子どもが食べていなくても起こる? 家庭内の“クルミ”がクルミ感作のリスクに~アトピー性皮膚炎がある乳幼児で注意。今日からできる実践ポイントも~




 八尾市立病院(所在地:大阪府八尾市、院長:藤田淳也)の小児科、濱田匡章医師、株式会社ダスキン(本社:大阪府吹田市、社長:大久保裕行)の開発研究所、武庫川女子大学 (所在地:兵庫県西宮市、学長: 高橋享子) の食物栄養学科、前田晃宏准教授は、アトピー性皮膚炎を有する乳幼児を対象に、家庭内ホコリ中のクルミタンパク質と感作との関連を調査する共同研究を実施しました。
 アトピー性皮膚炎(現在または過去)を有し、該当児がクルミを食べたことがない3歳以下の乳幼児を対象とした調査により、クルミ感作(クルミに対するIgE抗体が体内で作られた状態。実際にクルミを食べてアレルギー症状が出るとは限らない)がみられた乳幼児の家庭では、家庭内ホコリ中のクルミタンパク質濃度が有意に高く、クルミ感作との関連が認められました。また、アトピー性皮膚炎が早期に寛解した乳幼児では、クルミ感作のリスクが低い傾向が認められました。さらに、最近クルミを食べていない家庭であっても室内ホコリからクルミタンパク質が検出され、家庭内環境中にアレルゲンが残存する可能性が示されました。これらの研究成果は、食物アレルギーの発症メカニズムの解明や予防策の検討につながる知見と考えられます。

1. クルミ感作がみられた乳幼児の家庭では、ホコリ中のクルミタンパク質濃度が高い
3歳以下のアトピー性皮膚炎を有する乳幼児のうち、クルミを食べたことがない乳幼児を対象に調査した結果、血液検査でクルミ感作が確認された乳幼児の家庭では、家庭内ホコリ中のクルミタンパク質濃度が統計学的に有意に高いことが確認されました。
2. アトピー性皮膚炎が早期に寛解した乳幼児ではリスクが低い傾向
アトピー性皮膚炎が1歳までに寛解していた乳幼児では、クルミ感作の頻度が低く、クルミ感作との関連が認められました。
3. 最近クルミを食べていなくても室内からクルミタンパク質を検出
調査期間中にクルミを摂取していない家庭でもクルミタンパク質が検出されました。家庭内にアレルゲンが一定期間残存する可能性があることが示されました。

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※クルミ感作:クルミに対するIgE抗体が作られた状態で、必ずしもアレルギー症状が出るとは限りません。

■研究背景

 近年、日本ではクルミアレルギーが急増しており、2歳以下の乳幼児で重い症状を示す例も報告されています。しかし、その増加の要因については十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、アトピー性皮膚炎を有する乳幼児を対象に、家庭内ホコリ中のクルミタンパク質と感作との関連を調査しました。

■研究概要

<調査対象>
3歳以下で現在または過去にアトピー性皮膚炎を有し、クルミを摂取したことがない乳幼児。対象者数は45名(クルミ感作群29名、対照群16名)。
<調査期間>
2022年8月から2025年6月。
<調査方法>
関西圏の医療機関(八尾市立病院、大阪はびきの医療センター、関西医科大学附属病院、国保中央病院、JCHO星ヶ丘医療センター、あべのメディカルクリニック、大阪医科薬科大学病院、兵庫県立こども病院、大和高田市立病院、和泉市立総合医療センター)が対象者のリクルート及び患者情報の収集を担当し、保護者が家庭内のホコリを採取。採取されたサンプルをダスキン開発研究所へ送付し、ELISA法※によりホコリ中のクルミタンパク質量を測定。その後、八尾市立病院が血液検査およびアレルゲンの測定結果と患者情報を統合して解析。

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※ELISA法(イライザ法):抗体と抗原の特異的な結合反応を利用して、微量なタンパク質を検出・定量する検査・測定手法

<調査結果からわかること>
本研究は、乳幼児がクルミを食べていない場合でも、家庭内環境中に存在するクルミタンパク質とクルミ感作との関連が示された研究です。
ただし、本研究はクルミの摂取そのものを控えるべきことを示したものではありません。また、アレルギー発症との因果関係を示すものでもありません。特にアトピー性皮膚炎を有する乳幼児がいる家庭では、以下のような皮膚症状の適切な管理や生活環境への配慮が重要と考えられます。

■今日からできる実践ポイント

・クルミを食べる際は食べこぼしなどに注意する。
・クルミを食べた後は、テーブルや床などを適切に清掃する。
・アトピー性皮膚炎の治療を継続し、皮膚症状を適切に管理する。

■本研究の意義

近年、クルミアレルギー患者の増加が社会的な課題となっています。本研究は、家庭内環境という視点から感作リスクとの関連を示したものであり、食物アレルギー予防に関する新たな知見として期待されます。

【八尾市立病院 小児科 濱田匡章 コメント】
クルミアレルギーによる救急受診を要する症例は、2011年から2023年にかけて約20倍に増加しており、ク ルミは決して稀な原因食品ではありません。今回の研究から、アトピー性皮膚炎が持続しているお子様や、同居するご家族がクルミを頻繁に摂取するご家庭では、クルミへの感作に注意が必要である可能性が示されました。

【研究資金について】
この研究は、日本小児アレルギー学会 学会研究費補助金とJSPS科研費 (23K01996) の助成を受けたものです。

【発表論文情報】
英 題:Walnut, cashew, and peanut proteins in household dust and sensitization in young children with atopic dermatitis
執筆者:濱田匡章1)、御厨真幸2)、荻野文敏2)、前田晃宏3)、亀田誠4)、高岡有理4)、
赤川翔平5)、櫻井嘉彦6)、佐伯圭吾7)
1) 八尾市立病院 小児科
2) 株式会社ダスキン 訪販グループ戦略本部 開発研究所 基礎研究室
3) 武庫川女子大学 食物栄養科学部 食物栄養学科
4) 大阪はびきの医療センター 小児科
5) 関西医科大学附属病院 小児科
6) 奈良県立医科大学 法医学教室
7) 奈良県立医科大学 疫学・予防医学講座
掲載誌:Pediatric Allergy and Immunology
https://onlinelibrary.wiley.com/journal/13993038
掲載日:2026年9月21日
DOI :https://doi.org/10.1111/pai.70496
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