2026年10月1日、改正労働施策総合推進法に基づき、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられた

【家電コンサルのお得な話・318】 2026年10月1日、改正労働施策総合推進法に基づき、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられる。厚生労働省は、『顧客等の言動で、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、その結果として労働者の就業環境が害されるもの』をカスハラと定義している

現場にとって大きな前進 

こうした法整備が進んだ背景には、暴言や威圧、執拗な要求、居座り、土下座の強要など、従業員だけでは対応しにくい行為が問題になっていることが挙げられる。企業には、カスハラに対する方針の明確化、相談窓口の整備、事実確認や被害者への配慮、再発防止、悪質なケースへの対応方針づくりなどが求められている。

これは現場にとって大きな前進であるが、企業としては自社のシステムを考慮し、どこまで対応し、どこから先は毅然と断るのか、その基準をいち早く樹立しなければならない。

ただ、この基準に対し、気になり、どうもすっきりしないことが一つある。先日、ある店での出来事。店内に入ると怒鳴り声を耳にした。何かと思い、声のする方を見てみると、「販売員」が電話口でお客さまに強い口調で話していたのだ。他のお客さまがいるなか、強い違和感を感じたため、なじみの店員に「店長は注意しないの?」と尋ねると、「注意するとパワハラと言われる。本社は被害者を演じた側の話を信じるので、上司も注意しにくい」という驚きの答えが返ってきた。このことは、ある1つの売場で目にした話にすぎないが、このところ、接客レベルの低下を感じる場面が増えているように思う。

ここで危惧するのは、社員側の対応に問題があってお客さまが怒った場合まで、単純に「カスハラ」と片づける風潮が生まれることである。正当な苦情までカスハラになるわけではない。厚生労働省も、社会通念上許容される範囲を超えるかどうかで判断するとしており、対策にあたっては消費者の権利にも留意するよう求めている。

企業が従業員を守ることは必要である。同時に、接客、説明、言葉遣い、態度に問題がない状態をつくることも必要である。まず自社の問題を減らし、そのうえで理不尽な要求には毅然と対応する。この順番を誤れば、カスハラ対策が「接客不備を客のせいにする便利な言葉」になりかねない。社員教育から逃げれば、守るべき従業員だけでなく、企業そのものが顧客から見放されることになる。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)