婚約破棄された女性を支えたものは……?

次にご紹介したい本は、結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった「明日羽(あすわ)」という女性が登場する『太陽のパスタ、豆のスープ』(宮下奈都/集英社文庫)という小説です。

失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは「ドリフターズ(やりたいこと)・リスト」の作成でした。

髪を切る、エステに行く、服を買いまくる、化粧品をそろえる……明日羽は「きれいになる」こと以外にも「毎日鍋を使う」「やりたいことをやる」「お神輿」「玉の輿」「豆」など、一見何のことかわからないこともリストに書き加え、自分の心を見つめ直していきます。

自分はこれまで、婚約者に頼ることが多くて、仕事を本気でしていなかったのではないか。簡単に実行できるやりたいことでさえ、やってこなかったのではないか。本当に後悔なく過ごしてきたのか。周りで支えてくれている家族や友人が、何を考え、何を求めているか、実は全然わかっていなかったのではないか……。

家族や友人のさりげない優しさに支えながら、どん底にいる明日羽が、一進一退で自分と向き合い、前を向く過程が描かれています。

どんな経験も全部自分のものだし、そこからまたどんな選択をするのか決めるのも自分。
自分の心としっかり向き合わせてくれる、そっと背中を押してくれる素敵な一冊です。

腹を決めた女に怖いものなんかない。 アラサー女子2人による前代未聞の殺人劇!

「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
3冊目にご紹介したい本は、DV男を一人殺すことを決意した、アラサー女子二人が前代未聞の事件を起こすミステリー『ナオミとカナコ』(奥田英朗/幻冬舎)という小説です。

こちらは恋愛小説ではないのですが、女性の大胆さや狡猾さが、これでもか! というほどテンポよく描かれており、読後は「腹をくくった女に怖い物なんかない!」と、どこからか不思議な力が満ちあふれてくるのでおススメです。
失恋した時は恋愛小説を読むより、一瞬たりとも目をそらせない、続きが気になって仕方がない別世界のお話を読んだほうが、元気になれることもあります。

登場するのは、デパートの外商部で、富裕層の使い走りのような仕事をしながら、憂鬱な日々を送るOLの「直美」。そして、夫のひどい暴力に耐えながら、静かに息をひそめるように暮らす専業主婦の「加奈子」です。学生時代からの親友である、30歳を目前にしたナオミとカナコが、受け入れがたい現実に追いつめられ、暴力をふるカナコの旦那を「排除」することを決め、実行に移す様子が描かれています。

ナオミは、仕事で出会った中国人をヒントに、大胆すぎる完全犯罪を計画します。前半では、大きな幸運も作用し、怖いくらいに計画が上手く運んでいるように思えるのですが、後半では、鋭い勘を持つ人間も登場し、いくつもの計画の穴が浮き彫りになり、二人は何度もピンチに陥ります。

しかし、腹を決めた女はとても強い! 全ては泥沼の日常を抜け出して、人生を取り戻すため、二人は心臓が早鐘を打っていても、顔色ひとつ変えず「わたしたちは、絶対に捕まらない」と信じ続け、敵をだまし抜いていきました。

とんでもない事件を起こした二人ですが、ここまで徹底的にやられると、爽快ささえ感じてしまうのもまた事実……。
ギリギリまで追いつめられても決してヘコたれず、自分の信じる幸せの方向へ、ひたすら走りぬけた二人から、パワーをもらえること間違いなしだと思います。
テレビドラマ化も決まっているとのことで、楽しみです!