「同い年の友人で熟年離婚をした女性がいるのですが、『正社員でちゃんとした収入もあるし、離婚しても生きていける』と言っていたはずがその後生活が続かず、結局はご両親のもとに転がり込んだという話を聞き、離婚の難しさは肌身で感じていました。

当時の私は50歳が目前で同じく熟年離婚を考えていましたが、とにかく見切り発車だけはやめようと、ネットでいろいろな記事を読んで財産分与のことなど知識を得ました。

その友人の生活が破綻したのは、『寂しさに負けて飲み歩いていたのが原因』と本人は言っており、ひとりになると自由に使えるお金が増えるぶん、そういう危険もあるのだと思いましたね。

詳しく聞いたら友人は離婚するときに財産分与をしておらず、本来手にできるはずだった貯金の半分や生命保険の返戻金なども丸ごと損をしているとわかり、『離婚したい気持ちでいっぱいで、元夫に顔も見たくないって言ったから今さら請求もできない』とうなだれる様子を見ていたら、自分の収入だけを信じて離婚に踏み切るのはダメだと改めて考えました。

私と元夫はいわゆる仮面夫婦状態で、子どもが自立したら離婚したいことは昔から夫に伝えており、離婚そのもので揉めることはないだろうけど問題は財産分与、少しでもスムーズに進むように弁護士の無料相談も利用して話を聞きました。

いざ元夫に離婚を切り出したときは、印刷した資料や弁護士から聞いた話をまとめた文書を目の前に広げ、事務的に話し合えるよう努めたつもりです。

元夫は、それでも私が離婚を言い出したことにショックを受けたようで動揺していましたが、『こんな状態で夫婦なんてもう続けられないよな』と諦めたようにつぶやいたのは、忘れられません。

弁護士に相談して資料まで用意した私を見れば、引き止めることは無理だと思ったはずです。

それからは淡々と親権や財産分与について話し合い、子どもたちには私から離婚を伝えること、私が家を出ること、離婚しても子どもたちに何かあれば連絡を取り合うことなどを決めました。

正直にいえばあまり仲のいい家族ではなく、子どもたちは家庭に無関心なときのほうが多かったけれど、それでも、親が離婚するのは衝撃になると思えばそれだけが気がかりでしたね。

実際に離婚届を出す前に子どもたちに連絡しましたが、『そうなるだろうと思った』と言われて話題が終わったときは、なんとも言えない寂しさを味わいました。

私も元夫も公務員でそれぞれ生活はしていけるけれど、私にとって熟年離婚って『家族の解散』でもあるのだな、としみじみ思いました。

見切り発車だけはするまいとあれこれ準備を重ねて、財産分与が希望通りに進んだのはよかったです。

心配だった子どもたちとの関係はそれから良好で、たまに電話で話したりご飯を食べたり、元夫とも会えているようで安心しています。

離婚するときになるべく揉めなかったことで、元夫のほうも落ち着いているのかもしれません。

離婚に失敗した友人の『寂しさに負ける』という言葉は今も重たく胸に残っていて、自分はそうはなるまいと、新しい趣味を見つけて毎日を楽しんでいます」(52歳/公務員)

できることを考えず勢いで離婚に踏み切ってしまい、後で後悔する人は後を絶ちません。

身近でそんなケースを見れば、自分の離婚にはより慎重にあれこれと準備を進めるのが大切です。

家族であれば離婚はどうしてもダメージを避けられませんが、その後の関係を良くしていく努力が重要で、こちらのケースでは今もお子さんや元配偶者とは普通に会話ができているそうです。

家族を巻き込む離婚だからこそ、見切り発車は避けたいですね。