のルパン、次元、五ェ門の“匂い”を感じさせる。アニメとの距離とバランス――それは今回の実写化の根幹に関わる重要部分だ。
実は、最初に提示された設定では、ルパンはおなじみの赤いジャケットを着ておらず、五ェ門も着物ではなくライダースコートという設定だったという。小栗は最初に感じた“違和感”とそこからのアプローチをこう説明する。「このチームがどこに向かおうとしているのか? 原作とは違う“新しい”『ルパン三世』を作ろうとしているところがあり『なるほど、そういうチャレンジなのか!』と思う反面、『それにしては、新しいものを作ろうとするエネルギーが弱くないか?』という印象だった。みんな、そう感じているところがあって『やっぱりルパンをやるなら、ある程度は観客が待っていることをやった方がいいんじゃないか?』という話になった。『じゃあ、赤ジャケットを着る提案をしてみるわ』となったり、いろいろ試行錯誤しながら、僕らがずっと見てきたアニメの世界観に寄せていったというのが一番大きいと思います」。
一方で玉山は、世間が言うほどにはこの『ルパン三世』実写化を特別視せずに臨んだ。その言葉にはいくつもの作品に参加してきたこの男の自負が感じられる。「与えられた台本、衣裳、髪型で、どこまでみなさんの違和感を薄められるかというのが役者の仕事。いつも通りのアプローチをした結果、こういう次元になった。『プレッシャーは?』とみなさん仰いますが、それは僕らにとっては宿命。かといって自分の中に勝手に敵を作る必要はないし、それが作品に良い結果をもたらすとは思えない」。
「最初に実写化と聞いて『やめた方がいい』と思った」と笑う綾野だが、彼の五ェ門に対するアプローチも徹底している。作品次第で、必要ならば役柄の人生を背負い、深く入り込んでいく綾野だが、今回は「五ェ門という“記号”に徹した」という。「あくまでこれは『ルパン三世』であって、特に今回、五ェ門の物語は必要ないし、実写版ならではの五ェ門を出す必然も全くない。『何となく五ェ門ってこうだよね?』と絶対数が知っている五エ門を目指しました。
それぞれの哲学の下、作り上げた実写版『ルパン三世』。共通するのは強い“意志”だ。
『ルパン三世』
8月30日全国ロードショー
取材・文・写真:黒豆直樹