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NHKで好評放送中の連続テレビ小説「風、薫る」。田中ひかるの著書『明治のナイチンゲール 大関和物語』を原案に、明治時代、当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込んだ一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)という2人のナースの冒険物語だ。半年にわたって視聴者を魅了してきた物語はまもなくクライマックスを迎えるが、1年に及ぶ撮影を終えたりん役の見上愛と直美役の上坂樹里が、一足先に撮影の舞台裏や今の心境を語ってくれた。
-長期間にわたる撮影を2人で乗り切った今のお気持ちをお聞かせください。
見上 自分1人ではなく、同じものを背負っている樹里ちゃんが横にいてくれたことが、1年間の撮影を走り抜ける上で本当にありがたかったです。
上坂 私は一人暮らしをしているのですが、ずっと2人で撮影してきた分、クランクアップした今は家に1人でいる時間が長く、愛さんも含め、誰かが隣にいてくれることの大切さを知りました。改めて1年間、隣にいてくださって心強かったです。
見上 りんと直美も、片方に何かあれば、常にもう片方が手を差し伸べ、引き上げてくれるんですよね。1人では成長に限界があっても、2人だからこそ前に進む力を得ることができる。そうやって血がつながっていない2人の主人公が同じ速度で成長していく点が、今までにない朝ドラになったのではないかと思います。
上坂 直美とりんも、同じ問題を一緒に悩むときもあれば、それぞれの悩みにもう1人が一緒に向き合ってくれることもあります。たとえば、直美の場合は母親の文(内田慈)さんや夫の吾郎(甲斐翔真)さんのことだったり、りんの場合はシマケン(島田健次郎/佐野晶哉)さんのことだったり…。そうやって、1人で生きていたら触れることのできない部分にお互いが触れ合い、相手の人生に入り込んでくれる。そういう存在がいることで、人生が豊かになることを私自身も強く実感しました。
見上 私自身の人生を振り返ってみても、学生時代の同級生や幼なじみは、ずっと手をつないで歩いていなくとも、いざというときは手を差し伸べてくれるんですよね。そういう人たちの大切さを思い出すことができました。
-劇中ではりんと直美のバディ感をお二人が魅力的に表現されていました。本作が初対面だったお二人の関係は、撮影を通じてどのように深まっていったのでしょうか。
見上 特別なことはしていませんが、日々の積み重ねの中で信頼関係が芽生え、お互いに何を考えているのか、テレパシーのようになんとなく分かるようになっていきました。会っていない時間も含め、自然と自分よりも相手のことを考えるようになっていって。それはすごく幸せなことで、同じ人と一緒に1年も撮影を続けた経験がなかったので、今までにない不思議な感覚になりました。
上坂 休日、買い物に行ったとき、「これ、愛さんが好きそうだな」などと、自然に考えるようになっていきました。愛さんも、週末の休みが明けると、買ってきたお菓子をくださったりして。そういうやりとりが当たり前になっていったことが、関係を深める上では一番大きかったと思います。
見上 きっと、りんと直美も同じだったと思います。りんが娘の環を直美に任せて新潟に単身赴任したこともありましたし、2人はずっと一緒にいたわけではありません。でも、それぞれ違う場所で頑張っているけれど、どこかでお互いのことを思い合い、なんとなく相手の思考が分かるようになっていった。そんな2人の関係に私たちも近いものがあったと思います。
上坂 その点は全く同感です。
見上 …となるくらい、距離が縮まりました(笑)。
-撮影期間の1年にわたって共演したお互いの印象はいかがでしたか。
見上 樹里ちゃんは、すごく大らかで、周りを安心させる空気感を持っているんです。どんなに現場が大変なときも、愚痴を言っているのを聞いたことがありません。そういう樹里ちゃんに、現場の皆さんも助けられたと思います。
上坂 ありがとうございます。私も愛さんをリスペクトしているところはたくさんあります。自分が一番大変なときも、現場を明るく引っ張ってくださって…。「風、薫る」の現場の明るさは、毎日先頭に立って照らしてくださった愛さんのおかげです。
見上 お芝居の話をすると、樹里ちゃんはものすごく感受性豊かで、相手のお芝居を受けて、直美を柔軟に演じている印象がありました。だからきっと、自分でも想像しなかったところにまで直美が広がっていく感覚もあったんじゃないかなと。そこから生まれる化学反応が、作品を作っていく上でもプラスになりましたし、台本からは想像もしなかった直美の表情や感情を一番近くで見られたことは幸せでした。
上坂 それを引き出してくださったのは、愛さんやほかのキャストの皆さんの力です。愛さんは、リハーサルのときから、りんのあり方について監督と細かく相談されていたのが印象的で。そういう愛さんが、現場でりんに切り替わる瞬間が、私を直美にしてくれました。最後まで一緒に走り切ることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
-看護師役を演じて、看護師に対する印象が変わった部分はありますか。
見上 最初の頃は、「技術職」という印象が強く、看護婦養成所のパートが始まったときは、包帯やシーツをきちんと扱えるようにしなければ…という意識が強かったんです。でも、イベントなどの場で実際の看護師の方のお話を伺い、技術だけでなく、心を使うお仕事なんだなと、印象が変わっていきました。マニュアルがない中、一人一人の患者さんをどう看護すべきか。それはつまり、技術的なことだけでなく、患者さんが人生を前向きに、よりよく生きられるようにと考え続ける職業なんですよね。
上坂 私も、派出看護のシーンを撮影していく中で、看護師さんから「現代の訪問看護で大事なのは、その人の生き方を否定せず、より良くなるようにサポートすること」とお聞きしました。正解がなくても向き合い続け、考え続けること。その過程が患者さんのためになるかもしれない。そんなふうに、誰かの人生に寄り添って生きる大切さを、直美を通して知ることができました。
-放送中、現役の看護師の方からの反響で、特に印象的なものはありましたか。
上坂 最近、SNSのコメントで現役の看護師さんから「りんちゃん、直美ちゃんが頑張っている姿を見て、ずっとやりたかった訪問看護の道に進むことにしました」というお言葉を頂きました。しかも、劇中で直美が子どもを授かったタイミングでご自身も婚約されたそうで、そのお話を伺い、すごく感動してしまって。作品を通じてそういうきっかけを与えられたのは、幸せなことだと思います。
-1年に及ぶ本作での経験が、今後の俳優人生にどのように役立つとお考えでしょうか。
見上 その点については、まだ想像ができません。というのも、私には終わった実感がまだないんです。実感を得ようと、何もなくなったスタジオに行ってみたら、また来週から撮影が始まるような気持ちになってしまって…(笑)。寂しいですね。ただ、1年を通してりんの人生に向き合い続けたので、いずれはりんの強さや柔軟さに助けられる瞬間がきっとあると思っています。
上坂 お芝居だけでなく、さまざまな面で感謝しきれないくらい、多くの方に支えていただいた1年でした。そのおかげでこの先、お仕事はもちろん、それ以外でも悩みや大きな壁にぶつかったとき、この1年の経験が支えになってくれると思っています。
-最後に、撮影を終えたお二人が改めて一緒に何かするとしたら、どんなことをしますか。
上坂 私は生ガキを食べたことがないんです。その話を愛さんにしたとき、「終わったら食べに行こうね」と約束したので、2人で生ガキを食べに行きたいです。
見上 私は温泉が好きで、那須でクランクインしたとき、毎日、温泉に入れることがすごく幸せだったので、樹里ちゃんと一緒に生ガキを食べて温泉に入る日を作ろうと思います(笑)。
(取材・文/井上健一)





