2026年度からの給食費無償化のイメージ(筆者作成)

【家電コンサルのお得な話・280】 12月18日、自民党、日本維新の会、公明党の3党は、公立小学校の給食費(給食食材費)について、児童1人あたり月5200円を上限に国が実質的に全額支援する制度設計で合意した。開始時期は2026年4月を想定し、所得制限は設けない。給食費の全国平均を基準に、物価高騰分を上乗せした水準となっている。

公立小学校の給食費は月5200円まで自己負担なし

制度上は、国と都道府県が費用を分担し、都道府県負担分は地方交付税で措置されるため、自治体に給食費無償化による新たな恒常的負担は生じない。例えば、上限の5200円の場合、国と都道府県がそれぞれ2600円ずつを負担し、都道府県分も地方交付税で国から措置されるため、自治体は「実質負担なし」となる仕組みである。

ただし、4月以降の1か月あたりの給食費が上限の5200円を上回る場合、「自治体が一般財源で負担するか」(全額無償化)、不足額を従来通り「保護者負担とするか」、各自治体が判断するため、「完全無償化」とは言えない側面もある。

また、月5200円はあくまで上限であり、一律支給ではない。例えば、現行の給食が月4800円の場合、上限5200円との差額の400円は、自治体にプールされたり、保護者に現金で戻す仕組みではない。誤解されやすいが、この制度の重要な前提である。

公立小学校の給食費について、大阪府内では、すでに自治体ごとの対応の差が明確に表れている。大阪市や高槻市は、市の一般財源で差額を補い、完全無償化を実施済みだ。一方、豊中市のように国の制度の開始を見据え、2026年1~3月のみ無償化を行い、4月以降は国の動向を見極めるとする自治体もある。

また、堺市のように「月5200円では足りない」と明確に指摘する自治体もある。同市の小学校給食費は月5600~5700円程度で、完全無償化には不足額を市が一般財源から捻出する必要がある。同市長は「厳密には無償化ではない」と述べ、国による支援の上積みに期待を示している。このように給食費は地域や食材調達条件によって必要額に差があり、全国一律の基準では吸収しきれない現実がある。

給食費無償化は、子育て世帯の負担軽減として一定の意義はある。しかし、家計全体を恒常的に支える政策とは言い難く、こうした個別施策を積み重ねるより、例えば消費税減税や基礎控除の見直しのように恒久的で一般消費者に分かりやすい負担軽減策こそが本来は重要なのである。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。