■リアクション超上級編 『焼きたて!!ジャぱん』(作:橋口たかし)

※パンを食べた人のリアクションです※

・白目をむいて涙を流す
・ズボンを脱いで股間を見せる(未遂)
・平安貴族になる
・天井に貼り付いてパンの解説をしながら高速回転する
・カニパンを食べて手がチョキから戻らなくなる
・美味さのあまり臨死体験したあげく、天国でキャバクラを楽しんで戻って来る
・仮面審査員のチタニウム製仮面が割れて中からクジャクが出てくる
・炎天下のもと審査員があまりに長く解説しすぎてパン職人が熱中症になる
・箱の中から全裸の板東○二が大量に飛び出してくる(いろんな意味で危険)
・審査員が“5層”のパンとダジャレを言いたいためにわざと逮捕されて“護送”される


・パンの美味しさの秘密をダジャレのリアクションで表現するために審査員がわざとナイフで刺されて臨死体験してみたら、天国のキャバクラで思いがけず生き別れの親と会って出生の秘密を明かされて本人は無事に生還するが、親は現実世界の病院で輸血しすぎて死ぬ
・その親を救うために美味しいパンを食べさせて再び審査員を天国に行かせるどころか、タイムスリップさせて過去の歴史を変えて親が死ななかったことになってみんな幸せ

  ゴハンより美味しいパンを作るのが夢の少年・和馬は、幼いころから独自のパン“ジャぱん”の開発に勤しんでいた。やがて義務教育を終えた和馬は数々の試作型ジャぱんをひっさげて上京。有名ベーカリーで職人として働きながらライバルたちとのパン対決に挑んでいく。全26巻。

  テレビアニメ化されて海外まで進出、小学館漫画賞の獲得、コンビニとタイアップしてパンが発売されるなど話題豊富だが、とにかく本作は「リアクションがすさまじい漫画」と評するのが一番しっくり来る。

  序盤こそパンの素材や調理方法を詳しく解説して、順当に誰が見ても美味しいパンが勝利するという展開だったのだが、単行本10巻あたりを境に極端なリアクションが増加。心肺停止とかタイムスリップがほぼ当たり前となり、その理由も「パンの素材のタイマ(大麻) → タイム → タイムマシン」といったダジャレつながり。終盤はその図式がさらに加速して(ネタバレを含むから詳しく書けないが)、もはや美味しいパンを作るというより「いかに狙い通りのリアクションを審査員に取らせるか?」というシュールな作風に変化していった。

  この路線に当時の読者は賛否両論だったが、個人的に嫌いではない。アニメ版は未見なのだがあちらでも相当にリアクション劇をやらかしてくれたらしい。豊富なパンのトリビアと巧みな絵柄、個性の塊みたいなキャラクターたちは今読み返してもかなりのレベルで、料理漫画としてもおもしろい。後半のリアクション偏重路線もギャグ漫画として、たとえば『テニスの王子様』を楽しめる人なら問題ないだろう。月乃かわいいよ、月乃。


  以上、これでもかとリアクションを繰り出してくる3タイトルを紹介した。単にリアクションを激しくした漫画ならほかにもあるが、実際に読んでいて楽しめる作品はそう多くない。純粋にスポーツ、青春、冒険、料理漫画として楽しむもよし。リアクションだけ抜き出して笑い転げるもよし。ひと粒で二度美味しいのがリアクション漫画の真骨頂である。 

 

   

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。