家庭内別居とは、同じ屋根の下で暮らしていても生活を分けたいほど、夫婦の仲が悪くなっている状態を指します。

口をきかない、顔を見ることもないなど、家庭内別居の状況はさまざまですが、共通するのは配偶者に愛情がなく関心を持っていないこと。

そんななかで夫から「外で会っている女性がいる」と言われたとき、妻の気持ちにはどんな変化があるのでしょうか。

ある女性のケースについて、ご紹介します。

義実家が原因で

朝美さん(仮名/45歳)は、同い年の夫とふたりのお子さんと暮らしています。

夫とは家庭内別居の状態であり、仕事部屋を持つ夫はそこに閉じこもるのが常。朝美さんは寝室を自分の部屋として寝起きしているそうです。

家庭内別居となった原因は「義母です」とはっきり言い切る朝美さんに事情を尋ねると、

「ヒステリックというか、私の選んだ手土産が気に入らないとか、義実家に来ても家事を手伝わないとか、すぐ不機嫌になって私をネチネチ責めるんですね。

息子たちはその姿を見るのが嫌で義実家に行かなくなり、それも私のせいにされて『躾が悪い』と言われ、我慢できずに夫に何とかしてと迫ったら『お前がちゃんとしないから』と返され、絶望しましたね」

と、母親に反抗できず家族を守ろうともしない夫に、愛想を尽かしたといいます。

それから義実家にはいっさい足を向けなくなり、義母から電話がかかってきて「何で俺が怒られないといけないんだ」と文句を言う夫と会話する気も失せたという朝美さん。

家庭内別居の期間は三年ほどで、朝や夕食など子どもたちがいるときは一緒に食事もするけれど、それ以外は夫がリビングを出て自室に引っ込む生活が続いています。

「夫は私がいないときに子どもたちと話すようですが、子どもたちも夫の不甲斐なさがわかっていて、どんな話をしたか教えてくれるしどちらかといえば私の味方ですね」

家庭で孤立する夫について、諦めのような気持ちを朝美さんは抱いていました。

青天の霹靂だった夫の言葉

そんな朝美さんが「まさに青天の霹靂でした」と口にするのは、夫から「外で会っている女性がいる」と言われたときです。

「その頃、半年前くらいですけど、夫の帰宅が遅くなって週末もひとりで家を出ていくことが増えて、でも浮気とかまったく考えていませんでした。食事は一応作っていて、一緒に食べなくても置いておけば勝手に皿も洗っていたので」

子どもたちの塾の送迎など、どうしても連絡が必要なときはLINEでやり取りしていた朝美さんでしたが、ある日曜日の午後、またふらりと家を出ていった夫から電話がかかってきたといいます。

冷めきっているとはいえ、事故か何かの可能性を考えた朝美さんはすぐ着信に出ますが、

「仲良くしている女性がいて、その人とずっと会っている、これからもそうするつもりだと言われました。

もう、びっくりして言葉が出なかったですね。いきなり何を言い出すのかって」

「どんな言葉で伝えるか、考え抜いたような雰囲気でした」と振り返る朝美さんは、夫にそんな女性ができたことより、それをわざわざ自分に言ってくる意味を考えます。

「私を傷つけたいのかもとか、一応同じ家に住んでいるから家を空ける理由を伝えたいだけなのかもとか、混乱してしまって……。でも、落ち着いてきたらこれって異常だと気が付いて」

関心を失っているせいか、夫について「他人と変わらないですね」とあっさり口にする朝美さんには、配偶者が自分以外の異性に心を奪われている痛みが感じられませんでした。