主な情報通信機器の保有状況(世帯)とインターネット利用機器の状況

2012年5月、ビックカメラがかつての業界売上高1位の企業・コジマの買収を発表し、大いに話題となった。そして今年6月、現在売上高No.1のヤマダホールディングス(ヤマダHD)とエディオンが、対等を前提条件とする経営統合に向けた協議・検討を進めることで合意したと発表した。 今後、計画通りに進めば、2027年10月に連結売上高約2.5兆円の巨大グループが誕生する見込み。ヤマダHD傘下には住宅関連メーカーやリサイクル関連企業もあり、「くらしまるごと」戦略と利益率の高い「PB(プライベートブランド)」の拡充を推し進めるための経営統合だ。

今回は当サイトの過去記事を一部引用しながら、2012年とは様変わりした家電量販店を取り巻く環境の変化を振り返る。新たな業界再編の始まりか、単なる有力企業同士の統合で終わるか、今後の動向に注目だ。

スマホが主役に変わった2010年代前半が転換点

家電量販店の目玉商材は時代によって変わってきた。2000年代前半から半ばにかけては、PCと固定ブロードバンド回線(ADSL)、デジタルカメラ、iPod(携帯オーディオプレーヤー)、電子辞書などが話題になり、2007年頃から本格化した「地デジ特需」や大型スポーツイベント効果で液晶テレビが飛ぶように売れた。地上アナログ放送が終了し、東日本大震災の被災3県を除き、デジタル放送に移行した「地デジ」元年は2011年である。

https://www.bcnretail.com/news/detail/120606_22937.html

米国で2007年に発表されたiPhoneは、日本には2008年に上陸。そのわずか2~3年前は従来型携帯電話(ケータイ)の全盛期で、楽曲を1曲単位で丸ごとダウンロードして再生できる「着うたフル」が人気を集めていた。

当初、iPhoneはソフトバンク独占販売だったため、国内端末メーカーもOSにAndroidを搭載したスマートフォン(スマホ)でAppleのiPhoneに対抗しようと試みていた。まだ日本語入力や機能などに難のあったiPhone、Androidスマホ、ケータイの三つ巴の競争期を経て、2011年のau、2013年のドコモのiPhone取り扱い開始以降、本格的にスマホの普及が始まった。

前回、家電量販店再編があった2012年頃は、家電量販店の目玉が液晶テレビからスマホに切り替わった時期だ。その頃、ヤマダ電機(現ヤマダHD)は、中堅ハウスメーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を連結子会社化。以降も「大塚家具」や「ヒノキヤグループ」などを次々とグループに迎え、今は中間持ち株会社「ヤマダ住建ホールディングス」のもと、「くらしまるごと戦略」の中核となる「住建セグメント」を形成している。

一方、もともと複数の家電量販店の合併で誕生したエディオンは、設立10周年となる2012年10月に家電専門店「デオデオ」「エイデン」「ミドリ」「イシマル」直営店のストアブランドを「エディオン」に統一。サンキューが運営する「100満ボルト」も2025年4月に「エディオン」に店名を変更し、ようやくALL「エディオン」となった。ヤマダHDとの経営統合も、当面は店名を維持する方針を打ち出しているが、前例に倣い、将来的には共通の新ストア名に変わる可能性も残っている。

総務省が5月19日に発表した「令和7年通信利用動向調査」によると、2025年の調査で初めてスマホとテレビの世帯保有率が逆転した(スマホ91.8%、テレビ90.1%)。また、インターネット利用者の割合は、13~69歳の各年齢階層で9割を上回り、インターネット利用機器としては「スマホ」と「PC」の差が年々広がっている。スマホ(74.3%)、PC(45.6%)とも、前年度に比べ微減となった一方、インターネットに接続できるテレビは31.1%と、過去最高を更新した。

求められる「次のヒット商品」

もし、今回の2社の経営統合を機に家電量販店の再編が始まるなら、誰もが知っている、スマホの次のヒット商品が不可欠だろう。数年前は次の重点分野としてHEMS(ホーム エネルギー マネジメント システム)や太陽光発電、EV(電気自動車)などが挙げられていた。ヤマダHDの「くらしまるごと」戦略やエディオンのリフォーム事業強化はそれを見越したものだと思われる。しかし、生成AIの普及による電力需要の増加や物価高騰などを背景に、国内でのEVの普及には懐疑的な見方も強まっている。

また、大型M&Aを続けるノジマの動きも注目だ。同社はキャリアショップ運営(端末販売)やITシステムに加え、ソニーのPC部門を母体とするVAIOを子会社化。さらに今年4月には、日立グローバルライフソリューションズが手がける家電事業を継承する新会社の発行済株式の80.1%を取得し、子会社化すると発表した。グループ内にメーカー機能を取り込むこうした独自の方針の成否は、今後の業界の行方を占う重要なポイントになるだろう。

ビックカメラと並ぶ「都市型カメラ量販店」として知られるヨドバシカメラは、今年6月30日に池袋に新規出店する。関東最大級となる大型店「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」は、自社不動産を生かした戦略が、この10年ですっかり定着してきた「コスパ・タイパ・SNS」の時代においても有効かどうかを占う試金石だ。

家電量販店各社に共通する課題は、店頭で確かめてECで購入するリアル店舗の「ショールーム化」や、物価高騰や環境意識の高まりを受けた「買い替えサイクルの長期化」だろう。かつてはテレビ、次にスマホという明確な成長ドライバーが存在したが、今は不透明だ。この違いこそが、2012年と2027年を分ける決定的な差といえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)