完全ワイヤレスイヤホンのおすすめをシーン別で解説

【完全ワイヤレスイヤホン最前線・2】「種類が多すぎて、どれを選べばいいのか分からない」――。そんな悩みを持つ人は少なくありません。店頭で比べても違いが分かりづらく、値段もピンからキリまで。せっかく買うなら失敗したくないものです。実は、選び方にはちょっとしたコツがあります。通勤なら騒音対策を重視、在宅ワークなら通話品質、運動なら外れにくさ。自分が一番よく使う場面から逆算して考えると、ぴったりの1台をぐっと絞り込みやすくなります。そこで、日常のシーン別に最適なモデルと、注目すべき機能をご紹介します。

通勤・出張:電車の騒音に負けない集中空間を

朝夕の通勤電車は、走行音やアナウンス、話し声が入り混じり、70~85デシベルほどの騒音になります。普通のイヤホンでは音量を上げすぎて耳を痛めたり、音漏れで迷惑をかけたりすることも。

そこで役立つのが、アクティブノイズキャンセリング(ANC)です。周囲のノイズを打ち消して、適切な音量でもクリアに聴けるようにしてくれます。

また、通勤時に快適さを左右するのは、バッテリーの持続時間と携帯性。本体6時間以上・ケース20時間以上なら、2~3日充電いらずで安心です。

おすすめは、アップル「AirPods Pro 3」で低周波ノイズをしっかりカットできる性能が人気です。ソニー「WF-1000XM5」も好評で、外音取り込み機能を使えば駅のアナウンスだけを選んで聞く設定も可能。手頃な価格を重視するなら、Anker「Soundcore P40i」もANC入門機として優秀です。

在宅ワーク・会議:生活音をカットして“話しやすい空間”を

在宅ワークでは、家族の生活音やキーボード音、エアコンの稼働音など、オフィスとは違う雑音に囲まれています。Web会議中にこれらが相手に聞こえてしまうと、集中しづらく、印象も損なわれがちです。そんなときは、マイクのノイズキャンセリング機能があると、こうした環境音を相手に聞かせずに済みます。

さらにマルチポイント接続対応なら、PCとスマホを同時につなげて自動で切り替えられるため、着信対応もスムーズ。長時間の会議では、装着感の軽さも重要なポイントになります。

「AirPods Pro(第2世代)」は、iPhoneとMacの自動切り替えが高評価。Sony「WF-1000XM5」は、ボイスフォーカスなど細かな外音設定が可能です。中価格帯でも通話品質の高いモデルが多く、在宅ワーカーに人気が集まっています。

ジム・ランニング:動いても外れない安心設計

運動中はイヤホンが外れやすく、汗による故障リスクもあります。また屋外ランでは、車や自転車の接近音を聞き逃すと危険です。スポーツ用途で重視すべきは、防滴性能(IPX4以上)と装着の安定性。イヤーフックやクリップ構造なら激しい動きでも外れにくく、骨伝導タイプなら耳をふさがず周囲の音も把握できます。

人気はShokz「OpenFit 2」。耳を開放したまま安全性を確保する設計で注目を集めています。Anker「AeroFit 2」はスポーツ特化型として好評。本格派にはBeats「Powerbeats Pro 2」もおすすめです。

最近は、心拍数センサー付きモデルも登場しています。イヤホンだけでトレーニング強度を把握でき、フィットネス志向のユーザーに支持されています。

家事・料理:生活音を聞き逃さず作業を快適に

キッチンでは、火加減やタイマー音など、音による情報が安全に直結します。密閉型イヤホンでこれらを遮断してしまうと危険な場合もあります。家事中に使うなら、外音取り込み機能やオープンイヤー構造が安心です。濡れた手でも片手操作できるか、家族の呼びかけを聞き取れるかもポイントになります。

「AirPods 4(非ANCモデル)」は、開放型で外音を自然に取り込みやすいモデルです。ambie「sound earcuffs」は、耳を完全に開放して生活音を逃しません。予算を抑えるなら、開放型設計の手頃なモデルでも十分に役立ちます。

子育て・見守り:安全と音楽を両立する

子どもの見守り中は、泣き声や車の音、他の保護者からの声など、聞き逃せない音がたくさんあります。イヤホンを使うなら、安全を最優先に考える必要があります。そのため、完全開放構造で環境音をそのまま聞き取れるモデルが理想的。緊急時にすぐ外せる軽さや、音量制限で過大音量を防ぐ設計も安心です。

Shokz「OpenFit」シリーズ、JVC「HA-NP1T」、Anker「AeroClip」などが人気の選択肢。子どもの安全を守りながら音楽を楽しめる“開放型イヤホン”として注目されています。

注目の便利機能:生活が変わるテクノロジー

完全ワイヤレスイヤホンは、もはや“音楽を聴く機器”だけではありません。在宅ワーク、健康志向、複数デバイスの併用など、ライフスタイルに合わせてどんどん進化しています。

マルチポイント接続

スマホとPCを同時につなぎ、自動で音源を切り替えられる機能です。仕事中に電話が鳴っても、音楽が自動で停止し、通話後はすぐ元の音楽に戻ります。切り替えの手間がなくなるだけで、日々のストレスが大きく減ります。

選択的外音取り込み機能

AIが音の種類を識別し、「人の声だけ通す」「アナウンス優先」など、状況に応じた外音調整が可能。通勤中は駅の案内を、買い物中は店員の声だけを聞く、そんな使い分けができるようになりました。

マイクのノイズキャンセリング

在宅会議での生活音をカットし、相手には静かな環境で話しているように聞かせてくれます。自宅の雑音を気にせず会話できるので、リモートワークの品質が大きく向上します。

空間オーディオ・立体音響

頭の動きを検知し、音の位置を固定。映画やドラマの音が画面の方向から聞こえ続けるので、自宅でも映画館のような臨場感を楽しめます。

睡眠・集中サポート機能

リラクゼーション音やホワイトノイズで入眠をサポート。一部モデルでは集中タイマーや姿勢アラートも備え、在宅ワーク中の健康管理にも役立ちます。

機能は“使う場面”で選ぶ

完全ワイヤレスイヤホンの選び方で大切なのは、機能の多さではなく、自分の生活に合う機能を選ぶこと。通勤にはANC、在宅ワークには通話品質、運動には装着安定性。自分の暮らしのリズムに合わせて“必要な機能だけを選ぶ”のが、満足度を高める近道です。

新機能に惹かれることもありますが、使わなければ意味がありません。まずは一日の過ごし方を思い浮かべ、本当に必要な機能を選ぶことから始めてみてください。(マイカ・秋葉けんた)

秋葉けんた

編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。