さっそくお店についてお話をお伺いしました。
栃木県ご出身、東京育ちの河合さんはもともと製薬会社で薬を作る研究をなさっていた。“職人”として生きていきたい、という思いから会社を辞め30歳で調理師学校に入学。料理の勉強を始めた。
「本当は宮大工になりたかったんです。でも、30歳から始めるには難しく、和食の世界へ入ろうと思った。でもね、30歳をすぎると料亭には入れないんですよ」と、淡々と飾らずに当時のことを振り返られた。しかし洋食なら遅くないと、10年ほど修行。中区海岸通の名店「レストランスカンディヤ」で調理場に立ち、その後系列店である今はなき中華街のバー「コペンハーゲン」の料理長に抜擢された。同店ではお酒の知識も学ぶためにバーテンダーも経験されたという、とても勤勉な方。そして、今から28年前の1987(昭和62)年、40歳で独立。
ギリシア神話に出てくる“自然を守る女神”を由来に「シベール」と名付けられ同店が誕生した。
開店直後は福富町で営業。深夜も営業しているというスタイルは当初から。当時は午後10時から翌朝の8時までお店を開けていた。「28年前は深夜にやっているお店がなかったんです。コンビニやファミリーレストランも午後10時で閉店する時代でした。深夜やっているお店と言えば焼き鳥とか寿司屋とかラーメン屋だけで。洋食屋はなかったので、それが理由です」
なんだか、なんだかわかんないけど痺れた!!
「本当は店を持つ気はなかったんです。本を書きたかったんですよ。“コックの嘘”っていう」
職人気質で、ユーモアもあわせ持つお人柄。
「シベール」は今から18年前、福富町から現在の宮川町に移転し、現在に至る。
客層の95パーセントは夜遅くに働いていらっしゃる方々。職人さんやクラブのママさん、接待飲食店の従業員をしている男性客などが多いのだそう。
深夜にいただく洋食の味
同店は洋食レストランだが、ネギラーメン(800円)や冷やし中華(900)、牛肉のたたき(1200円)などもある。さっぱりとした冷やし中華は、季節を問わず人気だそう。
ここでお客さんもいらしたので、一緒に料理をいただくことに。私たちはオープン当時からあるという人気メニューのエスカルゴ(1200円)とカニのクレープ包みグラタン(1400円)をいただいた。
手際よく調理する河合さん。丹念に仕込んだものを温めたりオーブンに入れたりを中心に調理する。河合さんお1人でお店を全て回すため、オーダーが入ったあとにイチから調理せず、お客さんを待たせないよう工夫をしているのだそう。
「営業は午前1時から午前8時までですが、その日の営業後、午後3時までは仕入れや仕込みなどで店にいます。夕方になると新鮮な食材が手に入りませんし、仕込みも時間がかかるので」と、河合さん。同店のメニューはほとんど河合さんのオリジナル料理で、ソースもイチから全て手作りされている。
このクレープの皮、何日かけているでしょうか。なんと、3日です。生地を作って寝かせ、焼いてからまた寝かせ、中身を包んでからまた寝かせるんですって。これぐらい時間をかけないと、生地が破れてしまったりしてうまく作れないそう。また、クレープの中のクリームと里芋ソースも3日かけて作っている。
生クリームをたくさんかけて、チーズを盛ってオーブンへ。