植物に「おはよう」と話しかける人たちへの調査から発見した、“植物から自分への反応を感じたい”という新たな欲求。AI画像解析とセンシングで、植物との一方通行だった関係を変える未来を提案します。




学校法人片柳学園 日本工学院専門学校の学生プロジェクト「Vision Craft」から生まれた仮想企業「トライフープ社」は、植物の状態をAIで捉え、人間に分かる言葉として伝える「植物の気持ち翻訳アプリ」のプロトタイプを、2026年10月13日(火)~16日(金)に幕張メッセで開催される 「CEATEC 2026」に出展します。
スマートフォンのカメラを植物に向けると、
「ちょっと喉が渇いた」
「今日は大丈夫」
「おはよう」
といった言葉が、植物からの“返事”のようにAR上に現れます。
目指しているのは、植物を単に正しく育てるためのアプリではありません。
人間から植物へ一方的に話しかけていた関係に、植物側からの「返事」をつくること。
AI画像解析やセンシングによる植物状態の把握を入口に、「ただ植物を育てる」から「植物と通じ合って暮らす」へ、人と植物の新しい関係を提案します。

■ 開発のきっかけは「植物に話しかける人」でした

植物を育てている人の中には、水やりをしながら、
「おはよう」
「乾燥してカサカサしちゃうよね」
「今日は元気?」など、
植物に自然と話しかけている人がいます。
また旅行や帰省で家を離れた時に、
「ちゃんと太陽に当ててもらっているかな」
「元気にしているかな」
と、植物のことを気にする人もいます。

トライフープ社では、こうした実際に植物へ 話しかけた経験を持つ人たちを対象に、 グループダイナミックインタビュー(GDI)を実施しました。
当初想定していたのは、
「植物を枯らさず、元気に育てたい」 というニーズでした。
実際、「水をあげすぎた」「育て方を検索しても、目の前の植物に今何が必要なのか分からない」 など、植物の現在の状態を知りたいという強い声が確認されました。
しかし、インタビューの終盤で、私たちの予想を超える反応が現れました。

■ 「植物が、こちらをどう見ているのか考えたことがなかった」

「これまでは自分から植物に気持ちを伝えることしか考えていなかった」
「植物にも、人間である私に対する何かがあるかもしれないという発想に驚いた」
「そんなふうに 考えると、犬や猫のように愛おしく感じる」
参加者との対話から浮かび上がったのは、 植物から見た私は、どんな存在なんだろう?
という、これまであまり意識されていなかった視点でした。
植物へ話しかける行為は、これまでは
人 → 植物
という一方通行でした。
そこで学生たちは、
植物 → 人
という逆方向を加えたら、植物との関係そのものが変わるのではないか、と考えました。

■ 期待Benefitと、その先にあるBenefit

「植物の気持ち翻訳アプリ」が最初に提供する価値は、とても実用的です。

目の前の植物の状態を知り、今必要な世話が分かる。

しかし、その先に目指している価値があります。 ただ育てるだけだった植物と、通じ合って暮らしている感覚を持てる。 水やりの正解を教えてくれるだけのアプリではなく、 植物との関係を、一方通行から往復に変える。

それがこのプロジェクトの中心コンセプトです。

■ AIで「植物の感情」を作るのではありません

「植物の気持ち翻訳」という名称ですが、本プロジェクトでは、AIが植物に架空の感情を付けるこ とを目的としていません。
AI画像解析や、将来的には土壌水分・温湿度・日照などのセンシング情報を組み合わせ、植物 の状態を推定します。
その状態を、
「水分が不足しています」 という機械的な情報ではなく、
「ちょっと喉が渇いた」
と、人間が直感的に理解し、植物との関係を感じられる表現へ変換します。
つまり、
植物の状態を捉える技術 × 人間に伝わる言葉へ翻訳する体験設計 です。

■ CEATEC 2026では「植物から返事がくる」体験を展示

会場では、本物の観葉植物とiPhoneを使った体験型プロトタイプを展示します。
植物にスマートフォンを向けると、AR技術によって植物のそばに吹き出しが現れ、あたかも植物自身 が来場者へ話しかけているような体験を提供します。
今回の試作では、植物状態をリアルタイムに完全解析する製品版ではなく、将来想定するユーザー 体験を体感するためのコンセプトプロトタイプとして展示します。
また、植物のセンシングやAI画像解析に関する研究成果との連携についても検討を進めています。

■ 強い擬人化ではなく、「もしかしたら」を大切に

開発初期には、植物が手を振る、踊るなど、よりエンターテインメント性の高い表現も検討していました。
しかしGDIでは、植物を過度にキャラクター化すると、
「嘘っぽい」
「植物本来の自然さがなくなる」
という反応が見られました。
そこで現在は、植物そのものの姿は変えず、短い言葉による反応を中心にしています。人間が、
「本当にそう思っているのかもしれない」
と少しだけ想像できる余白を残す。それが、このアプリで大切にしているデザインです。

■ 開発チームが目指すもの

植物育成アプリの多くは、 「どうすれば正しく育てられるか」 を支援します。
私たちが目指しているのは、その先です。 植物を管理するためのテクノロジーから、 植物との関係をつくるテクノロジーへ。 朝、植物に「おはよう」と声をかける。
すると、
「おはよう」 と返ってくる。
外出前に植物を見る。
「今日は大丈夫」
と返ってくる。
やがて、人間にとって植物は単なるインテリアではなく、
「この子と一緒に暮らしている」
と感じられる存在になるかもしれません。

■ プロジェクト担当 小山順一朗 氏のコメント

私たちは最初、「植物を上手に育てるアプリ」を考えていました。
ところがGDIで、植物に日常的に話しかけている人たちへ「もし植物からあなたへの気持ちが 返ってきたら?」と問いかけた時、参加者の表情が変わりました。
「植物が自分をどう見ているかなんて、考えたことがなかった」
この反応を見た時、ここにまだ市場になっていない人間の欲求があるのではないかと思いました。 AIで植物をキャラクターにしたいわけではありません。
人間には分かりにくかった植物の状態をテクノロジーで捉え、それをきっかけに、人と植物の関係 そのものを少し変えたい。
「植物を育てる」から「植物と暮らす」へ。
CEATECで、その未来を体験していただきたいと思っています。

CEATEC 2026は、あらゆる産業・業種の人・技術・情報が集まり、共創による新市場・新産業創 出を目指す展示会です。2026年のテーマは「Transformation」です。(CEATEC 2026 公式サイト)

■ 今後の展望

CEATEC 2026での展示を通じて、以下の領域で企業・研究機関との連携を目指します。
● AI画像解析による植物状態推定
● 土壌・温湿度・日照等のセンシング技術
● 植物状態と生育変化の研究
● 家庭用IoTデバイス開発
● AR/スマートフォンアプリ開発
● 植物販売・園芸・インテリア領域での事業化
● 製品化に向けた共同開発・事業パートナーとの連携
CEATEC 2026を完成品の発表の場ではなく、製品化に向けた共創のスタート地点と位置づけています。

■ 開発チーム

トライフープ社(仮想企業)
日本工学院 Vision Craftゼミの学生によるプロジェクトチーム。
Vision Craftは、学生が分野を越えてチームを組み、まだ世の中にない商品・サービスの企画から検証、試作、社会発表までに挑戦する実践型教育プロジェクトです。
プロデューサー/指導:小山 順一朗
東京藝術大学大学院 映像研究科 ゲーム・インタラクティブアート専攻 教授
日本工学院 Vision Craft エグゼクティブプロデューサー
元バンダイナムコエンターテインメント ゲーム開発者
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