Nゲージ、日本語、くまモンミニ四駆から、熊本・山形との継続交流へ。現地ニーズから学びを組み替える「Adaptive Peacebuilding」を教育現場で実践

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(所在地:千葉県松戸市、代表:中村雄一)は、2026年9月7日・8日の2日間、ウクライナ西部リビウにある「リビウ市立東洋言語・東洋武道中等教育学校『ブドーカン(武道館学校)』」で、日本語教育、平和教育、未来のまちづくり、防災、環境、ものづくりを組み合わせた授業を実施しました。

武道館学校の児童と「学び合い」を実施

なかよし学園の活動は現地訪問「だけ」で終了しません。帰国後は武道館学校の日本語教員カテリーナ・フィレンコ先生らとオンラインで協議を継続し、日本とウクライナの子どもたちがそれぞれの地域について「教える側」にも「学ぶ側」にもなる、新しい双方向型学習モデルの構築を開始しました。
現在、日本側では熊本の復興、くまモン、熊本城などを紹介する教材を制作。山形県遊佐町立遊佐中学校とも、「芋煮」「ラーメン」など地域の文化や暮らしをウクライナへ伝えるプレゼンテーションを計画しています。

「なかよし学園×熊本」が作成した教材

そして次は、ウクライナの子どもたちが「自分たちの国」を日本へ教える番です。この活動は一方的に教材や物資を渡す国際支援ではなく、日本とウクライナが互いの地域、文化、経験、復興、未来を教材にして学び合う。なかよし学園は、この循環そのものを戦争下における教育と平和構築の一つのモデルとして発展させます。

2026年のウクライナ――「学校へ行く」こと自体が安全と切り離せない
2022年2月のロシアによる全面侵攻開始から4年以上が経過した現在も、ウクライナの子どもたちの教育は戦争の影響を受け続けています。
UNICEFによると、2026年9月の新学年開始後、最初の15日間だけでウクライナ全土に1,000回を超える空襲警報が発令されました。それでも約420万人の子どもたちが教育に戻った一方、安全上の理由などから多くの児童生徒が対面だけではなく、オンラインやハイブリッド形式で学習を続けています。

UNICEF Global
https://www.unicef.org/ukraine/press-releases/children-ukraine-face-fifth-year-assault-their-right-learn?utm_source=chatgpt.com

ウクライナ教育科学省は2026年9月、空襲警報下の学校運営について、地域の安全状況、シェルターの有無や収容能力、インフラ、遠隔教育への対応力などが学校ごとに異なるため、「一律の教育モデル」を適用することはできないとの考え方を示しました。
ウクライナ西部のリビウも戦争と無縁ではありません。2026年7月30日にはリビウ市がミサイル攻撃を受け、リビウ州当局は住宅被害と15人の負傷を発表しています。前線から地理的に離れていても、空襲警報、避難、停電などを前提として日常生活と教育を継続しなければならない状況があります。武道館学校でも、生徒たちが空襲警報や戦争下の日常が続いています。
こうした環境の中で、なかよし学園は「日本から何を持っていくか」だけを考えるのではなく、現地の子どもたちや教員が現在何を経験し、何を学びたいのかを授業設計の出発点としました。

武道館学校があるリビウの街なみ

1日目――「未来のまちづくり」を、戦争を経験する子どもたち自身が考える
9月7日、なかよし学園は武道館学校のP5・P6の児童を対象に授業を実施しました。同校は日本語、中国語などの外国語に加え、日本文化や東洋武道を教育に取り入れている学校です。公式サイトでは、日本語・中国語の独自プログラム、武道を取り入れた教育、対話型・参加型の学習を学校の特色として掲げています。
この日、なかよし学園が持ち込んだのは、「日本の文化」です。限られた荷物の中で、日本語を学ぶ生地たちに「日本」を伝える、そんな授業が行われました。この日行われた授業には、中村里英事務局長による折り鶴ワークショップや『はじめてのヒロシマ』を用いた平和学習、書道文化、防災カルタなど複数の授業で日本に対する理解を深めたうえで、Nゲージと手回し発電機を使った「未来のまちづくり」を行いました。

中村雄一代表による「日本」の授業


「はじめてのヒロシマ」を使った授業

日本の書道を活用した授業

中村里英事務局長による折り鶴ワークショップ

生徒たちは折り鶴が折れるようになった


生徒たちが作成した折り鶴と「はじめてのヒロシマ」

対馬東部中学校生徒の書で気持ちを伝え合う

「未来のまちづくり」授業では、子どもたちは自分の手で発電機を回し、その電力で鉄道模型を走らせながら、交通、電気、エネルギー、学校、病院など、まちを構成する仕組みを考えました。
さらに、日本の「防災カルタ」を紹介すると、児童たちは空襲警報や停電、避難など、自分たち自身が経験している出来事を題材に「ウクライナカルタ」を制作しました。

ウクライナの子どもたちが作成した「ウクライナカルタ」

なかよし学園は日本の防災知識をそのまま教えるのではありません。

「日本ではこうしている。では、ウクライナではどうしているのか」

その問いを子どもたちへ返すことで、ウクライナの児童自身が自分の経験を教育資源へ変えていきました。私たちはウクライナの子どもたちを「支援される子ども」に設定しません。彼ら彼女らは、日本の子どもたちに、戦争下で命を守るための知識を伝える「先生」にもなります。これがなかよし学園のCoRe Loopによる「学び合い」の教育環境構築です。

これからの日本語学習意欲向上に役立った、なかよし学園の活動

2日目――下級生が上級生へ教える「体験リレー学習」
翌9月8日、前日の授業が評価されたことから、なかよし学園は上級生を対象とした特別授業を行いました。また、この日は日本を訪問した武道館学校の生徒による帰国報告会があり、なかよし学園メンバーもこの報告会に参加しました。

日本報告会の様子

日本を訪問した校長先生のお話

武道館学校では限られた人数の海外経験を個人の思い出で終わらせず、写真や言葉を使って学校全体へ共有する取り組みが行われています。なかよし学園はさらに、日本人として日本について補足説明を加えながら多くの生徒に日本のことを理解してもらう授業を実施。日本のアニメや映画は武道館学校の生徒にも人気があることから、映画「君の名は」の劇中歌「スパークル」を弾き語りするなど、ウクライナの子どもたちの目線で日本が伝わる授業を行いました。

「スパークル」を熱唱する中村雄一代表。武道館学校の生徒たちに大好評だった。

また、この日中村雄一代表は前日にP5・P6が体験したNゲージ教材を武道館学校へ寄贈しますが、上級生に対して、Nゲージの使い方をなかよし学園から直接教えるのではなく、
「昨日使った下級生から教えてもらってください」
と伝えました。

先に体験した子どもが次の子どもに教える。教わった子どもが新しい工夫を加える。そして、さらに次の学年へ渡していく。なかよし学園が「Reciprocal Learning Relay(RLR)― 学ぶ人が、次の先生になる。」と呼ぶ学習モデルです。実際に本活動でも、NゲージをP5・P6から上級生へ、さらに次の学年へ継承していく方針が武道館学校で実施されています。
教材を「もらった人」で終わらせず、次の誰かへ学びを渡す人になる。これも、支援する側と支援される側を固定しない取り組みの一つです。

日本のことを細く説明する中村雄一代表

浜松オイスカ学園から贈られた海洋プラスチックリサイクルディスク

武道館学校校長先生と


彼らの夢は「日本を訪れること」。なかよし学園は彼らの夢を応援します。

この2日間の活動は武道館学校ホームページにも掲載されています。
https://budokan.lviv.ua/nakayoshi-gakuen/


武道館学校ホームページに掲載されたなかよし学園

日本語を「学ぶ教科」から、世界とつながる手段へ
武道館学校では日本語教育も大きな柱となりました。中村雄一代表は現在、ルネサンス日本語学院で日本語教師養成講座を受講しており、国家資格「登録日本語教員」の取得を目指しています。
今回の武道館学校訪問では、折り紙、平和教育、書道、音楽、Nゲージなどと日本語を組み合わせ、ルネサンス日本語学院から提供された日本語教材も学校へ寄贈しました。これまでの取り組みは、2026年9月20日発表のニュースリリースでも紹介しています。

日本語教師プロジェクト記事
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000148.000166170.html

重要なのは、日本語を「日本について学ぶためだけの言語」にしないことです。日本語を使って、自分の国について日本人へ伝える。自分たちの経験を、国外の誰かに説明する。なかよし学園は日本語教育を、コミュニケーションと相互理解のための手段に変えていきます。

カテリーナ先生に託されたルネサンス日本語学院提供の教科書。日本語教師の可能性をなかよし学園が広げる。

「くまモンミニ四駆」から熊本の復興を学ぶ
今回のウクライナ活動に、なかよし学園は「くまモン」のミニ四駆を活用しました。なかよし学園ではくまモンミニ四駆を、単なる日本のおもちゃとしてではなく、「復興」を考える教材として位置づけています。
熊本県は2016年の熊本地震で大きな被害を受け、熊本城の石垣なども甚大な被害を受けました。一方、復旧・復興は現在も進められています。なかよし学園はくまモンのミニ四駆と共に熊本の歴史や震災後の現状を伝え、日本とウクライナがお互いを応援するモデルを構築しています。

くまモンミニ四駆を紹介する中村雄一代表

帰国後、なかよし学園は熊本県の教員の協力を得て、武道館学校の児童生徒へ向けた「熊本教材」を制作しました。
教材では、
・熊本はどこにあるのか
・阿蘇と「火の国」
・熊本城
・くまモン
・2016年熊本地震
・熊本城の復旧・復興
・なぜ、くまモンミニ四駆をウクライナへ届けたのか

などを、子どもにも理解できる日本語とビジュアルで紹介しています。教材の中心にあるキーワードは「ENERGY」「FRIENDSHIP」「RECOVERY(復興)」です。2016年熊本地震についても、被害だけではなく、その後、人々が復旧を続けてきた過程を教材化しています。

なかよし学園×熊本

なかよし学園×熊本

なかよし学園×熊本

なかよし学園×熊本

そしてこのプレゼンテーションの最後には、

「日本とウクライナの子どもで、スライドや作品を送り合おう。おたがいの国、まち、夢を学びあおう」

という次の交流につなげています。 熊本が自分たちの復興を伝える。その次には、ウクライナが自分たちの経験を日本へ返す。この往復が学習になります。

次はウクライナの子どもたちが「ウクライナを教える」
現地での2日間を経て、武道館学校からは生徒たちが制作した美術作品が日本へ託されました。
活動中には山形県遊佐町立遊佐中学校の石黒校長とビデオ通話を行い、作品を日本の教育活動で活用していくことも決定しています。なかよし学園の活動は、帰国後も交流を通して継続しています。カテリーナ先生ら武道館学校側と、日本とウクライナ双方の生徒が「自分の地域を教材にする」学習モデルについてオンラインで協議を開始しました。
日本側からは、熊本に加え、山形県遊佐町立遊佐中学校が参加を計画しています。遊佐中学校では、山形の「芋煮」や「ラーメン」など、地域の暮らしや食文化をウクライナの子どもたちへ紹介するプレゼンテーションを検討しています。都市部に住む子どもだけが世界とつながるのではない。地方にある文化や産業、食、歴史そのものを国際教育の資源にする。そんな学び合いのモデルを現在構築しています。

山形の中学生は「芋煮」や「ラーメン」をプレゼンテーションで紹介する予定

そしてウクライナ側からも、ウクライナの子どもたち自身が制作した「ウクライナを教える教材」を日本へ届ける計画です。日本の子どもが日本を教え、ウクライナから学ぶ。ウクライナの子どもがウクライナを教え、日本から学ぶ。双方が「先生」と「生徒」を行き来する、そんなCoRe Loopが新たな学びをつくります。

地方・離島と世界をつなぐ――ロート子どもの夢基金採択事業へ
この考え方は、なかよし学園が日本国内で進める「体験格差」への取り組みにもつながっています。
なかよし学園は現在、「ロート子どもの夢基金」採択事業として、家庭環境や居住地域などによって生じる国際交流・探究活動の機会格差を小さくする活動を進めています。
2026年10月17日・18日には長崎県壱岐市で、全国の中学1年生から高校3年生を対象に「世界とつながる夢探究アカデミー 壱岐島 PEACE CAMP 2026」を開催します。
同事業では、海外の話を聞いて終わるのではなく、中高生自身が教材をつくり、なかよし学園が世界の活動地へ運び、現地で実際に使用。その反応や写真、動画、メッセージを再び日本の制作者へ返すところまでを一つの学習として設計しています。

「壱岐島 PEACE CAMP 2026」ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000166170.html

ウクライナの武道館学校で始まった学びも、その循環へ接続していきます。地方だから世界から遠いのではなく、地方にある経験そのものを世界の教材にする。世界で得た経験を地方へ持ち帰る。私たちは国際教育資源の地域差を、オンライン交流と現地実装の組み合わせによって小さくしていくことを目指します。

壱岐島 PEACE CAMP 2026募集チラシ

現地に合わせて授業を変える「Adaptive Peacebuilding」
なかよし学園は今回のウクライナでの実践を、「Adaptive Peacebuilding(適応型平和構築)」の考え方を教育分野へ応用した取り組みと位置づけています。
Adaptive Peacebuildingは、平和構築研究者Cedric de Coningが体系化してきたアプローチで、外部の支援者があらかじめ完成した解決策を持ち込むのではなく、紛争の影響を受けている地域の人々とともに、実践、フィードバック、学習、修正を繰り返していくことを重視します。また、地域社会自身の意思決定と「local ownership」を重要な要素としています。
今回も、日本でつくった教材をそのまま実施するだけではありませんでした。防災カルタを見たウクライナの子どもたちが、自分たちの空襲や避難経験から「ウクライナカルタ」をつくる。Nゲージを渡した後、その使い方を子ども同士で継承する。日本語を学んでいる子どもたちが、日本について知るだけでなく、自分たちのウクライナを日本へ伝える。現地から返ってきた反応によって、次の日本側教材を作り直す。
この「実践→反応→修正→再実践」の循環を続けていきます。私たちは活動を「寄贈で終わらない継続的な学習の回路」と位置付けており、日本から届いた教材とウクライナで生まれた作品・経験を双方向に往還させることを活動の中心に据えています。相互に学び合うことで国際理解が生まれ、グローバルリーダーを育成する。彼らが世界をリードし、戦争のない世の中を作る。これがなかよし学園が目指す世界平和です。
なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント
今回、武道館学校で強く感じたのは、私たちがウクライナへ『教えに行った』のではないということです。もちろん、日本語も、折り紙も、熊本の復興も、防災も、私たちから伝えられることがあります。でも、防空警報が鳴ったらどうするのか、停電の中でどう学びを続けるのか、家族や友人が戦争に向き合う中でどう日常を守るのか。そこには、私たち日本人が彼らから学ばなければならないことがたくさんあります。
私たちはこの活動を単発の支援で終わらせたくありません。熊本の子どもたちが熊本を伝える。山形の子どもたちが山形を伝える。ウクライナの子どもたちは、自分たちのウクライナを日本へ伝える。全員が先生になり、全員が生徒になる。
現場へ行き、相手の声を聞き、必要なら私たちの授業そのものを変えていく。それが、なかよし学園が考えるAdaptive Peacebuildingです。戦争が終わってから交流を始めるのではありません。戦争が続いている今から一緒に学び、一緒に未来を考えておく。その関係が、戦後の復興や、その先の平和を一緒につくる土台になると考えています。これから多くの日本の人々がこの活動に参加し、世界の平和を一緒に考えるテーブルについてくれたらと願っています。

武道館学校から託されたプレゼントは今後日本中の「世界とつながる学び」参加校に手渡していく。

今後の展開
なかよし学園プロジェクトでは、武道館学校との交流を継続し、今後以下の取り組みを進める予定です。
・武道館学校から、日本の児童生徒へ向けた「ウクライナを教える教材」の制作・共有
・熊本の復興、熊本城、くまモン等をテーマとした教材を活用したオンライン授業
・山形県遊佐町立遊佐中学校による、芋煮・ラーメン・地域文化等を紹介する教材制作
・武道館学校に寄贈したNゲージ、ミニ四駆等を活用する「体験リレー学習」の継続
・日本語を活用した日本・ウクライナ児童生徒間のコミュニケーション
・ウクライナから届いた作品・教材を日本国内の学校やPEACE CAMP等で活用
・日本側からのフィードバックを再びウクライナへ返すCoRe Loopの継続
武道館学校では既に、下級生が体験した教材を上級生へ引き継ぐ学習が始まっており、次年度以降への継続が今後の展開として計画されています。

関連ニュースリリース
「空襲警報が鳴る地下シェルターに『未来』を走らせた。なかよし学園『なかよし鉄道・ウクライナ未来のまちづくりプロジェクト』を実施」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000166170.html

「日本語教師という国家資格を、世界の平和をつくる力へ。なかよし学園×ルネサンス日本語学院、ウクライナ・シリアで広がる日本語教育」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000148.000166170.html

「体験格差を、未来をつくる経験へ。世界10カ国以上で活動するNPOが『壱岐島 PEACE CAMP 2026』開催」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000166170.html
本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
写真素材・取材対応が可能です。
掲載時の写真クレジット:(C)なかよし学園プロジェクト
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