鈴鹿央士【ヘアメーク:永瀬多壱(VANITES)/スタイリスト:梶原浩敬】  (C)エンタメOVO

 出会うはずのなかった登場人物たちが、1億円をきっかけに複雑に絡み合いながら“金の獣”と化していく数奇な運命を描いた、曽根圭介の同名小説を城定秀夫監督が実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が全国公開中。本作で、主人公のチャンネル登録者数“2ケタ”の弱小大学生YouTuber佐藤寛治を演じた鈴鹿央士に話を聞いた。


-最初に脚本を読んだ時の印象はいかがでした。


 原作や韓国で映画化されたものからも変わっていたし、寛治の役柄も変わっていたので、こういうふうに変化したんだと思いました。次から次へと、どんどん展開が広がっていく感じや、いろいろな登場人物の物語が交差していく感じが面白かったので、映像になってつながった時に、どんな作品になるんだろうというのが、すごく楽しみでした。


-寛治という人物をどのように捉えましたか。


 おばあちゃん(風吹ジュン)と2人暮らしをしていて、優しさはすごくあって、周りの登場人物と比べても、悪気がない普通の青年。1億円を手にした時も、その行動の元には、おばあちゃんの存在がずっと頭の中にある感じがしたので、優しさは持ったままでいようと。でもあまり面白くない人で、人付き合いが下手な感じなのかなとも思いました。


-売れない大学生YouTuberという設定についてはどう思いましたか。


 個人的には、配信ドラマの「喧嘩独学」の次がこれだったので、またお金を持っていない配信者の役かと(笑)。でも、もちろん起きる出来事も役柄も違ったので、面白そうだなと思いました。


-寛治に共感できる部分はありましたか。


 やっぱり、目の前に1億円が出てきたら、それをどうするという葛藤は絶対にあると思います。だからこそ寛治も、すぐには取らずに、1度忘れ物置き場に隠すところに、まだ善の部分が残っていたので、そうだよなと思いました。自分も善悪を判断する時に、ちゃんと考えなければという思いはあるので。寛治の場合は、おばあちゃんのためでもあったので、それはすごく分かる気がしました。


-寛治を演じる上で、気を付けたことや心掛けたことがあれば。


 (自分自身を)追い込まれなければいけないと思いました。おばあちゃんと2人で生きていくためのお金がなくなって、1億円に手を伸ばしてしまうまでの過程がちゃんと描けなければならないと思ったので、落ちるところまで落ちようと思いながらやっていましたが、追い込まれてどん底まで落とすのは難しかったです。


-この役には、新たな挑戦みたいなところはありましたか。


 作風として、今まで自分が演じた役とは違うとは思いましたが、僕の周りの登場人物たちが、マネーサバイバルの最中でアクションがあったりもしたので、その中では、寛治は落ち着いている方ではあるし、おばあちゃんとのシーンが、緩和剤というか、ホッとする、熱を冷ますものになると思ったので、あまり行き過ぎないように、作風に引っ張られ過ぎないようにという思いはありました。


-成宮寛貴さん、森七菜さんといった共演者の印象はいかがでしたか。


 ほぼ、1人か風吹さんと一緒にいるかのシーンでしたので、成宮さんと森さんは、撮影日数でいうと2日ぐらいしかお会いできませんでした。その中でも、成宮さんはすごく優しかったし、お兄さんのような感じがしました。森さんは、僕に銃を突きつけてくるシーンでも、こういうお芝居があるんだと、すごく勉強になりました。やっぱりすごい人だなと目の前で感じました。

-おばあちゃん役の風吹ジュンさんとの印象に残ったエピソードがあれば。


 とても面倒見のいい方で、何か聞いたら何でも返してくれるし、気を使ってくださいました。本当は僕が気を使わなければいけないのに、風吹さんの方から、「大丈夫よ。頑張ろうね」って言ってくださったので、優しい人だなと思いました。本当の孫とおばあちゃんみたいな感じでした。安心感もあったし、この笑顔を守らなければみたいな思いは、風吹さんだからこそ感じました。


-城定秀夫監督の演出はどんな感じでしたか。


 すごくスピーディーで、演出も「こうしましょう」というのがきちんとあるし、それをはっきり伝えてくださるので、こちらも「そういうことか」と納得ができました。とにかくどんどん撮っていく監督というイメージです。セッティングチェンジの時に、寛治のキャラクターや、彼がYouTubeを続ける理由などについて監督と話し合いながら役を探っていきました。僕としてはそれが結構大きかったです。役が固まった感じがありました。


-鈴鹿さん自身は、配信やゲームに興味はありますか。


 ゲームは好きです。YouTubeに動画を出したり、自分でチャンネルを作ろうと思ったことはありませんが、見るのは好きです。だから全然遠い感じはしないんですけど、自分が配信側の役をやることが多いので、そういうイメージがあるのかなと思ったりはします。いろいろなイメージを持ってもらえるのはうれしいです。


-完成作を見てどう思いましたか。


 想像を超えて面白かったです。自分が出ていないシーンは、台本を読んだだけなので、それがどういう映像になったのかは撮影中では想像するしかなかったのですが、イメージしていたものもより遥かに面白い映像になっていて、こんなに面白いんだというのが正直な感想でした。こんなに面白い映画になってくれてよかったと思いました。ただ、成宮さんと青木マッチョさんや森さんもアクションシーンや動くシーンが多かったけど、僕は自転車を漕いだぐらいで、一番動いていないんじゃないかなと思って、ちょっと申し訳ない気がしました。でも、そうやって撮ってくださったおかげで面白い映画になっていたので、出られてよかった、この作品に関われてよかったと思いました。今回は、自分がお芝居をしている時には気付かなかったものが、完成作を見るといろいろと気付くところがあったので、そういう面でも勉強になりました。見ていただいた方が、どういう反応をするのかが楽しみです。それと、城定監督の編集が、すごいと思いました。現場であれだけスピーディーに撮って、つながったもの、完成したものがこんなに面白いのは、やっぱり頭の中で作りながら撮っていたからなのかなと、すごい力だと思います。


-最後に、観客や読者の方に向けて一言お願いします。


 映画館で映画を見るということに対してのエンターテインメント性というか、楽しんでもらえる、面白いと言ってもらえると、自信を持ってお薦めできる作品ですし、上映時間も95分で見やすいです。お休みの日や、お仕事や学校が終わってから、「ちょっと時間があるから映画見に行こう」という感じにすごく合っているし、絶対に映画館で見て損はさせない映画になっています。本当に作り込まれているし、映画全体の流れもすごく面白いし、最後の方で「あっ、こうなっていたんだ」となる瞬間はスカッとします。ただ座って見ているだけで楽しめるので、気負わずに、何か飲んだり食べたりしながら、ぜひ映画館で見てください。


(取材・文・写真/田中雄二)