セキュリティを「品質の中核」に据える転換が鮮明になる一方、開発現場の課題は「テスト」ではなく「統合・調達」に集中し、規制への見方も1年で大きく改善するなど、次の課題は実行体制の構築へ

東京 ― 2026年10月27日 ― BlackBerry Limited(本社:カナダ オンタリオ州、CEO:ジョン・ジアマッテオ、NYSE:BB、TSX:BB)の事業部門であるQNXは本日、日本を含む8カ国の自動車ソフトウェア開発者1,100名(うち日本100名)を対象とした第2回グローバル調査「Under the Hood: SDV Developer Report 2026」の日本市場分析を発表しました。本調査は、2025年11月に日本版を発表した前年調査の継続版です。

日本のソフトウェア定義車両(SDV)開発現場では、サイバーセキュリティを最大のリスクとみる回答が1年で19ポイント上昇し、60%という結果となり調査対象8カ国で最も高くなりました。この危機感は、今後、最も重要になるスキル、AIが最も影響を与える領域の回答にも一貫して表れており、セキュリティを開発の後工程ではなく「品質の中核」として捉え直す転換を示しています。あわせて、開発の遅れの原因を「規制」ではなく「自社の開発プロセス」に求める傾向が強まり、課題は「統合・調達」と、協業を支える社内体制に集中していることも明らかになりました。規制環境への見方は前年から大きく改善した一方、規制変化への対応に「非常に自信がある」と答えた割合は低下しており、認識の転換に実行体制が追いついていない構図が浮かび上がっています。

日本の主な調査結果
- SDV展開の最大リスクとして「サイバーセキュリティ脆弱性」を挙げた割合は60%(グローバル平均47%)。前年の41%から19ポイント上昇し、調査対象8カ国で最も高い
- 今後5年で最も重要なスキルは「サイバーセキュリティ」64%(前年53%)が1位、「AI/ML統合」63%(グローバル平均49%)が2位
- AIが最も影響を与える領域は「サイバーセキュリティ」30%が1位(グローバル平均15%・4位)
- ソフトウェア開発プロセス最大の課題は「統合の複雑さ」・「長い開発サイクル」(各45%)。グローバルにおける最大の課題として挙げられた「デバッグ・テスト」は日本では29%・7位。「調達・ライセンス取得の遅れ」「SoCの柔軟性不足」がいずれも1年で16ポイント上昇
- 業界横断的な協業を「重要」とする割合は97%(前年83%、グローバル平均95%)に上昇。一方「自社が協調的な開発プラクティスを支援している」は77%(グローバル平均89%)で、認識と実行に20ポイントの差(グローバルは6ポイント)
- 新規制が開発スケジュールを「加速した」は43%(前年32%)、規制の枠組みはSDVの進化に追いつけるとの回答は85%(前年67%)に改善

グローバルの主な調査結果
- 開発者は平均して工数の35%を、差別化機能の開発ではなく基盤ソフトウェアの統合作業に費やしている。75%が「共通で再利用可能なソフトウェア基盤の欠如がSDV開発を遅らせている」と回答
- 将来への最大の懸念は「セキュリティ脅威」48%で1位。83%が3年以内にSDVがサイバー攻撃の主要な標的になると予想
- 開発課題の1位は「デバッグ・テスト」44%(前年36%)。開発環境を「非常に良い」と評価する割合は30%から20%に低下
- AIを「変革的」とみる回答は36%から25%に減少し、「開発ワークフローに統合される」は55%から62%に増加。AIへの期待は過大な期待から実務への定着へ

1.サイバーセキュリティが「品質の中核」に ― 危機感はスキル・AIの優先順位にも一貫
SDVの展開における最大リスクとして「サイバーセキュリティ脆弱性」を選んだ日本の開発者は、2025年の41%から2026年には60%へと19ポイント上昇し、グローバル平均(47%)を13ポイント上回って調査対象8カ国で最も高くなりました。3年以内にSDVがサイバー攻撃の主要な標的になると考える割合も87%(グローバル83%)に達しています。

注目すべきは、この危機感が単なる不安ではなく、開発の優先順位の明確化として表れている点です。今後5年で最も重要になるスキルとして「サイバーセキュリティ」を挙げた割合は前年の53%から64%に上昇して1位となり、AIが今後3年で最も大きな影響を与える領域としても「サイバーセキュリティ」(30%)が1位に選ばれました。グローバルではこの項目は15%で4位、中国(7%)・韓国(8%)と比べても日本の回答は際立っています。リスク認識、スキル投資、AIの適用先が一貫してセキュリティに向いていることは、日本の開発現場がセキュリティを後工程の対策ではなく設計の起点に据えつつあることを示しています。

AIが「変革的、あるいは大きな役割」を果たすとの回答は日本75%(グローバル87%)とやや控えめですが、AI/ML統合を重要スキルとする回答は63%とグローバル(49%)を14ポイント上回っています。日本の姿勢はAIへの消極性ではなく、安全とセキュリティの基盤を固めたうえでAIを順序立てて導入するという設計思想の表れと読むことができます。

背景には、規制の適用範囲拡大と脅威の高まりが同時に進行している状況があります。日本では、OTA(無線通信)によるソフトウェアアップデートに対応する車両について、新型車は2022年7月から、継続生産車は2024年7月から、自動車のサイバーセキュリティに関する国連協定規則第155号(UN-R155)への適合が義務付けられています(注1)。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」では、ランサム攻撃が5年連続で組織向け脅威の1位、サプライチェーン攻撃が4年連続で2位となり、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位に入りました(注2)。

図1:SDV展開の最大リスク「サイバーセキュリティ脆弱性」

2.日本の開発現場の重荷は「テスト」ではなく「統合・調達」 ― 求めるのは統合・検証時間の削減
本調査でグローバル全体の最大のテーマとなったのは、開発者が工数の平均35%を、差別化機能の開発ではなく基盤ソフトウェアの統合作業に費やしているという実態です。日本も同水準(35%)ですが、負荷の中身はグローバルと異なります。

グローバルの課題1位が「デバッグ・テスト」(前年36%→44%)である一方、日本では同項目が29%と8カ国で最も低くなりました。最大の課題は「統合の複雑さ」(前年36%→45%)と「長い開発サイクル」(前年46%→45%)で、「調達・ライセンス取得の遅れ」(前年23%→39%)、「SoCの柔軟性不足」(前年21%→37%)もいずれも16ポイント上昇し8カ国最高となりました。世界が「検証」段階で苦労する一方、日本は「部品を揃えて組み合わせる」段階で足止めされている様子が浮き彫りになりました。

日本の開発者は「ソフトウェアの再利用拡大」(21%、グローバル38%)よりも「統合・検証時間そのものの削減」(43%、グローバル30%)を求め、「事前統合済みの商用プラットフォーム」の採用率も17%とグローバル平均の8%の2倍以上の数値でした。開発遅延の原因も、2025年の「規制の遅れ」(52%)から2026年は「非効率な開発プロセス」(60%)と「人材不足」(57%)に代わりました。「消費者の非現実的な期待」を挙げた割合は19%(グローバル39%)と8カ国で最も低く、日本の開発者が遅れの原因を外部ではなく自社のプロセスと人材に求めていることを示しています。

協業についても同じ構図が見られます。業界横断的な協業を「重要」とする割合は83%→97%に上昇しグローバル平均(95%)と並びましたが、「自社が協調的な開発プラクティスを支援している」は77%(グローバル89%)にとどまり、認識と実行の差は20ポイント(グローバルは6ポイント)に達しています。

図2:協業の重要性認識と自社の支援の差

3.規制は「設計の前提」へ ― 見方は前向きに転じ、次の課題は対応体制
グローバル全体では、2025年に導入された約700件の車載技術関連の新規制・法案により開発スケジュールが「遅延した」との回答が3分の1で前年から変わらず、規制負荷への効率的な対応方法を多くの開発者がまだ見出せていない状況が続いています。その中で日本は、規制への見方が前向きに転じた数少ない市場です。

新規制が開発スケジュールを「加速した」と答えた日本の開発者は前年の32%から43%に上昇し(グローバル39%)、「遅延した」は35%から27%に(グローバル33%)減少しました。規制の枠組みがSDVの進化のスピードに追いつけるという回答も67%から85%へと18ポイント改善し、前年調査でグローバル平均を示した85%の水準に到達しました。日本ではUN-R155/156の継続生産車への適用が2024年7月に始まるなど規制が具体的な期限として機能しており、規制が「対応不能な障害」から「設計の前提条件」へと位置付けを変えつつあることがうかがえます。

一方、規制対応に「非常に自信がある」と答えた割合は、前年の16%から9%に低下しました(グローバル30%)。「ある程度自信がある」を含めた合計では74%が自信を示しており、規制対応への自信が減る傾向はグローバルでも同様(39%→30%)です。世界でさまざまな規制が生まれる中(注3)、規制対応が専門化・複雑化し、自社単独で担うことの難しさが増していることの表れと考えられます。日本の開発者が最も対応が困難とする規制は「サイバーセキュリティ」(56%、前年49%)と「AI/ML関連」(41%、グローバル26%)でした。


図3:規制対応への自信 ― 日本の前年比(「非常に」「ある程度」の内訳、2025→2026)とグローバル平均の対比


規制環境への見方は改善が進む一方、対応する実行体制の整備は道半ばであり、日本のSDV開発現場が持つ強みと次に取り組むべき課題が浮き彫りになっています。

QNX カントリーセールスディレクター Japan オートモティブ 松岡秀樹は、次のように述べています。
「今回の調査結果は、日本のSDV開発現場が持つ強みと課題の両方を数字として裏付けるものです。日本のお客様の強みは品質と安全に対する意識の高さ、そして作り込みの丁寧さです。サイバーセキュリティへの危機感が高まる一方で、AIに対しての慎重な姿勢がみられます。これは、セキュリティを品質と同義に捉える日本の開発文化の表れであり、SDV時代の競争力の源泉になると考えています。

一方で、規制への見方が前向きに変わりつつあるのに対し、対応する自信だけが追いついていないという結果は、危機感の高まりに社内の体制整備が追いついていないことを示しています。この慎重さは決して遅れではなく、日本の開発現場が積み重ねてきた資産です。私たちQNXは、あらかじめ機能安全・セキュリティ認証を取得した基盤ソフトウェアを提供することで、統合や規制対応にかかる負荷を軽減し、日本のお客様がこの慎重さという強みを、差別化機能の開発スピードに転換していけるよう支援していきます」

QNXは、機能安全・セキュリティ認証に対応したリアルタイムOS、ハイパーバイザー、ミドルウェアを、あらかじめ統合して動作する状態の基盤ソフトウェアとして提供しています。QNX OS for Safety 8.0は、TUV RheinlandによりISO 26262 ASIL D、IEC 61508 SIL3、IEC 62304 Class C、ISO/SAE 21434の認証を取得しており、顧客は基盤部分の統合と認証を繰り返す必要なく、自社が差別化する領域の開発に工数を振り向けることができます。QNXのマイクロカーネル設計は、セキュリティと機能安全を製品完成後に追加するのではなく設計の最初の段階から組み込む考え方(Security-by-Design/Safety-by-Design)に基づき、安全認証済みの領域とAIなどの新しいワークロードを分離して動作させることを可能にします。

注釈
注1  国土交通省「サイバーセキュリティ及びプログラム等改変システムに係る基準(UN-R155及びUN-R156)」令和2年度第2回車両安全対策検討会 資料4-3(令和2年11月20日):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001844079.pdf
注2 IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」プレスリリース:https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20260129.html
注3 経済産業省「モビリティDX戦略」2025年のアップデート:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/jido_soko/pdf/mobilitydxsenryaku2025.pdf

調査概要
本調査は、QNXの委託を受けた市場調査企業であるOnePollが主体となり、日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、中国、韓国の8カ国の組み込み自動車ソフトウェア開発者1,100名(うち日本100名)を対象に、Market Research Societyの行動規範に従ってオンラインで実施されました。データの収集期間は2026年7月20日から8月4日です。すべての参加者はダブルオプトインのもと調査に参加し、調査の長さと複雑さに応じた金額が支払われました。本調査はOnePoll調査チームによって監督・編集されました。OnePollはMRS Company Partners、ESOMARの法人会員、およびBritish Polling Councilのメンバーです。前年(2025年)調査は日本を含む8カ国1,100名を対象に2025年7月25日から8月5日に実施しており、対象国の構成が一部異なるため、グローバル平均の前年比較は方向性を示す参考値として記載しています。

グローバル調査結果をもとにした日本語版レポートは、こちらよりご覧いただけます。

詳細は、QNX.comをご覧いただくとともに、@QNX Newsをフォローしてください。

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