東京の一流フレンチレストランシェフから学ぶ調理と生き方

県立坂井高校生活デザインコース2年生たちに、語るようにホワイトソースの作り方を教える小川シェフ

焼き立てのスフレが完成
坂井市丸岡出身の小川智寛シェフ 坂井高校生56人相手に特別授業
福井県坂井市丸岡町出身で、東京・麻布十番でフレンチレストラン「エルブランシュ」を営む小川智寛さん(53)を講師に招いた特別授業が7月8、9の両日、坂井市の県立坂井高校で行われた。小川シェフは、フランス料理の基本である「ホワイトソース」を使った料理2品の作り方を教えながら、人生においても「このホワイトソースのように、基礎をちゃんと身に付ければ、君たちも未来の選択肢が広がる」と説き、丁寧な調理を見せながら「若いうちに、人生のホワイトソースを作っておこう」と呼びかけた。小川シェフ 料理人だけにとどまらず、フードビジネス、地方創生と幅広く活躍
小川シェフは、調理師専門学校の卒業後、国内修業を経て1997年にフランス料理を学ぶため単身渡仏。帰国後の2007年、麻布十番に「エルブランシュ」をオープン。その後、2店舗目として、坂井市三国町にフレンチレストラン「LULL(ラル)」を開業。現在はレストラン経営のほかに、フードビジネスの開業支援、レシピ開発などのコンサルティング、さらに地方創生で各地の食によるプロジェクト推進など、フードビジネスの場でプロデューサー的な活躍をしている。今回の坂井高校でのキャリア教育特別授業も、小川シェフから地方創生の提案を受けた坂井市が、学校側に仲介し実現。小川シェフは市内の飲食会社と商品開発でコラボするほか、坂井高生徒2人をインターンシップとして「LULL」で受け入れるなどふるさとへの貢献に前向き姿勢を示している。
「人生のホワイトソース、それは人としての土台」

「このマリーズは思い出の道具。ソースづくりがうまくなりたい一心でよく使いこなした」と人生訓を語る小川シェフ
授業を受けたのは、生活デザインと食品の2コースの2年生56人。「料理人という生き方から学ぶ、キャリアと未来のつくり方」というタイトルで、単なる調理実習だけでなく、生徒たちがフレンチ料理の基本であるホワイトソースの作り方を学ぶ一方で、小川シェフのキャリアや働き方の講義を聴いてもらい、自分たちの将来の進路や生き方について考えてもらう趣向。小川シェフが調理したのは、「ホワイトソース」をベースにした「クロックムッシュ」と「スフレ」というフランスの食卓ではおなじみの料理2品。
牛乳とバター、小麦粉だけを材料にできる「ホワイトソース」だが、フランス料理の基本のソースだけに「このホワイトソースが美味しく作れれば、いろんな料理に応用できる」と小川シェフ。9日の授業では、生徒を前に調理を始め、「簡単だけど、ソースを素早く混ぜて、ダマにならないようにね」、「この混ぜる器具、何て言うか、知ってる? そう、ホイッパー」などと途中生徒たちと対話しながら、手元はテキパキと動かし、作り方の手順を分かりやすく解説していった。
時折、単身フランスでの修業時代を思い出しながら、「修業した店では周囲に日本人がだれもいなくて、最初は言葉も通じず本当に苦労した」とか、「このマリーズ(ゴムベラ)は思い出深い道具。大事に作ったソースを鍋の底に一滴も残さずに使いたかったから、上手に使えるよう努力した」などとエピソードを織り交ぜながら、料理に真剣に向き合った姿勢も紹介していった。
出来上がったホワイトソースは、食パンの表面に塗り、その上から高級な「グリュイエールチーズ」を載せオーブンへ。また2品目のスフレも甘エビとハム入りというぜい沢な一品で、卵をしっかり泡立てて、手際よくメレンゲを作る腕前を披露していた。

食パンに丁寧にホワイトソースを塗り込む
「土台がしっかりしていれば、君たちは、どの分野でも通用する」
途中、調理の手を止めて、生徒を集め講義。小川シェフは人生や生き方を今ほど作った「ホワイトソース」に例え、1.【「人生のホワイトソース」をつくる】から始まり、【2.ホワイトソースは、何でも変われる】、【3.「自分だけの生き方をつくる】と三段論法で解説。「『ホワイトソース』は、あらゆる料理のベースとなるように、今日の2品だけでなくグラタンやドリアにもベースとして使える」として、「この1つのソースが、すべての出発点」と説明。その上で、「人生もこのホワイトソースと同じ。ホワイトソースとは、【技術を学ぶ】【知識を身に付ける】【礼儀やコミュニケーション、人との接し方を学ぶ】【挑戦する勇気を持つ】など、つまり人間としての生きる基礎、土台のこと」とし、料理人も「修業していく上で、ある程度腕を挙げると、(基本よりも)もっと難しい料理を作らせてほしい、と思う。しかし、世界で活躍する料理人ほど、この基本を大切にしている」と語り、常に基本に立ち戻ること、人としての土台を築くことの大切さを訴えた。
次に「ホワイトソースは何にでも変われる」では、「最初に選んだ進路が、人生のすべてを決めるわけではない」と語り、就職や進学を考える局面でも、「大切なのは、自分が選んだ道で、どんなホワイトソースを作るかだ」と解説。最後に、小川シェフ自らの生き方が料理人の枠を超えて幅広い分野に挑戦している例を示して、「人として土台がしっかりしていれば、どの分野でも通用する」として、「いま16、17歳の君たちが将来を考える上で大事なのは、『何になるか』よりも『どんな土台をつくれるか』。20歳ぐらいまでは、大人になって活躍できるよう土台づくりを頑張ってほしい」と、生徒たちの将来にエールを送っていた。

調理の途中、進路や生き方についてのアドバイスに耳を傾ける坂井高校の生徒たち
2品が出来上がった後は、全員で試食し、生徒たちはおしゃべりしながら「美味しいね」「ホワイトソースしっかり作れるかな」などと話していた。食品コースのある女子生徒は「クロックムッシュがあまり食べたことがなく、美味しかった。小川シェフのいうことは、何となく理解できた気がする」やデザインコースの生徒からは「小川さんの言葉の中で『ひとつのことを本気で学べば、そこから新しい可能性はいくらでも広がる』が印象に残っている」などの感想が出ていた。
坂井高校での特別授業を終えて小川シェフは「坂井市は昨年、美食アワードを獲得しており、今後、坂井産の美味しい食材を生かして、美食を切り口に様々な政策をやっていくと思うが、僕なりにお手伝いできることがあったら、協力していきたい」と話していた。
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