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『ラスト・サバイバー』(8月28日公開)


 謎のパンデミックによって人類の大半が死滅し、生き残った者たちが奪い合い、殺し合う荒廃した世界。


 パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦線を張ることで、かろうじて生き延びていた。そんな彼の心の支えとなっているのが、愛犬ジャスパーと、亡き妻の記憶だ。


 ある日、ヒッグの小型機の無線に謎の声が届く。世界の終わりにも、まだ失われていないものがあるのかもしれないと考えたヒッグは、その声に導かれるように未知の空へと飛び立つが…。


 ピーター・ヘラーのベストセラー小説を、リドリー・スコット監督が映画化したディストピア・サバイバル劇。脚本をマーク・L・スミスが執筆し、マーガレット・クアリー、アリソン・ジャネイ、ガイ・ピアースらが共演する。


 終末世界を舞台に、ディストピアの中にユートピアを探す。これはアポカリプス映画ではおなじみの設定だ。この映画が投げ掛けるのも、「絶望的な世界で、人は再び希望を見いだせるのか」という問いである。


 原作が発表されたのは2015年。そこから10年余を経て映画化された本作を、コロナ禍という世界的なパンデミックを経験した現在に見ると、単なるSFサバイバル以上のリアリティーを感じさせる。


 ところで、リドリー・スコット作品として面白いのは、そのトーンだ。荒廃した世界を描きながら、冒頭にはどこか牧歌的で静かな時間が流れる。さすがに巨匠も丸くなったのかと思わせておいて、そこはやはりスコット。やがて緊張感あふれるバイオレンスが顔を出す。80代後半を迎えてもなお、これほどエネルギッシュな作品を撮ること自体が驚異的だ。


 だが、本作を単なる“スコットの新境地”と見るだけでは物足りない。自分が本来いるべき場所から切り離され、異境の中で孤独を抱える人物を描くという点では、『エイリアン』(79)『ブレードランナー』(82)『ブラック・レイン』(89)『1492 コロンブス』(92)など、スコットがこれまで繰り返し描いてきたテーマと通じるものがあるからだ。


 未知の場所に置かれた人間が、そこで何を感じ、何を求めるのか。その問いを、終末世界という極限状況でさらに突き詰めた作品だともいえる。


 そして今回は、絶望の先にある希望に重点が置かれている。孤独なヒッグが無線の声をきっかけに外の世界へ踏み出していく姿は、人間が他者とのつながりを求める物語でもある。


 荒涼とした世界を描きながら、最後に浮かび上がるのは「人間は、誰かとつながることで生きる」という極めてシンプルなメッセージ。その静かな希望に、長年にわたって人間の孤独を描いてきたリドリー・スコットの、現在の視線を見ることができる。

『シェルター』(8月28日公開)


 スコットランド沖の孤島に建つ灯台を隠れ家にして、愛犬と共にひっそりと暮らす元特殊部隊員マイケル・メイソン(ジェイソン・ステイサム)。


 ある日、週に一度、叔父と共に船で生活物資を届けに来る少女ジェシー(ボディ・レイ・ブレスナック)が嵐に巻き込まれ、海へ投げ出される。


 間一髪で彼女を救ったメイソンは、唯一の肉親を失ったジェシーを自らのもとに置くことに。孤独を抱える一匹おおかみの男と少女は、少しずつ心を通わせていく。


 ところが、穏やかな時間は長くは続かない。突然、MI6による襲撃を受けたメイソンは、ジェシーと共に逃亡を余儀なくされる。


 実は彼は、かつての上司である元MI6長官マナフォート(ビル・ナイ)の恨みを買い、国家による“抹殺リスト”に名前を連ねる存在だったのだ。


 元特殊部隊員と少女が、生き延びるために繰り広げる逃亡劇を描いたリベンジ・スパイアクション。


 監督は『エンド・オブ・ステイツ』(19)などのリック・ローマン・ウォー。長官代行のロベルタ役でナオミ・アッキーが共演する。


 前半で印象的なのは、メイソンとジェシーが少しずつ距離を縮めていく過程だ。いつものステイサム映画なら、まず拳と銃が飛び交いそうなところを、ここでは孤独な男と少女の交流にじっくりと時間をかけている。


 もしかすると、アクション俳優ジェイソン・ステイサムが新たな一面を見せようとしているのかと思わせる展開である。


 だが、中盤を過ぎると、そこはやはりステイサム映画。銃撃、格闘、逃走と、持ち味である肉体を駆使したアクションが一気に加速する。


 しかも今回は、そこに少女とのコンビという新味が加わる。孤独なプロフェッショナルと少女という組み合わせから、リュック・ベッソン監督の『レオン』(94)を思い浮かべる人も少なくないだろう。


 もちろん、ステイサムのアクションは相変わらず見応え十分。年齢を重ねても衰えを感じさせない身のこなしは、さすがの一言だ。


 ただし、前半の人物描写を丁寧にした分、後半の逃亡劇との落差が大きく、全体としてはややテンポの悪さが目につく。派手なアクションに物語が追いついていない印象も残る。


 むしろ本作で注目したいのは、ジェシーを演じたブレスナックだ。『ハムネット』(25)でも強い印象を残した彼女は、いわゆる“テリブル・チルドレン(恐るべき子役)”の一人。本作でも、守られるだけではなく、心に暗い影を抱えながらも強い意志を持つ少女を堂々と演じている。


 ステイサムの屈強な肉体と、ブレスナックの繊細さと強さ。その対照的な2人が、孤島から始まる逃亡の旅を通して疑似親子のような関係を築いていくところに本作の面白さがある。ステイサム映画としては一風変わった“守る者と守られる者”の物語として見ることもできる。


(田中雄二)


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