パナソニックの小世帯向け家電

パナソニックは3月3日、「小世帯のくらし」体感セッションとして、日本の世帯の変化を背景にして同社が考える「小世帯」の具体像を発表。小世帯が抱く理想と課題を解決するための「小世帯向け家電」を、製品群で提案する。これまで家電業界で慣例とされてきた「春商戦は若いひとり暮らし向け」「単機能で安い家電」という考え方を覆す。幅広い世帯に向けて「シンプルだけど上質なくらし」を提案する。経済ジャーナリストの荻原博子さんのトークセッションでのコメントも交えながら紹介しよう。

「ひとり暮らし」「共働き夫婦」「セカンドライフ夫婦」に組み替え

「小世帯」という言葉は、まだ社会に定着しているとは言えず、聞きなれない人も多いかもしれない。若年層か年配層のイメージが強い単身世帯とは異なり、1~2人で暮らす幅広い世帯層をターゲットにする。パナソニックが2025年8月末から提案しはじめた「小世帯」向け家電は、製品群による提案が新しい。家電業界では、3合炊き高級炊飯器など製品単体での提案はあったものの、製品群での提案はパナソニックが初めてだろう。

小世帯には多様なかたちがあり、例えば、従来の単身世帯である「ひとり暮らし」、子供のいない「共働き夫婦」、子育てが終わって時間にゆとりのある「セカンドライフ夫婦」だ。この小世帯が抱える課題を解決するための家電を、パナソニックが開発・製造する。

そもそも日本では、小世帯(単身者や夫婦のみ)の割合が増えている。国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、1980年に約32%だった構成比は、2020年に約58%と約6割を占め、今後も増える傾向にある。

厚生労働省のデータでは、1世帯当たりの平均世帯人員も1986年に3.22人だったのが、2024年には過去最少の2.2人に減少。40年弱の間に全世帯平均で1人分の生活が失われた形だ。一方で小世帯が増える分、全世帯数は4000万弱から約5500万まで増えている。

経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「高度経済成長期は4人家族、核家族が主流で幸せの象徴でしたが、今の人たちにとってそれが本当に幸せの象徴と思えるのかどうかですよね。子供の教育費が高いですし、家族でくらせることがすごく遠い存在になっています」と、多様化する小世帯の背景にある社会状況を語る。

また居住空間のトレンドについて「住宅そのものがすごく高いですから、コンパクトにしなければ住めなくなっています。独身の方に聞くと、ワンルームにモノが置けないから、コンパクトに生活するしかなく、そういうニーズが高まっています。逆に親から大きな家を相続しても管理しきれず、売却してコンパクトなマンションに移り住む方もいます」と語る。

世帯数は増えているのに、家電市場が拡大しない理由とは

世帯数の増加は、一見すると家電市場そのものが拡大するように映る。しかしここで問題なのが、小世帯が住むスペースの狭さと家電のサイズのミスマッチや、小世帯にとって「多機能な家電はオーバースペック」というニーズのズレだ。特に都市部では住宅価格の高騰により、居住空間の狭いコンパクトマンションが増加。従来の家電のサイズと、なおさらミスマッチが生じている。

ひとり暮らしと二人暮らしの20~60代男女に実施したパナソニックの調査では、家電の購入を諦めたりサイズダウンしたりした経験があると回答した人は38.9%だったという。その理由として1位の「価格が高い」(60.2%)の次に「部屋が狭く設置する十分なスペースがなかったから」(42.2%)が上がる。単身者に絞ると、設置スペースの課題は価格を抜いて1位に浮上する。

荻原さんは「うちも洗濯乾燥機を購入するときはスペースに合うかが第一条件になります。また家電はインテリアの一部としてとらえられているので、カラーも含めてその家電を置いてインテリアとマッチするかどうかも重要な要素です」と語る。

「買いたいけど家に入らない」問題は、メーカーにとり機会ロスに直結するだけに深刻だ。

「ひとり暮らし」の「スペパ」を解決する空気清浄機

パナソニックは、先述したひとり暮らしを筆頭に小世帯の課題である「スペパ(空間効率)の限界」を解決するために、コンパクトで使いやすい「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-SD10UBL/NA-SD10HBL」や「空気清浄機 F-PX70C」などを提案する。

ここでは25年10月下旬に発売した、同社従来機種比で2分の1の面積で設置できるF-PX70Cを取り上げたい。スリムでコンパクトだが、適用床面積は「~31畳」の能力を持つ。8畳(13平方メートル)を約9分で清浄する。

特に、空気清浄機の能力を引き出すのに確保すべき「見えないスペース」に着目したい。従来の加湿空気清浄機は、左右を30cm、前方を15cm、後方を1cm空ける必要があった。左右、前方から汚れた空気を吸い込み、本体上部からきれいな空気を送風する構造だからだ。ここに「見えないスペース」の必要が生じ、家具の間などに設置することはできなかった。

F-PX70Cは、前方に40cm、後方、左右で2cmの空きスペースを確保すればよい。しかも、本体幅は12.5cmなので、本体含めた幅はわずか16.5cm。つまり、前方スペースの確保だけ意識すればいいのだ。前方が空いていればいいので、部屋の角に壁寄せできるし、家具と家具の間、壁沿いに横置きすることも可能だ。

集じんフィルターなどの手入れもフロントパネルを取り外せば行えるので、手入れのたびに本体を引っ張り出す手間もない。まさに、小世帯のスぺパ問題を解決するのにふさわしい機種といえるだろう。

忙しい「共働き夫婦」のタイパを解決する冷蔵庫と食洗機

パートナーとの「共働き夫婦」の課題は「タイパ(時間効率)」だ。働き盛りで忙しく、家事にあてる時間が確保できず、ついつい家事を放置してしまいがち。パナソニックの調べでは、「家事がおろそかになったり、放置してしまったりした経験がある」と回答した人は57.6%にも上る。子供のいない共働き夫婦に絞ると、65.4%まで上がる。

荻原さんは「家電にいろんな家事を任せることで時間が生まれます。時間をどう使うかです。食事をしたら皿は食洗機に洗ってもらう。私も掃除機は帰宅する前にアプリから遠隔操作しています。掃除しなきゃいけないというストレスもなくなりますし、自分の時間もできます」と自身の体験談を交えて語る。

こうした共働き夫婦向け家電として、「冷蔵庫 NR-C33JS2」と「食器洗い乾燥機 NP-TSK2」を取り上げたい。

NR-C33JS2は、上位モデルに搭載している、野菜室が全開できる「奥まで見えるフルオープン」を搭載。下段の湿度をコントロールして鮮度を約7日間もキープする「シャキシャキ野菜室」も搭載する。野菜の使い残し(食品ロス)が減らせるし、鮮度が長持ちする分、野菜を買いに行く頻度も減らせる。

パナソニックの調べでは、疲れている時や忙しい時に「外食や総菜に頼ってしまう」という人が42.6%、「カップ麺や簡単なものだけで済ませる」が31.5%となっている。外食や総菜の頻度が増えれば、コスパも悪くなるし、栄養バランスも心配だ。

NR-C33JS2の約-3℃で保存する「サクッと切れる微凍結」に肉や魚、作り置きを入れておけば、忙しい平日の自炊も短時間で簡単にできる。同機能は、冷凍せずに食材別に約14日~10日間保存できる。電子レンジで解凍する時間も不要なので、すぐに調理できる。

例えば、ハンバーグのたねやカレーなどを週末に作り置きしておけば、冷凍しないでも約10日間の保存が可能。忙しい平日は電子レンジで温めるだけで、しっかりと栄養バランスのとれた食事がとれる。

面倒な皿洗いは食洗機にお任せ。NP-TSK2なら、奥行き約29cmのスリムサイズなので、限られたキッチンスペースに設置できる。二人分とされる日本電機工業会自主基準の食器点数12点と、フライパンなどの調理器具をまとめて洗える。食器だけなら約4人分の24点が洗える。

食洗機は高温で洗うので除菌もできて清潔で、手洗いよりも水道代が節約できる。なお、「乾燥のみ」の設定では除菌できない。除菌効果は食器の量や位置、汚れの程度により異なる点は留意しよう。

「セカンドライフ夫婦」は少し贅沢でくらしを豊かにする家電

子育てを終えたセカンドライフ夫婦に聞いた同社のアンケートでは、「手間をかけず、楽な生活をしたい」と回答した人は52.7%、「少し贅沢でゆとりのある暮らしをしたい」は32.0%だった。

このような小世帯には、先述した「食洗機 NP-TSK2」やスリムな「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-SD10UBL/NA-SD10HBL」はもちろん、「コンパクトベーカリー SD-CB1」もいいだろう。

SD-CB1は、A4サイズ相当の横幅18.8×奥行28.5cmの小さなスペースに設置できる。また、一斤の5分の3サイズの約0.6斤で食べきれるサイズなのもうれしい。

作り方は簡単で、デイリーパン(食パン)であれば付属の粉計量カップとスプーンで強力粉やドライイーストなどの材料を計量し、パンケースに入れてメニューボタンを押すだけ。夜に予約セットしておけば、毎日の朝を焼きたてのおいしいパンの香りで迎えられる。まさに少し贅沢で上質なくらしを実現してくれる調理家電といえるだろう。

荻原さんも10数年に及ぶベーカリーの愛用者。「材料を入れて、間違えずにボタンを押せば簡単においしいパンが作れます。家に来た友だちに振舞うと『すごいね』と喜ばれます。なんのすごさもないんですけど」と笑いながら語る。

今や単身者と夫婦のみの小世帯といっても、そのスタイルは年代やライフステージの違いにより実に多様だ。こうした小世帯に向けて「単機能の家電」だけの提案は通用しない。

パナソニックは、上位モデルに搭載している機能をフルスペックではなくてもコンパクトなモデルに搭載することで、小世帯の少し贅沢なくらし、シンプルで上質なくらしを実現する。全世帯数の約58%(2020年)が小世帯という現実を考えれば、今後も小世帯向け家電へのニーズは高まるばかりだろう。(BCN・細田 立圭志)