VR・ARゴーグル市場の販売台数前年比(%)とメガネ型の販売台数構成比(%)
先日、久々に中国・深センの華強北(ファーチャンペイ)を訪れた。文字通り足が棒になるまで歩きまくって、後で歩数計を見たら2万3000歩。そりゃあくたくたになるわけだ。しかし秋葉原の30倍ともいわれる街の全貌は依然としてまだよく分からない。平面的に広がるだけでなく、ビルの上層階まで、こまごましたパーツショップがぎっしり詰まった様を見ると、感覚的には100倍の規模。電気好きにとっては世界一ワクワクする街だ。その華強北で今回特に目立ったのが、メガネ型デバイスの台頭。あちこちでメガネを売っている。前回来た時には、全く見られなかった光景だ。なんでも現地では、「百鏡大戦」と呼ばれるメガネ型デバイスの大量販売ブームが起きているんだとか。
実は深センは、世界有数のメガネの産地でもあるという。それに電気街が合体すれば、そりゃあメガネ型デバイスの大ブームになるわな、というわけだ。見たところ、日本円で1万円以下の安価な製品が多い。広く出回っている、共通フレームや共通基板に、マイクやスピーカー、小型カメラを寄せ集めたものが一般的だ。スマホのアプリ経由でクラウドAIに接続して使うスタイル。ほどなく淘汰がどんどん進み洗練され、そのうちスマホを凌駕する存在になるかもしれない。
振り返って日本ではどうか。実はメガネ型デバイスは、我が国でも急速に伸びている。全国2400の家電量販店やオンラインショップの売り上げを集計するBCNランキングで分析すると、この春以降、熱を帯びてきた。同ランキングのカテゴリーとしては「VR・ARゴーグル」に分類されている。特にこの5月、メガネ型デバイスに「Meta」が参入して以来、急激に市場が動き始めた。同社は以前から海外で販売していたが、技適取得やローカライズの完了を経て、満を持して日本市場に参入。6月にいきなりトップシェアに躍り出た。
同社は「Ray-Ban」や「Oakley」などの有名ブランドを擁する、世界最大のアイウエア企業、エシロールルックスオティカと資本業務提携。メガネ型デバイスを、スマートフォンに代わる次世代の端末と位置づけている。それだけに力の入れようは尋常ではない。Ray-BanやOakleyといった有名ブランド、さらにはMetaブランドでも次々と新製品を投入。普通のメガネと同様、完成度とファッション性を高めた。さらに複数サイズで製品を展開。これまでにない「面戦略」で一気に市場を塗り替えてしまった。9月時点でのMetaの売れ筋は、自社ブランドの「Meta Glasses」だ。カメラやマイク、スピーカーを備えAI機能も充実。ただし画面はない。その代わりカメラと音声でのやり取りに特化した製品だ。
「Meta以前」は、「XREAL」が極めて大きな存在感を誇っていた。この5月まで断トツで他を圧倒。25年7月には台数シェア97.2%を記録するなど、ほぼ独占状態が続いていた。代表的製品「XREAL One」は、同社が得意な、外付けディスプレー的な存在の製品。画面の3DoFと呼ばれる、空間に画面を固定する機能やウルトラワイド表示を実現したことで販売を伸ばした。しかしこの9月では、僅差ながら販売台数シェア4位に後退している。
代わりに伸びているのが、「Rokid」。9月の販売台数ランキングでは2位に浮上した。売れているのは「スマートAIグラス」。ワイヤレスで常時装着するタイプのAIスマートグラスだ。クラウドファンディングサイト、Makuakeで応援購入総額6億円を超えた。その名の通りAI機能が特徴で、見たり聞いたりしたものをAIが認識。音声と視界内の緑色ディスプレーで返答する。リアルタイム翻訳も可能で、リアルタイム文字起こしもできる。内蔵カメラで目線の画角で4K静止画、3K動画の撮影にも対応する。一方「VITURE」は、XREALに似た製品でシェアを伸ばしている。「Pro 2 XRグラス」が売れており、9月にXREALを抜いて3位に上がってきた。
AIの激烈な進化に伴って、AI端末、センサーやディスプレーとしてのメガネ型デバイスは、今後ますます拡大するだろう。私のように、もともとメガネをかけているなら非常に魅力的だ。しかし、裸眼族にとってはどうだろう? 本来、裸眼族の方がメガネ型デバイスに向いている。何といってもレンズをどうにかする必要がないからだ。なんなら、レンズなしでフレームだけにしてもいい。メガネ族は、視力に合ったレンズを入れる必要がある。ただ、日常的にメガネをかけていない人にとって、メガネ型デバイスは「単に煩わしいもの」になりかねない。AI機能が、その煩わしさを超えることができるかどうかが、普及のポイントになるかもしれない。(BCN・道越一郎)







