キエフ・バレエ『くるみ割り人形』拡大画像表示

早いもので、2014年は少しずつ終わりに近づき、2015年の幕開きも見えて来た。賑やかな忘年会や新年会もいいけれど、美しいもので心洗われたいあなたにぜひ観ていただきたいのが、年末のキエフ・バレエと、年明けのミハイロフスキー劇場バレエの舞台だ。

ちなみに、ミハイロフスキー劇場バレエとは、数年前まで毎年来日していた「レニングラード国立バレエ」のこと。今回の来日公演から、日本での呼び名も、現在のバレエ団の名称に統一されたのである。

両バレエ団に共通するオススメ・ポイントは、大きく言ってふたつ。

ひとつには、今回の上演が、普遍的な魅力を持つ古典中心の演目であること。さらにふたつ目のポイントは、ロシアのミハイロフスキー劇場バレエはもちろん、帝政ロシアやソ連の一部であった歴史を持つウクライナのキエフ・バレエも、バレエの一大流派であるロシア・バレエの伝統を受け継ぐバレエ団であること。

つまり、品格ある正統的なバレエ団が、名作を引っ提げ、年末年始に相次いで来日するのだ。
 

デートや家族連れで楽しむ〜キエフ・バレエ〜

年末に来日するキエフ・バレエは、1867年に設立された由緒あるバレエ団。上演するのは、カップルや家族連れで観たい2演目だ。

 

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まず、『くるみ割り人形』。少女クララがくるみ割り人形をプレゼントにもらったクリスマス・イブの夜、ネズミ達とくるみ割り人形達が戦闘を始める。クララがくるみ割り人形に加勢して勝利に貢献すると、人形は美しい王子の姿に。王子とクララは人形の王国へ旅する――。という幻想的な物語を通して、少女の成長を描く。

 

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年末の風物詩として世界各地で愛されている本作だが、キエフ・バレエが上演するのは、奇をてらわない王道的なバージョン。クララの両親達が貴族のかつらをつけ、ネズミたちもナポレオンハットのような帽子をかぶるなど、衣裳もお洒落だ。人形の国では、スペイン、ロシア、中国など様々な国の踊りも展開し、理屈抜きに楽しめることうけあい。

もう1演目は2部構成の『ミハイル・フォーキンの世界 バレエ・リュスの祭典』。20世紀初頭のパリをはじめヨーロッパで一大ブームを巻き起こしたバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の振付家フォーキンの2作を上演する企画だ。

 

キエフ・バレエ『ミハイル・フォーキンの世界 バレエ・リュスの祭典』 拡大画像表示

第1部は、ショパンのしっとりとした音楽に乗せてシルフィード(空気の精)達が舞う『レ・シルフィード』。物語がなく、ひたすら動きの美しさを追求している点で、実は現代的な抽象バレエを先取りしたと言われている作品である。

第2部は『シェヘラザード』。アラビアのハーレムを舞台に、王の愛妾ゾベイダと奴隷の密会を描く。ふたりの踊りから燃え上がる刹那的な官能の炎は必見。ちょっぴり大人の気分で鑑賞したい。