なぜ、100円の本を販売することに?
このように、一冊一冊、とても細かく、また読みやすく作られているダイソーの100円本ですが、そもそもなぜ、100円の本を販売することになったのでしょうか?
大創出版の専務取締役 西田大さんにお話を伺いました。
西田大さん(以下、西田):「弊社の社長は、元々教科書会社の出版社に勤めていました。ですが、“少子化”の問題が深刻になり、新しい販売先を探していたところ、知人から100円ショップの話を聞いたらしく、「ダイソーはすごくたくさん量を売る会社だよ」ということを教えて頂いたのだそうです。その当時ダイソーは、「本」という分野が全くなかった。そこで提案して制作したのが今も大人気の「ミニミニ辞典」(現在はミニ辞典)シリーズです。これがほぼ第一弾。「ミニミニ辞典」シリーズを本の分野でやったところ、非常に反響があり、メディアにも取り上げて頂いて、おかげさまですごく売れました。
ですが、相当の量をつくらなければ、この頁(208頁)数で100円というのは難しい。当時ダイソーの中でも非常に大きな発注になり、約1200万冊をトラック20台くらいで何日間にわけて納品しました。」
―――結果的に、非常に大きなビジネスになり、それを機に、いくつか「本」というテーマを提案するようになったのだとか。
西田「それを機に平成13年、大創出版が設立されました。そこからはもう、ミステリーやロマンス小説まで、実に様々な本を制作しました。」
―――ちなみに人気がある商品って……?
西田:「商品の歴史で言うと、「ミニミニ辞典」がすごく売れました。その次は出版とはずれてしまいますが、PCゲームです。その次が「CDで学ぶ会話シリーズ」で、約20刷まで行きました。あとは「学習ドリル」ですね。ドリルって、子どもを持つ親御さんじゃないと買わないので、「売れるのか!?」と心配されたのですが、計算ドリル、漢字ドリル共に非常によく売れました。
ちなみに今人気があるのが、幼児系商品の「幼児のおけいこシリーズ」、 「シールブック」、パズル誌や「ナンプレブックシリーズ」です。」
100円という価格で本が販売できる秘密
―――でもこんなに細かく、また読みやすく、読み応えもたっぷりで作られている本を、100円という価格で販売するのは非常に難しいはず……。一般の本にあるカバーや売上カード(スリップ)、帯、出版案内がないため、少しは製本代が安くなるのかな? また書店には流通しないので、卸業者である取次店と書店の取り分がないからかな? 驚異的な刷り部数で販売しているから? ……と考えても、まだまだ100円で作れるとは考えがたいのですが……。
西田:「100円で本を販売するのは、徹底したコスト管理が必要ですし、正直厳しいです。
例えば「紙」。もっと良い紙を使いたのは確かですが、ある程度コストを合わせなければならないので、シリーズが違っても、統一した紙を使っています。サイズもある程度合わせています。
あと、「印刷」ですが、書籍って、16の倍数の頁数で作るのが基本ですよね。ですが、うちのメインの印刷会社さんは特殊な機械を使っていて、32の倍数が得意なんです。32の倍数で作れば、16の倍数で作るよりコストダウンができる。
また、取次の会社がいない、というのは確かに大きいかもしれませんが、紙代、印刷代、編集費、一般管理費等、そういうのが全部入って利益を出さなければならないわけで。色々な努力が必要です。
それでも我々編集サイドは、もうちょっと頑張りたいっ! と言うのが本音です(笑)。どの会社もそうなのだろうけど「制作側」と「管理側」の戦いは常にあります。今大人気の「シールブック」も製造会社を探すのに、4年くらいかかったんですよ。」