Secualの菊池正和・代表取締役CEOに話を聞いた

ホームセキュリティは、富裕層向けのサービスというイメージが強い。初期費用20~30万円、月額5000~7000円という価格帯は、多くの一般家庭にとって「手の届かない安心」といえる。その構造に疑問を投げかけ、誰でも簡単に防犯対策ができる社会の実現に挑んでいるのが月額980円(税別)のサービス「だれでも簡単ホームセキュリティ」を提供するSecualだ。同社の菊池正和・代表取締役CEOに、サービスの背景や今後の戦略を聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

防犯格差を壊す

菊池CEO(以下、敬称略) きっかけは防犯格差への問題意識でした。「ホームセキュリティ」は、実質的に高所得層にしか普及していないのが実情です。所得によって、安全のレベルが変わっているのです。これは、あるべき姿ではないと考えました。本来、防犯は誰もが享受できるインフラに近いものです。ちょうどスマートフォンやIoTが普及し始めた時期で、技術的にも低価格で実現できる環境が整ってきた。そこで、「誰でも簡単に使える」「安価で導入できる」というコンセプトでサービス化しました。

菊池 サービス名の通り、「だれでも簡単」に導入できるということです。他社のサービスは専門業者による工事が必須ですが、当社のサービスはコンセントに挿すだけ、センサーを貼るだけというものです。また、当社では警備員の駆けつけサービスをあえて持っていません。その代わりに異常検知時にはスマートフォンに即時通知し、ユーザー自身が行動するようにしました。防犯を「任せる」ものから「自分でコントロールする」ものへ変える仕組みです。

菊池 もともとは一人暮らしの女性を主要ターゲットにしていましたが、現在はかなり広がっています。例えば、高齢者世帯は重要なお客様です。最近は犯罪の傾向も変わり、高齢者が狙われるケースが増えています。また、賃貸住宅に住む方々も大きな対象です。工事不要なので、これまで導入が難しかった層にもアプローチできています。さらに、子育て世代や新築を購入したタイミングの方など、「人生の節目」で防犯意識が高まる層にも多く利用されています。

菊池 実現のポイントはコスト構造の抜本的な見直しです。まず、DIY設計によって工事費をゼロにしました。これだけでも他社のサービスとは大きく違います。次に、他社のサービスは価格の大半が人件費が占めているため、警備員の駆けつけサービスをなくすことによってコストを大幅に削減できました。さらに、クラウドを活用することでインフラコストを柔軟にコントロールしています。ユーザー数に応じて拡張できるので無駄がありません。こうした積み重ねで、月額980円という価格を実現しました。

菊池 最も重視しているのは「検知」です。異常をいかに早く認識できるかが、その後の行動を左右するからです。当社のサービスは、スマートフォンへの通知をきっかけにユーザーがすぐに通報や避難行動を取れる設計になっています。抑止や威嚇も重要ですが、それらは補完的な役割です。まず「気づく」ことが最も重要だと考えています。

菊池 一定の抑止効果はあります。侵入者はリスクの低いターゲットを選ぶ傾向があるので、「対策している」と見せるだけでも意味はあります。ただし、それだけに頼るのは危険です。ステッカーが貼ってあっても侵入されるケースはあります。大切なのは、抑止・検知・威嚇を組み合わせて、自分なりの防犯を構築していくことです。当社のサービスは、その最初の一歩になればいいと思っています。

防犯は“日常に溶け込むもの”

菊池 やはり「簡単さ」が一番ですね。設置が数分で終わるので、導入の心理的ハードルが低い。また、デザインにもこだわっています。インテリアに自然に溶け込むようにしているので、「防犯機器っぽさ」がないのも好評です。防犯を“特別なもの”ではなく、“日常に溶け込むもの”にしたいという考えが評価されていると感じています。

菊池 今後は大きく三つの方向で進化させていきます。一つめは屋外カメラの拡充です。特に配線不要のモデルなど、設置ハードルを下げた製品に力を入れていきます。二つめはAIの活用です。単に異常を検知するだけでなく、不審な行動を理解し、危険を予測するレベルまで進化させます。三つめは家と車の連携強化です。当社では、車の防犯対策サービスも提供しているのですが、生活の中で重要な資産である「住まい」と「車」を一体的に守る仕組みを作りたいと考えています。

最終的には、セキュリティーが特別なものではなく、住宅やスマートホームの機能として自然に組み込まれる世界を目指しています。