令和8年10月21日
国立大学法人徳島大学
https://www.tokushima-u.ac.jp/

■ポイント

・「カレーの黄色成分」として知られるクルクミンについて、大腸腺腫(ポリープ)の再発抑制効果を、世界で初めて大規模ランダム化比較試験で検証しました。

・クルクミンは、6mm以上の大きな大腸腺腫の発生リスクを約44%低下させ、個数や大きさについても抑制効果が認められました。また、副作用の増加は認められませんでした。

■概要

 カレーの黄色い成分として知られるクルクミンの大腸がん予防効果を検証するため、全国26施設で約600人を対象に、2年間の大規模ランダム化比較試験を実施しました。その結果、通常のクルクミンより吸収性を高めた高吸収型クルクミンを摂取した群では、プラセボ(有効成分を含まない対照食品)を摂取した群と比べ、大きな大腸腺腫(ポリープ)の発生率・個数・大きさが有意に抑制され、副作用の増加も認められませんでした。特に、過去に多くの腺腫の発生が認められた高リスク患者で、より大きな効果が示されました。本研究は、クルクミンによる大腸がん予防効果の可能性を示す世界的に初めてのエビデンスです。本研究成果は、2026年8月28日に国際的な学術誌「The American Journal of Gastroenterology」にAccepted manuscript として公開されました。また、2026年9月25日に徳島大学公式ホームページでも公開されました。

1 研究の背景

 インドでは古くから大腸がんの罹患率が低いことが知られており、食生活との関連が注目されてきました。クルクミンは、ウコン(ターメリック)に含まれ、カレー粉の黄色成分としても知られるポリフェノールです。抗酸化作用や抗炎症作用を有し、基礎研究では、大腸がんを含むさまざまながんに対する発がん抑制作用が報告されてきました。しかし、ヒトを対象とした、大腸腫瘍に対する再発予防効果を検証した大規模なランダム化比較試験はこれまで行われていませんでした。
 一方、大腸がんの多くは、前がん病変である大腸腺腫(ポリープ)を経て発生すると考えられています。腺腫を内視鏡で摘除することで大腸がんによる死亡を減らすことができますが、摘除後にも新たな腺腫が発生することが問題点として指摘されていました。これまで、消炎鎮痛剤やアスピリンなどによる大腸腺腫再発予防効果が報告されていますが、消化管障害などの副作用の問題があり、日常診療で広く用いられていませんでした。
 そこで本研究では、通常のクルクミンより吸収性を大幅に高めた高吸収型クルクミン「セラクルミン(R)」を用い、大腸腺腫を内視鏡摘除した患者を対象として、2年間の摂取により新たな大腸腫瘍の発生を抑制できるかを検証しました。

2 研究方法

 本研究は、全国26施設が参加し、大腸腺腫を内視鏡で摘除した約600人を対象として実施した大規模ランダム化比較試験です。対象者を、高吸収型クルクミン「セラクルミン(R)」を摂取する群と、プラセボ(有効成分を含まない対照食品)を摂取する群に無作為に割り付け、患者・医療者の双方がどちらを摂取しているか分からない二重盲検法で、2年間投与しました。
 投与開始時には、大腸内視鏡検査で確認された腺腫をあらかじめ摘除し、2年後に再度、大腸内視鏡検査を行いました。そして、新たに発生した腺腫について、発生率、個数、大きさなどを両群で比較し、クルクミンによる大腸腺腫の再発予防効果と安全性を評価しました。

3 研究成果

 2年間の投与後に大腸内視鏡検査を行った結果、主要評価項目である大腸腺腫全体の発生率には、クルクミン群とプラセボ群との間で有意な差は認められませんでした。しかし、内視鏡的摘除の対象となる6mm以上の大きな腺腫の発生率は、プラセボ群の13.3%に対し、クルクミン群では7.5%と有意に低く、発生リスクは約44%減少しました(相対リスク0.56、95%信頼区間0.33-0.95)。
 さらに、6mm以上の腺腫の発生個数もクルクミン群で有意に少なく、発生した腺腫全体についても、その大きさが有意に小さいことが明らかになりました。これらの結果から、クルクミンは腺腫の発生そのものを完全に防ぐというよりも、腺腫の増大や進展を抑制する可能性が示されました。





 また、過去に摘除された大腸腺腫の数が多い患者ほど、クルクミンによる腺腫の再発抑制効果が高まる傾向が示されました。 特に、過去に6個以上の腺腫を摘除した患者では、2年後に4個以上の腺腫が発生するリスクが、プラセボ群に比べて有意に低下しました(リスク比0.40)。これらの結果から、大腸腺腫を繰り返し発生する高リスク患者において、クルクミンがより有効である可能性が示されました。
 安全性については、有害事象(副作用)の発生頻度にクルクミン群とプラセボ群との間で差は認められず、2年間の長期投与においても、良好な安全性が確認されました。

4 研究成果の意義・今後の展望

 本研究は、これまで主に基礎研究で示されてきたクルクミンの抗腫瘍効果について、約600人を対象とした大規模ランダム化比較試験により、ヒトで検証した点に大きな意義があります。クルクミンは大腸腺腫全体の発生そのものを完全に抑えるものではありませんでしたが、将来のがん化リスクと関連する比較的大きな腺腫の発生や増大を抑制し、2年間の投与においても安全性に大きな問題は認められませんでした。
 さらに、過去に多数の大腸腺腫を認めた患者ほど効果が大きくなる傾向がみられたことから、大腸腺腫を繰り返す大腸がん高リスク患者に対する新たな予防法となる可能性があります。今後、どのような患者に最も効果が期待できるかを明らかにするとともに、より長期間の追跡によって、クルクミンが大腸がんそのものの発症予防につながるかを検証していくことが重要です。
 身近な食品成分であるクルクミンが、将来的に大腸がんの高リスク患者に対する安全で新しい予防手段となることが期待されます。

5 論文情報

(ア) 論文タイトル
Curcumin Suppresses Growth of Recurrent Colorectal Adenoma After Endoscopic Resection:
A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled,Multicenter Trial.
(【日本語】クルクミンは内視鏡切除後に再発する大腸腺腫の増大を抑制:無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験)

(イ) 著者名
Tetsuji Takayama, Koichi Okamoto, Hideki Ishikawa, Kaizo Kagemoto,Tatsuhisa Yasaka,
Takashi Hisabe, Koichi Kawabe, Toyotaka Kasai,Masaya Kubota, Masahito Shimizu,
Tomoyuki Abe, Jiro Nakamoto,Masahiko Nakasono, Sho Takahashi, Keita Harada,
Shinji Kitamura,Hisashi Nakamura, Shinya Minami, Manabu Sawaya, Koshi Fujikawa,
Toshihito Tanahashi, Shin-ichiro Hori, Tsutomu Nagata, Yasushi Sato,Michihiro Mutoh,
J-CAP-C study group.

(ウ) 雑誌名
The American Journal of Gastroenterology
8 月28 日Accepted manuscript として公開

(エ) DOI
10.14309/ajg.0000000000004193.

(オ) Corresponding author
Yasushi Sato and Tetsuji Takayama

6 研究費・利益相反

研究責任者:高山 哲治(徳島大学大学院医歯薬学研究部 特命教授)
研究費:農林水産省研究費16808863 武藤 倫弘(国立がん研究センター※/京都府立医科大学大学院医学研究科 分子標的予防医学 教授)※主たる管理・登録機関
登録事務局:メディカルリサーチサポート 石川 秀樹 (京都府立医科大学 特任教授)
高吸収クルクミン(セラクルミン(R))の提供など:セラバリューズ株式会社

■徳島大学に関する情報

・徳島大学×J-PEAKS
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