毎熊克哉【スタイリスト:カワサキタカフミ/Makeup Designer:MARI】(左)、近藤華【スタイリスト:道端亜未/ヘアメーク:井手真紗子】(C)エンタメOVO

 『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』で注目を集めた竹林亮監督が、透明人間の娘と一緒に東京へ旅に出る家族の奮闘を描いたSFロードムービー『見えない娘 THE INVISBLES』が、8月28日から全国公開される。本作で父親の星野学を演じた毎熊克哉と長女の風子を演じた近藤華に話を聞いた。


-毎熊さんは、割と硬派な役や強面(こわもて)の役が多いですが、そういう意味では今回の役は新鮮でしたか。


毎熊 自分としては、特に硬派な役をやりたいと思っているわけではないのですが、やはりイメージがあるというか、出会いづらい方向性のキャラクターはあるのかなと思ったりもします。そんな中で、こういうファミリームービーで、気の弱い心配性なお父さんをやらせてもらってありがとうございますという感じです。この映画では何の犯罪も起きないですからね(笑)。竹林(亮)監督とは、この作品が初めましてでしたが、よくこの役を僕にと思ってくださったなと思います。


-近藤さん、毎熊さんのお父さん役はいかがでしたか。


近藤 毎熊さんは、ちょっと怖めの役をやられることが多い印象だったので、どういう方なのか全然想像がつかなかったのですが、実際はすごく優しくて。現場で3人娘で遊んでいる時も一緒に入ってくださって、しり取りなどをしました。ずっと娘を心配しているちょっと気の弱い感じのお父さんでしたが、タクシーに乗る時や、走ったり、歩いたりしている時の背中に安心感があって、すごく“お父さん”という感じがしました。だから、ちょっと心配だけど、付いていけば何とかなると思えました。よく見ていた、ちょっと怖いキャラクターとは全然違う雰囲気を出されていたのですごいなと思いました。


-三女のひかりが透明人間という設定で、彼女は声だけで全く映らないわけですが、実際はいない相手に向かって演技をしていたのですか。


毎熊 撮影が始まる1、2カ月前ぐらいからみんなでリハーサルをしました。現場でも(ひかり役の)鈴木凜子ちゃんはずっと一緒にやっていて、本番だけ抜けるみたいな感じでした。いない相手を見て演技をするというのは、ある意味、見え方的な問題が大きいのかなと。見えるか見えないかという点では、俳優のスキル的な部分に寄るところもあるのかなと思いますが、長い間、凜子ちゃんが一緒にやってくれたことで、そういうことを抜きにして、この家族が一緒にいる時はこんな感じだというのを一緒に作れました。それはすごく大きなことだったと思います。


-演じる上で特に気を付けたことはありましたか。


毎熊 見えない娘を無理やりにでも見ようとする。見えるようになれば全部分かるみたいなことを言っている父親。だから、前半は「透明人間、どこどこ」みたいな一般的な感覚に近い感じです。逆に(姉の)風子と音々は、最初からひかりの存在を認めているから気にもしない。そういう父親が、旅でいろいろな経験をして、最終的には見えないものに対する感じ方や向き合い方が変わっていく。そういう役割を持っているので、最初は「俺だって分かろうとしているんだよ」みたいなことでいいのかなと思いました。でも、所々で大事なポイントがあって、例えば、娘に言われたことで何かを感じたことや、言葉にはしづらいけれど、確かに何かを受け取ったみたいなことは、形にしないようにしようと思いました。それを表現で形にすると、見えないものを感じる力ではなく、記号になってしまうような気がしたので、自分の中では、一番大切に受け取ったものは、なるべく「感じました」とはしないようにしようと思いました。

近藤 風子が映画を撮ることに興味があるのは、自分ともすごく似ているところだったので、近藤華のオタク的な部分を出して演じた部分はありました。風子は年齢的に子どもでも大人でもない時期なので、自分は大人だと思って背伸びをしているところから、だんだんと子ども心というか、自分を出していく過程を大事にしようと思いながら演じました。


-タクシー運転手役の寺島進さんとの絡みも面白かったです。


毎熊 寺島さんとは『孤狼の血 LEVEL2』(21)でもご一緒させていただきました。僕は寺島さんにガソリンをかけて部下に「燃やしとけ」なんて言う役でした。その時から寺島さんはすごく優しい方だなと思いつつ、しゃべり言葉はチャキチャキとしたリズム感を持っていらっしゃいました。今回の現場でも寺島さんが入ってくると、空気感はガラッと変わったのですが、ハードボイルドな役柄のイメージを知った上で若い女の子たちに囲まれている寺島さん、というのはすごく面白かったです。


-竹林監督の演出はいかがでしたか。


毎熊 これは僕が勝手に思っているのですが、もしかしてこのお父さん像にはちょっと竹林さん自身が入っているのではないかと。だからイメージは全部自分の頭の中にある。ただ、現場ではそこに俳優やカメラマンなど、いろんな要素が入ってきて、実際には自分が思うところとは違うことも多々ある中で、竹林さんはいつもほかの人の意見に耳を傾けて自分で消化をする。自分で思ったことを「絶対にこうなんだ」と押し付けないところが印象的でした。


-完成作を見た感想を。


毎熊 とても面白かったです。脚本も面白かったのですが、現場でのいろんなことや会話を思い出しながら、やっぱりリズムがいいと思いました。リズムが悪いと多分違う見え方がしたと思います。また、目線が近過ぎず遠過ぎず、すごく優しいというのが、竹林監督の『14歳の栞』(21)『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22)『大きな家』(24)との共通点だと思いました。この映画も、脚本を読んだ印象や現場で演じた印象よりも、完成作はさらに面白かったです。


近藤 自分の思い入れがあるので、それを思い出して、最初から泣いてしまいました。映画を見るというよりも、あの時はこうだったなと自分の思い出を思い返すみたいな感じでした。撮影している時は、ひかりはどう見えるのだろうと少し不安でしたが、完成した映画を見ると、ひかりは見えないけど、ここにいるんだというのが分かって、とてもうれしくなりました。


-これから映画を見る観客や読者の方々に向けて、アピールポイントも含めて、一言お願いします。


毎熊 竹林さんが『ホーム・アローン』(90)が好きな映画だとおっしゃっていて、僕も大好きなんですけど、日本だと『学校の怪談』(95)などもありますが、これらは子どもが主役で子どもが見られる、しかも大人も楽しめるエンタメの作品ですよね。そういう映画が最近はあまりないと思います。この映画は、小学生が見ても楽しいですが、一緒に見に来た親御さんも、ぐっとくるようになっています。僕が子どもの頃は、大人たちが、堂々と子どもが見られる映画を作っていて、僕自身もそういうものを見てすごく影響を受けたので、この映画もそういう映画だと思います。


近藤 見えないことに対する恐怖や想像がマイナスの方向に向いてしまうことは、皆さんにもあるのではないかと思います。でも、それは、見えないから怖い、見えているから安心ということではなく、物事をもっとポジティブに捉えたり、もっと自分が感じたことを大事にしていいんだと思います。見えないという恐怖をちょっと和らげてくれる映画だと思います。


(取材・文・写真/田中雄二)