パナソニックの冷蔵庫WXタイプ(左)とHYタイプ
パナソニックは冷蔵庫のWXタイプとHYタイプの2026年度モデルを、このほど発売した。両タイプとも霜つきを抑制して冷凍食品・食材をおいしく長期間保存できる「霜つき抑制冷凍」機能をブラッシュアップし、さらに電力の需給状況に応じたデマンドレスポンスの自動運転にも対応している。
新製品は450~650Lクラスの2タイプ6機種
新製品はフラッグシップのWXタイプ3機種とコンパクトBIGシリーズのHYタイプ3機種の計6機種で、両タイプとも冷凍室は中央に配置されている。WXタイプは容量が650LクラスのNR-F65WX3(以下、NR-を省略)、600LクラスのF60WX3、550LクラスのF55WX3。HYタイプは同じく550LクラスのF55HY3と500LクラスのF50HY3、450LクラスのF45HY3である。
同社の冷蔵庫事業部・樋上和也副事業部長は、冷蔵庫市場を取り巻く環境について「電気代の高騰による省エネへの関心や脱炭素への意識が高まっています。また、物価高騰による内食志向や冷凍食品市場の拡大、住宅の狭小化によるスペースパフォーマンスのニーズも見受けられます」と話す。
この状況を受けて、同社では『おいしさと使いやすさの追求』『環境など変化するくらしへの対応』を2つの軸として、冷蔵庫事業を強化していく方針である。
冷蔵庫事業強化の具体的な取り組みとして、「省エネでは冷却・断熱・制御技術を磨き続け、2024年には環境負荷低減のために新ウレタン発泡材を採用しています。また、環境とくらしへの対応ではフードロス削減につながる機能の搭載や再生中古品の事業もスタートさせています」と解説する。
さらに、この環境とくらしへの対応で新製品に搭載したのが、業界初のデマンドレスポンス自動対応機能である。
発電量に対する需給バランスを取るデマンドレスポンス
デマンドレスポンス(以下、DR)とは、電力の需給状況に応じて電力消費量をコントロールし、需給バランスを調整する仕組みのことを指す。以下で解説する。
国では、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラルを目指している。この実現のためには温室効果ガスを排出する火力発電を減らし、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー発電を推進していくことが必須となる。
今後電力需要はさらなる拡大が予想されるが、2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2023年度に22.9%だった総発電電力量における再生可能エネルギーの割合を、2040年度には40~50%程度にする目標が定められている。
ここで大きな課題がある。電力会社が火力や原子力、再生可能エネルギーなどで発電した電気は貯めておくことができない。つまり、猛暑でエアコンの使用が増えても、事前に貯めていた電力を供給することは不可能なのだ。電力の消費量に対して電力の供給量が下回る状況が予測されると、節電要請の発出や最悪のケースでは停電もありうる。
また、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーによる発電は天候や自然条件に左右され、発電量が安定しないという問題もある。そこで、電力を生み出す電力会社と電力を消費する側が電力の供給状況に合わせて、電力消費量や使用のタイミングを調整し、供給量と消費量のバランスを保つ取り組みがDRである。
DRには『下げDR』と『上げDR』の2種類がある。下げDRとは、電気の供給量よりも消費量が多くなると見込まれるピーク時間帯に節電を行うことだ。
一方の上げDRは、電力の消費量よりも供給量が多くなると見込まれる時間帯にあえて消費量を増やすこと。ただし、上げDRは電気を使う時間帯をずらすピークシフトという手法を用いるケースが多く、電力消費量自体が増えるわけではない。
いずれのDRも電力会社が要請し、消費側がそれに対応するという形だ。電力会社にとってDRは、電気を安定供給できるメリットがある。消費側はDRに協力することで電力会社からポイントの付与や電気料金の優遇などを受け取れるメリットがある。また、大きな枠組みとしては前述のとおり、再生可能エネルギーの効率利用によるカーボンニュートラルへの貢献だ。
電力会社からDRの要請があった際に消費側が自分で機器の設定を変更したり、電力を使用する行動を抑制したりするのが行動誘引型DRで、機器が自動で設定変更するのを機器制御型DRという。新製品のDRにおいてパナソニックと共同開発した中部電力ミライズによると、機器制御型DRは下げDR、上げDRともに行動誘引型DRよりもDRの効果が高いことが実証実験の結果分かったという。
新製品のWXタイプとHYタイプは、この機器制御型DRに対応。ユーザーが自ら設定を変えることなく、自動で対応するのが特徴である。
下げDRでは予冷後に冷却運転を停止して上げDRでは霜取り運転を前倒し
中部電力ミライズでは、2022年7月から行動誘引型DRのサービスを「NACHARGE」として開始し、2023年9月からは「NACHARGE Link」の名称で蓄電池を対象とした機器制御型DRのサービスも開始した。同社によると、DRサービス全体で37万件の利用があるという。
今回のパナソニックのWXタイプとHYタイプの発売に伴い、中部電力ミライズでは新たに機器制御型DR「NACHARGE Link KADEN」のサービスを開始した。
実は中部電力ミライズとパナソニックは、2023年から共同で冷蔵庫における自動DRの実証実験を行っていた。なぜ、冷蔵庫なのか。一つは冷蔵庫が24時間稼働し、家庭で消費する電力の割合が高いこと。もう一つはパナソニックが有する断熱技術の進化により、下げDRのときに冷却運転を一時的に止めても庫内温度を保てるからだ。
冷蔵庫は常時稼働している家電であり、これまでユーザーのDRの行動手段としては使用されていなかった。そのため、同社では新たなDR貢献リソースとして期待できると考えたという。
WXタイプとHYタイプでの具体的なDR対応を解説しよう。両DRの要請は中部電力ミライズから発信され、パナソニックの「キッチンポケットアプリ」に通知が届き、アプリと連携している冷蔵庫が自動で対応する。
そのため、ユーザーは中部電力ミライズとの電気需給契約およびNACHARGEへの加入申し込みとキッチンポケットアプリでの機器連携が必要だ。
電力会社から下げDR、つまり電力消費量の抑制依頼が届くと、下げDR開始時間帯の前に自動で庫内を通常よりも冷やし、下げDRの時間帯はコンプレッサーを止めて電力を消費しないようにする。下げDRの時間帯が終わると、再び通常運転に戻る。
上げDRの場合は定期的に稼働する霜取り運転を前倒しして上げDRの時間帯に行い、その時間帯の電力消費量を増やす。霜取りの回数が増えるわけではなく、電力が余っている時間帯にずらして行うという仕組みのため、電力消費量は増えないという。
なお、ドアの開閉が多く、庫内の温度が平常時よりも上がっているときや急速冷凍運転時、直前に霜取り運転を終えたときなどは食品保護や利便性の観点から、あえてDRを行わない制御になっているとのことである。
DRが実施される時間帯については、上げDRが主に午前9時~午後2時頃で、下げDRは午後4時~午後8時頃。DR対応開始と終了時は本体から短いメロディが鳴るが、この時間帯以外の午後8時~翌朝までの間に通知は来ないので、就寝時に通知やメロディで眠りを妨げられることはない。
また、中部電力ミライズは全国で展開しており、中部以外の地域に住んでいるユーザーも契約することは可能。さらにパナソニックでは今後、連携する電力会社を拡大させていく方針である。
前述でも触れたDR協力のユーザーメリットとして、中部電力ミライズでは同社の「カテエネ」サービスを通して電気料金の支払いへの充当や、提携ポイントとの交換などができる。仮にDR要請が年間100回程度発動した場合、年間で800~900円のポイント還元を見込んでいるという。
新制御技術で冷却能力を最適化
パナソニックの冷蔵庫の特徴は、奥まで見える大容量のフルオープン冷凍・野菜室と省スペースなのに大容量のコンパクトBIG設計、おいしさを保持する冷凍性能の3点である。
近年は家庭での冷凍食品消費量が拡大しており、同社の製品はこの冷凍保存ニーズに対応して微凍結のパーシャルや業務用レベルという急速冷却・冷凍のクーリングアシスト、タテ置きケース、霜つき抑制冷凍などの機能を搭載している。
新製品のWXタイプとHYタイプでは霜つき抑制冷凍機能をさらに進化させ、従来は約1カ月だった冷凍室上段の霜つき抑制を3カ月まで長期化させた。また、冷凍室下段においても2週間後の霜つき量を約27%抑制している。
冷凍室内の食品・食材が劣化するといってもピンとこないかもしれない。実は食品・食材の霜つきが、劣化に大きな影響を与えるのだ。霜は冷凍食品・食材そのものと周囲に温度差が生じることで、食品・食材から水分が抜け、その水分が食材や食品の包装内に氷となって付着するものである。
水分が抜けた食品・食材は乾燥し、酸素に触れると脂質や成分が酸化して冷凍焼けの原因にもなる。
冷凍食品・食材と周囲の温度変化は、ドアの開閉頻度や安定運転時の温度変化などが主な要因。同社の霜つき抑制冷凍は、冷凍室上段のケースカバーがドアの開閉時や霜取り運転時に侵入してくる温かい空気をブロックし、冷却運転時は食品・食材に冷気が直接触れないようにして乾燥を防ぐ働きがある。
新製品の霜つき抑制冷凍は、この上段ケースカバーに加えて冷却運転をより細かく制御する技術を新たに採用。従来よりもコンプレッサーの回転数を微調整し、庫内の温度変化を抑えるという。
その結果、前述のとおり冷凍室上段に保存した冷凍食品・食材は90日後でも霜つきを約80%抑え、長期間の冷凍保存でもおいしさをキープし、下段も14日間で霜つきを約27%抑える。
キッチンスペースになじむ上質なデザインとカラー
新製品のHYタイプは前述のとおり、省スペースと大容量を両立したコンパクトBIGシリーズで3機種とも横幅は65cm。限られたキッチンスペースにもフィットする。霜つき抑制冷凍をはじめ、奥まで見えるフルオープンやシャキシャキ野菜室、ナノイーX、AIエコナビ、無線LAN対応など、フラッグシップとほぼ同等の機能を搭載している。
ドアはスチールで、本体カラーはヘアラインシャンパンとパールホワイトの2色。いずれのカラーもマット調で上質感のある色合いが特徴だ。
一方のWXタイプは同社の冷蔵庫の中でフラッグシップにあたるモデルだ。HYタイプ搭載機能はすべて網羅しており、冷蔵庫としての機能と使いやすさ、そしてスタイリッシュなデザインも同タイプの特徴である。
WXタイプのドアはガラスで、本体カラーはミスティスチールグレーと新色のストーンブラックの2色。ミスティスチールグレーはガラス表面に凹凸を付けたフロスト加工により、光の跳ね返りを抑えて指紋や汚れがつきにくく、滑らかな手触りになっている。
新色のストーンブラックはガラスに石目調の3Dプリントを重ねて、一見するとガラスとは見えないような素材感で落ち着いた印象を与えるデザインとなっている。
パナソニックの冷蔵庫はおいしさと使いやすさにこだわるとともに、鮮度保持や長期保存で廃棄ロスなどの無駄を出さない機能も実装している。新製品はさらにデマンドレスポンスへの対応で、サステナブル社会の実現にも貢献するものである。
また、キッチンスペースのインテリアともマッチするデザインやカラーに仕上がっており、冷蔵庫の買い替えを検討しているのであれば、ぜひ店頭で実機に触れてみることをおすすめする。







