知る人ぞ知る「ネット回線」を速くする裏ワザ
Wi-Fiの電波が弱くてネットのスピードが遅い…そんなお悩みをお持ちのあなたへ。家のネット回線を高速・快適にする三つの有線接続テクニックをご紹介します。
1.テレビのアンテナ線をLAN回線に!MoCA(モカ)アダプター方式
MoCAアダプターを使えば、家中に張り巡らされたテレビの同軸アンテナ線をそのままLANケーブル代わりにできます[1]。米国では一般的な方法ですが、日本ではまだ知る人ぞ知る裏ワザです。
各部屋のテレビ端子にMoCAアダプター(送受信用に2台必要)を接続し、ルーターとPCなどをそれぞれつなぐだけで、有線LANネットワークが構築できます。最新規格のMoCA 2.5なら、最大2.5Gbpsもの高速通信速度に対応しており、自宅のギガビット光回線もしっかり活かせます[1]。では、この方法のメリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
家の既存のテレビ用同軸アンテナ線をそのまま使えるので、新たにLANケーブルを張り巡らす必要がありません。壁の中の配線を再利用する形なので見た目もスッキリ。有線接続になるためWi-Fiより安定して高速です。
MoCAアダプターは1台当たり2万円前後で入手可能で、長距離になるほど専用LAN工事を依頼するよりコスパは良好です[2]。将来的に機器を交換すれば、さらに高速な通信規格(MoCA 3.0で最大10Gbps!)にも対応可能です[2]。
デメリット
家庭内のアンテナ配線の状況によっては使えない場合があります。例えば、BS/110度CS放送の信号を同じアンテナ線で使っている場合、MoCA 2.5の周波数帯域(1125~1675MHz)がBS放送と重なって干渉してしまうため併用できません[3]。地デジのみなら周波数帯が重ならず問題なく使えます[4]。
また、築年数の古い家でアンテナ配線が劣化していたり、分配器がMoCAに対応していない場合は通信速度が十分に出ないこともあります。さらに、マンションなどでアンテナ線を他の部屋と共用している場合、勝手にMoCA信号を流すと他の世帯に干渉する恐れもあるので注意が必要です。
必要な機器
・MoCAアダプター2台(送信側・受信側。それぞれLANポート付きの小型機器)
・同軸ケーブル(アンテナ端子とアダプターをつなぐ短いケーブル)
場合によっては、アンテナ線とテレビを両立させる分波器や、MoCA信号が外部に漏れないようにするフィルター(ローパスフィルター)も用意すると安心です[5]。
導入コスト
MoCAアダプターは2台セットで3~4万円前後が目安でしょう。海外製品を輸入する場合はもう少し安くなるケースもありますが、日本で使用するなら「技適マーク」付きの国内向け製品を選ぶのが無難です。ケーブル類や分波器などを含めても、トータルで数万円程度で収まります。月額料金負担などは特にかからず、一度機器を買ってしまえば、その後の料金負担は発生しません。
注意点(法令など)
電波法の観点で注意が必要です。MoCAアダプターは同軸ケーブル内で高周波の電波信号を使います。通常はケーブル内だけを通るので問題ありませんが、万一アンテナを通じてその電波が外部に漏れ出すと無許可の電波発信となり厳密に言えば違法となりかねません[6]。
そのため、電波が外部に漏れないように、先述のフィルター設置などが必要です[5][6]。このフィルターを使えば、日本でも問題なく使うことができます。このフィルターが1万円前後するので、合計5~6万円の予算は考えておいた方がよいでしょう。
2.薄型LANケーブルでお部屋をまたぐお手軽配線
次はもっとお手軽な方法です。極細・薄型のLANケーブルを使って部屋と部屋を直接つないでしまう方法です。要は「線を引っ張ってくる」だけですが、フラットケーブルと呼ばれる薄いLANケーブルがあるのでドアの隙間なども通しやすく、窓枠などをまたがらせて使うことができます[8]。Wi-Fi中継器やPLC(コンセントを使った電力線通信)よりも安定・高速で、確実に速度アップを体感できるでしょう。
メリット
とにかくシンプルで確実です。特殊な機器は使わずLANケーブル1本あれば良いので、速度損失も最小限。例えば、カテゴリー6A対応のフラットケーブルなら10Gbpsまで対応し、将来の高速回線にも十分です[9]。
配線モール(樹脂製のカバー)で壁際に隠せば見た目もスッキリします[10]。コストもケーブル代程度で非常に安上がりです。設置後すぐに安定した有線接続が得られ、オンライン会議や動画視聴も快適になりますよ。
デメリット
唯一の難点は「ケーブルを這わす手間」です。物理的にケーブルが露出するので、何も対策しないと部屋の美観を損ねたり足を引っ掛ける危険があります[11]。しかし、配線ルートを工夫して、壁際やカーペット下に通すことで解決できます[12]。
ドアの隙間部分は特に工夫が必要で、通常のフラットケーブルでも厚みが気になる場合は、さらに薄い隙間通し専用ケーブル(数ミリ厚)+中継コネクタを使う方法もあります[8]。ケーブル自体も極端に折り曲げたり踏みつけたりすると断線の恐れがあるので、モールやテープでしっかりと固定して保護しましょう[13]。
必要な機器
・LANケーブル(フラットタイプ推奨)
長さは余裕を持って、配線ルートに合わせた長めのものを用意します[14]。壁や床に固定する配線モールやケーブル固定用クリップ/テープがあると安全・キレイに仕上がります[10]。ドア下を通すなら隙間用LANフラットケーブル+LAN中継コネクター(隙間ケーブルの両端を通常ケーブルとつなぐため)も必要です[15]。
導入コスト
非常に安価です。例えば、エレコムの薄さ1.5mmフラットLANケーブルは10mで3000円前後、3mなら1300円程度で市販されています[16]。配線モールも数百~千円程度、クリップやテープも数百円といったところです。DIY感覚で始められるので、総額でも数千円~1万円以内に収まるでしょう。
注意点
賃貸住宅の場合、原状回復に注意しましょう。ケーブルを剥き出しで敷設してビス留めしたり壁に穴を開けたりすると、退去時に修繕費が請求される恐れがあります[17]。配線モールを貼る際も強力な両面テープを使うと壁紙を傷める可能性があるので、できれば跡が残りにくいテープを使うか、退去時に原状復帰できるように計画しましょう[18]。
モール自体の固定には、ネジではなく両面テープや粘着シート付きクリップを使えば、比較的痕跡を少なくできます。また、人の行き来が多い場所ではつまずき防止を忘れずに!ドアの開閉に干渉しない位置に通し、床を横切る場合はテープでしっかりと留めて安全第一で配線してください[13]。
3.電話配管を活用!LANケーブルの屋内配線工事(プロに依頼)
最後は本格派、家の「電話線用の配管」を利用してLANケーブルを通す方法です。多くの住宅には昔ながらの固定電話線(モジュラージャック)の配線が壁の中にあり、そのケーブルは各部屋の電話ジャック間をつなぐ配管(パイプ)を通っています。
現在その電話線を使っていないなら、この配管スペースを流用してLANケーブルを家中に引き込める可能性があります。これは専門的な工事になるため、電気通信設備のプロ(電気工事業者や通信工事業者)に依頼するのが安心です[19]。
メリット
電話ジャックの壁内にLANケーブルを通すことで、完全に隠蔽配線が実現します[20]。見えるケーブルが一切なく、各部屋の壁にLAN用コンセント(情報ジャック)を新設できれば、まるで最初から家に備え付けられていたような美しい仕上がりになります。
もちろん、有線接続なので安定性・速度もバッチリ。配管を通せるならば天井や床下を大掛かりに工事する必要もなく、比較的スマートに施工できます。
デメリット
専門業者による工事が必要なので導入コストが高めです。作業内容や住宅の構造にもよりますが、工事費用の相場は約10万円が目安です[21]。壁内に配管がない場合はさらに費用・工期が増えることもあります[22]。
また、賃貸物件では壁の穴あけやLANコンセント増設などの原状回復が困難な作業になるため、事前に管理会社や大家さんに、工事会社からどのような工事になるのか説明してもらうのが良いでしょう[23]。
導入コスト
前述のとおり数万円~10万円程度と他の方法に比べると高額です[21]。内訳は、業者の出張費・作業費(壁の中の配線作業、ジャック取り付け等)、機材費(ケーブル・プレート類)、配線後のテスト・機器設定サポートなどが含まれます[27]。
住宅ごとに異なるので、複数の業者に問い合わせて見積もりして比較するのがおすすめです[28]。なお、月々の維持費は特にかかりません。一度工事をしてしまえば自宅の固定設備として使い続けられます。
注意点(法令等)
工事を行う際は必ず管理会社・大家さんの許可を取りましょう。賃貸で勝手に壁内工事をするのは契約違反になる場合があります[23]。もし自分で行おうと考えている場合、LANケーブル自体の屋内配線に資格は不要とされています[29]。
つまり、一般家庭で自分が使うLANケーブルを引く分には法律上の免許は必要ありません。ただし、電源コンセントを増設するなら電気工事士資格、固定電話回線をいじるなら電気通信工事担任者資格が必須です[30]。
プロに依頼すれば有資格者が対応してくれるので安心です。技術的には、電気の配線とLANケーブルを同じ配管に通すことは避ける、強い電磁ノイズ源からLANを離す(並行する場合30cm以上離すのが推奨[31])など、専門知識が要求されます。無理にDIYをせず、安全で確実な工事をするために、信頼できる業者さんにお願いするのが結果的には近道でしょう。
まとめ
以上、家のネット回線を速くする三つの方法をご紹介しました。それぞれお手軽さも効果も異なりますので、ご自宅の状況や予算に合わせて選んでみてください。
・「今あるものを活かして便利に」という方はMoCAアダプター方式を検討。配線スッキリで速度も◎ですが、環境によって使えるか要チェックです。
・「安さと手軽さ」なら薄型LANケーブルでの直配線が最有力。思い立ったら今日にでも始められます。
・「多少お金をかけても完璧にしたい!」という場合はプロの配線工事で快適ネット環境を実現しましょう。
どの方法でも、有線LANにすることでネットの安定感と速度アップを実感できるはずです。ぜひ無理のない範囲でチャレンジしてみてくださいね。快適なネットライフのお役に立てれば幸いです。
出典:
MoCAアダプターの仕組みと注意点[6]、薄型LANケーブル配線のコツ[8]、配管工事費用の目安[21]、資格要否に関する解説[29][30]、賃貸物件での工事注意点[17][23]。
[1][3][4][5][6] MoCA 2.5 を使用しTVの同軸ケーブルを使ってLAN構築 #Network - Qiita
https://qiita.com/kerorinfather/items/069230f828ef253cf76f
[2]MoCAを使って離れに有線ネットワークを敷設した話|なごみまくり
https://note.com/nagomimakuri/n/n79122089672e
[8][9][10][11][12][13][14][15][16][20][21][27][28]LANケーブルの部屋をまたぐ配線方法とは?おすすめ商品も紹介
https://office110.jp/lan/knowledge/types/lancable-cross-the-room/
[17][18][23]LAN配線は賃貸でも可能!工事のルールと代替手段、注意点とは? | IT環境メンテサポ
https://mainte-support.com/news/9124/
[19][22][31]LANケーブルの壁配線|壁内・露出配線の方法や費用を解説
https://office110.jp/lan/knowledge/types/wall/
[29][30]LANケーブルの配線に資格は必要? | LANケーブルと結束バンドならパンドウイット
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/1995/







