CP+ 2026のDJIブースで公開された同社初のロボット掃除機。最上位機種でスケルトン構造の「ROMO P」

ドローンの世界最大手、中国・DJIが3月16日、初のロボット掃除機「ROMO」シリーズを発売した。ドローンで積み上げた自律走行技術を家電に転用する。ただ、中国や欧州で先んじて発売されたROMOでは、セキュリティー問題が発覚。既に解決済みではあるが、出鼻をくじく展開になった。一方で、ルンバを擁する老舗のアイロボットは経営破綻。中国企業に買収されている。中国企業の安売り攻勢に屈したとも言われている。それほどロボット掃除機は激戦区。果たしてDJIに勝ち目はあるのか。 2月にパシフィコ横浜で開かれた写真と映像の祭典「CP+ 2026」のDJIブースで、内部構造が丸見えのスケルトン構造ロボット掃除機「ROMO」が国内で初公開され、カメラの展示会に掃除機という珍しい光景が見られた。ROMOには、ドローン譲りの「双眼ビジョンセンサー」「ソリッドステートLiDAR」が搭載されている。出展の理由を無理やり解釈するなら、掃除機というより、地面を這う高機能なカメラ付きロボットだから、とはいえるだろう。

なぜ空を主戦場にしてきたDJIが、地を這う掃除機に参入したのか。理由は、主に二つある。一つは、ドローン技術の「横展開」だ。障害物回避、空間マッピング、自律走行アルゴリズムは、家の中という複雑な環境下でも、清掃にそのまま応用できる。もう一つは、地政学的リスクへの対応。DJIは、米政府の「エンティティリスト」に掲載されており、貿易上の大きなハンディを背負っている。特にドローンは安全保障上の懸念から厳しい規制対象になっている。一方、ロボット掃除機は消費者向け家電。規制のハードルは比較的低い。ロボット掃除機で事業の多角化をもう一歩進める狙いだ。

船出は順風満帆とはいかなかった。2月、米メディアの「The Verge」などが、ROMOの深刻なセキュリティー問題を報じたからだ。事の発端は、フランス人のエンジニア、サミー・アズドゥファル氏が発見したバグだ。自作アプリでROMOを操作しようとしたところ、世界中の約7000台のROMOにアクセスできる状態にあることを発見。これによって、他人の家のライブ映像を覗き見たり、マイク音声を傍受したりすることが可能な状態になっていた、という。ロボット掃除機が「動く監視カメラ」になりかねない、危険な状態にあったことがわかった。DJIでは1月下旬に、同社の脆弱性報奨金制度を通じて、2名のセキュリティー研究者から別々に報告があり発覚した、としている。

DJIは3月6日、公式ブログ「ViewPoints」で声明を発表。サーバー側にあった問題を認めつつ、2月8日と2月10日の2回にわたり修正を実施。問題を完全に解決したと報告した。同社は「調査の結果、ユーザーデータが悪用された証拠は見つかっていない」としている。今後は第三者機関によるセキュリティー監査を強化し、業界標準の認証を積極的に取得する方針を示した。

肝心のROMOそのものの性能は、なかなかのものだ。2mm厚の物体をも検知できる上、サイドブラシとモップが共に伸縮するアーム、そして200日間メンテナンス不要を謳う自動洗浄ステーションも備える。2万5000Paという吸引力も最高クラス。スペックでは上出来の製品だ。ただ、筐体が大きく、狭い部屋には不向きとの評価もある。耐久性は今後の検証で明らかになるだろう。ラインアップは最上位モデル「ROMO P」を筆頭に「ROMO A」「ROMO S」の3モデル。価格はかなり強気な設定だ。同社直販サイトでは3月31日まで発売記念の「フレッシュ割引」を実施中。「P」が19万8000円を16万8850円、「A」が18万9860円を15万9830円、「S」が16万9950円を13万9700円でそれぞれ販売している。

AI技術を実際のモノに搭載して活用する「フィジカルAI」が盛んになってきた。中国ではヒト型ロボット(ヒューマノイド)を手掛ける企業は100社を超えると言われている。この春節のテレビ番組では、子どもと一緒にカンフーを踊るロボットの演技を放映、技術力の高さを誇示した。DJIもこの波に続くかと思いきや、今のところその計画はないようだ。むしろ、ドローンからジンバル、カメラと、得意分野に関連する領域で、着実に守備範囲を広げてきた。掃除機では新参者だが、持ち前の技術力でどこまで先行する他社に迫れるかに注目だ。(BCN・道越一郎)