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 1941年製作のディズニー・アニメ映画『ダンボ』を実写化したファンタジーアドベンチャー『ダンボ』が公開された。大き過ぎる耳というコンプレックスを翼に変えて空を飛ぶ子ゾウのダンボが、サーカス団の仲間たちと共に、母ゾウのジャンボの救出に挑む姿が描かれる。

 本作の監督は「お気に入りのディズニーアニメは『ダンボ』」と語るティム・バートン。確かに、彼の映画には異形の者やアウトサイダー、個性的なキャラクターが登場するものが多い。その点は『ダンボ』という題材ともぴたりと重なる。まさに彼は本作にはうってつけの監督だったのである。今回は彼へのインタビューから、印象に残った部分を抜粋して紹介しよう。

 まず、本作についてバートンは「周りから奇妙に見られたり、他の者とは違う、合わないと思われているという点でダンボというキャラクターをとてもよく理解することができた。また、他者からは欠点に見えることを肯定的に捉えることによって、それは美しさに変わるという点で、大きなインスピレーションを得た」と語った。

 また、本作の舞台となるサーカスの描写は、『ビッグ・フィッシュ』(03)など、サーカスへのこだわりや憧れを描いた彼の過去の映画をほうふつとさせるところもある。そもそもサーカス自体が異形の者やアウトサイダー、個性的なキャラクターの集団なのだから、さぞや思い入れが強いのかと思いきや、「実は子どもの頃、サーカスはあまり好きではなかった」という意外な答えが返ってきた。

 バートンは「動物が捕らわれておりの中に入れられているのが嫌だったし、ピエロや、団員たちがやっている芸も怖いと感じていた。オリジナルアニメの、サーカスにいる動物たちはとても幸せそうに見えたが、今回は動物たちがサーカスに使役されていることをきちんと描き、より現実に近いものにした。野生動物は全てCGで処理し、動物はおりに入れるものではないというメッセージもこめている」と明かした。

 続けて「ただ概念としては“こんな家から逃げ出してサーカスに入るんだ”というフレーズがとても好きだったし、“居場所のない者や異形の者、仕事のない者が、そこに集まって何かを成し遂げる”というイメージにも引かれた。そういう思いが私の映画に出ているのだと思う」とも語った。

 ところで、本作は、最近のバートン映画の常連であるエバ・グリーンの他、『シザーハンズ』(90)以来のアラン・アーキン、『バットマン・リターンズ』(92)以来のマイケル・キートンも顔を見せたが、最もバートンと縁が深いのはサーカス団の団長を演じたダニー・デビートだろう。

 バートンは「ダニーは『バットマン・リターンズ』ではサーカスのギャング団を率い、『ビッグ・フィッシュ』ではサーカス団の団長の狼男の役を演じた。今回もダンボが生まれたサーカス団の団長役。だから『ダンボ』は、私と彼にとっては“サーカス3部作”の最終章なんだ」と語った。ということは、サーカスを舞台にしたバートン映画はもう見られないのだろうか。だとすればとても残念だ。(田中雄二)