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 日本でも話題を集めた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やエグゼクティブプロデューサー&脚本を務めたNetflix「ガス人間」も大ヒットした韓国のヒットメーカー、ヨン・サンホ。その最新監督作『顔 -かお-』が8月28日から全国公開となる。


 “生きる奇跡”と尊敬を集める盲目の篆刻家(てんこくか)イム・ヨンギュを父に持つイム・ドンファン。40年前に行方不明になった母の遺体が発見されたと連絡を受けた彼が、その真相を探るうち、衝撃の真実に辿り着くサスペンス・ミステリーだ。


本作で、主人公イム・ドンファンと父イム・ヨンギュの若き日を一人二役で演じたのは、Netflix「地獄が呼んでいる」などでも活躍するヨン作品の常連俳優パク・ジョンミン。ヨン監督と3度目のタッグとなる本作の舞台裏を聞いた。


-衝撃のラストまで目が離せない見応え十分の作品でした。パク・ジョンミンさんは、ヨン・サンホ監督と3度目のタッグということですが、まずは本作に出演を決めた理由を教えてください。


 ヨン・サンホ監督とは長い間、公私にわたって親しくさせていただき、物事を少し斜めから見つめる姿勢にも僕と近いものを感じています。そんなふうにヨン・サンホ監督は、僕にとっては一緒にいて楽しく、気の合う相手なんです。だから今回は「地獄が呼んでいる」以来、久しぶりにご一緒できる機会でもあったので、オファーをいただいて即決でした。


-パクさんは若き日のイム・ヨンギュと息子のイム・ドンファンの二役を演じていますが、姿勢やたたずまい、話し方など、1人で演じているとは思えないほど見事な演技でした。それぞれの役作りやお芝居で心がけたことを教えてください。


 イム・ドンファンは平凡な男なので、特別な役作りをするというよりも、感情の動きをきちんと捉えることに気を配りました。一方、父のヨンギュは視覚障害者なので、実際に視覚障害の方々が杖の使い方やどんな感覚に頼って体を動かしているのか、日常生活における動作を勉強しました。実は、僕の父が視覚障害者だったので、子どもの頃から間近で見てきた父の姿を役に反映させた部分もあります。


-劇中、ドンファンにヨンギュの面影を感じるシーンもあり、一人二役で親子を演じる妙が味わえました。


 どちらも僕が演じていたので、僕の中にヨンギュの感情が蓄積された状態で、ドンファンを演じることもありましたし、その逆もありました。それは、演じながら、自分の中にある2人の感情が作用し合う不思議な体験でした。ただその分、自分の中にある2人分の感情を切り分けながら演じるのには苦労しました。ときどき、自分でも「今は、ドンファンとヨンギュ、どちらの感情だろう?」と混乱することもありました。

-劇中ではそんなご苦労を感じさせない名演でした。


 実は、最初にオファーをいただいたのは、ドンファン役だけだったんです。でも、脚本が面白かったためについ欲が出てしまい、僕の方から「ぜひヨンギュもやらせてください!」とヨン監督にお願いしたんです。でも、やってみると一人二役は想像以上に大変で、ちょっと後悔しました(苦笑)。


-ところで本作では、母の死の真相を探るドンファンが、行く先々で「母は醜い顔だった」との証言を耳にする様子を通して、「外見に対する偏見」の残酷さが描かれています。この作品を通して、その点について改めて考えたことはありますか。


 人間に備わっている悪しき習性の一つが「偏見」です。中でも、それが端的に表れるのが、「外見に対する偏見」ではないでしょうか。人は誰しも、それぞれの事情を抱えて生きています。だから、目に見える部分だけで判断してはいけないと分かっていても、つい外見で判断してしまう。そんな自分が嫌になる一方で、自分自身を見つめ直せたことはよかったのでは…などと、僕自身も撮影中、考えが頭の中でぐるぐると巡っていました。そんなふうに、人間の「偏見」について、かみしめるように考えさせる作品であり、ある意味、私にそういうことを考える機会をくれた贈り物のような気もしています。


-本作のヨン・サンホ監督は韓国屈指のヒットメーカーで、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やエグゼクティブプロデューサーと脚本を務めたNetflixの「ガス人間」は日本でも大きな話題になりました。ヨン監督の作品の魅力を、どのように捉えていますか。


 ヨン監督の作品には毎回、社会に問いかける大切なメッセージが込められているのが特徴です。しかも、それを声高に訴えるのではなく、巧みにストーリーに織り込んで伝えるんです。だから、観客は作品の世界観にどっぷりと浸りながら、いつの間にかそのメッセージを受け取っている。そんなふうに、ヨン監督は伝えたいことが明確で、それを面白い作品に仕上げることがとても上手な方です。一言で言えば、「天性のストーリーテラー」といったところでしょうか。


-きっと『新感染 ファイナル・エクスプレス』や「ガス人間」をご覧になった日本の観客も、ヨン作品の魅力に気づいているはずです。それでは最後に、本作の公開を待つ日本の観客へメッセージをお願いします。


 この作品は、韓国でも予想以上に観客の皆さんに受け入れられ、とてもいい結果を残すことができました。それはきっとこの映画が、観た後に「ああでもない」、「こうでもない」と話し合いたくなるからではないでしょうか。日本の方々にもぜひご覧いただき、皆さんで話し合っていただけたらうれしいです。


(取材・文/井上健一)