開発の中心メンバーに話を聞いた

家の対角や2階、母屋から離れた「離れ」や庭。ホームルーターや無線LANの親機だけでは埋まりにくい電波の死角を、エレコムはコンセント直挿し型のWi-Fi 6中継器でどう埋めるのか。独自に開発した「離れ家モード2」は、屋外利用の法令にも配慮しながらワンタッチで通信エリアを伸ばすという。開発の中心メンバーである神田鉄也・商品開発部ネットワーク課課長代理に、コンセント直挿し型のWi-Fi 6中継器について開発の背景から設計思想、推しポイント、展望などを聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

なぜ今、中継器なのか ホームルーターと家の「死角」

(以下、敬称略) きっかけはホームルーター利用者の声でした。例えば工事不要のホームルーターなどをリビングに置いても、家の対角や離れた部屋では速度が落ちるという不満が多かったんです。実は私自身も同じ課題を体感しており、誰でも簡単に届く環境を用意したいと考えました。そこに母屋から離れた「離れ」での利用ニーズ、さらには屋外利用に関わる電波法という壁が重なり、今回の開発に踏み切りました。

屋外利用が許可された帯域だけを使って通信範囲を拡張する仕組みです。2.4GHz帯と、5GHzの中でも屋外での使用が可能なW56帯に限定。中継器が親機から電波を受けるだけではなく、スマートフォン(スマホ)やPCへ“出す側”の電波も2.4GHz/W56で運用します。これにより、庭や屋外設置の見守りカメラなどでも、法令遵守のまま安心してWi-Fiを使えるようにしました。前世代の「離れ家モード」では「離れの屋内」に利用が限定されるケースがありましたが、離れ家モード2で大きく前進しています。

はい。W56帯は気象レーダーなどと干渉した際にスムーズに帯域移動(回避)しなければならず、制御設計が難題でした。そこで、「ユーザーに難しさを一切意識させない」自動制御ロジックを開発し、特許も取得しています。本体のスイッチをカチッと切り替えるだけで、許可帯域運用へ自動的に移行できるようにした点がコアとなります。

コンセント直挿し×コンパクト、「熱」と「暮らしやすさ」の両立

電源ユニット内蔵の直挿しは、発熱との戦いでした。3Dシミュレーションで基板やヒートシンク、通気の最適配置を検証し、3Dプリンター試作と実機の熱テストを何度も繰り返しました。また、廊下や部屋で目立つ製品だからこそ、「圧迫感のないコンパクトさ」と「角を落とした安全設計」にこだわりました。ぶつかった時の安全性やインテリアへのなじみも、中継器を「家庭のインフラ」にする上で重要だと考えました。

アプリを入れること自体がハードルと感じる方がいます。当社のミッションは、ITに詳しくない方でも「インフラのように当たり前に使える」こと。だから購入してコンセントに挿し、物理スイッチでモードを切り替えるだけで使い始められることを追求しました。

他社製ルーターとも連携できるようにしています。親機がどのメーカーでも、中継器側で適切な帯域を自動選択しながら拡張します。メッシュ運用(EasyMesh)を意識した設計思想もベースにあり、今の環境に1台足すだけで改善できるよう、こだわりました。

一番の「推しポイント」と届けたいユーザー像

やはり「屋外まで合法的につながる」ことですね。前モデルからの進化で、デバイス側への送信も2.4GHz/W56に限定できるようになりましたので。これで庭や屋外設置のカメラなども安心です。さらに帯域の自動切り替えを実装しながら、ユーザー操作はスイッチ一つに抑えたことですね。

ホームルーターで家中をカバーし切れていない方、離れや庭、屋外でWi-Fiを使いたい方です。最近は建材や家電の影響で電波が遮られやすい住環境が増えているにもかかわらず、家庭の接続台数が平均で約2桁に膨らんでいます。古いルーターを延命したい方にも買い足しで効果を感じていただけるはずです。「中継器」という選択肢自体をまず知ってほしい。それが願いです。

「安心・安全・簡単」を核に、ファーム更新で既存製品も強化しつつ、ユーザーの今ある不便を着実に解消します。古い機器の脆弱性への啓発や買い替え促進にも積極的に取り組み、中継器の認知向上を図ります。スマホやテレビに加え、白物家電までつながる時代。確実につながる環境を家庭のインフラとして提供し続けること。それが責務だと考えています。