福岡県北九州市に住む女子高生4人組が、自転車で1000キロ離れた東京のクリープハイプのライブを観に行く!
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015でスカパー! 映画チャンネル賞とゆうばりファンタランド大賞(観客賞)の2冠に輝いた『私たちのハァハァ』はそんなシンプルな設定の、ありそうでなかった女子たちの青春ロードムービー。
主演の4人はほとんど無名で、人気コミックの映画化でもない完全オリジナル・ストーリーだが、この時代を生きている若者たちの生々しい感情や息吹きを焼きつけた嘘のない映像と彼らが実際に聴いているサウンドが散りばめられた本作は、“自分たちの映画”を待っていた同世代のハートをとらえて大ヒット!!
だが、それは偶然ではない。
メガホンをとったのはクリープハイプとタッグを組んだ『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)や『ワンダフルワールドエンド』(15)などで知られる弱冠29歳の松居大悟。
『私たちのハァハァ』は、ビジネス重視の“いまの映画業界”に異を唱える彼が、“いまの感性と手法”で描いた“同時代”の青春映画”。その成功は、時代に要請された証でもあるのだ。
果たして、そこに込められた松居監督の想いとは? その自由かつクリエイティブな独自の制作スタイルに迫りながら、その内なる野望を直撃した。
こだわり1:自身が感じていたことから着想
『私たちのハァハァ』の企画は、プロデューサーが何気に発した「地方の女の子が主人公の劇映画を作りたいよね」というひと言から始まった。
「そのときに僕は僕で、クリープハイプや大森靖子といった音楽関係の作品を通じてバンドのファンの子たちのエネルギーはスゴいと感じていて、この子たちの物語を作ったら強いものになるんじゃないかなと思っていたんです。それが、プロデューサーから出た話と繋がって、地方のバンド好きの女の子たちが東京に行くというアイデアが閃いたんです」
そこには福岡出身の松居監督が当時感じていた素直な思いも反映されている。
「福岡にいるときにテレビで東京の情報ばかり流れているのを観ていて、何だかな~? と思っていたことがあって。東京では当たり前のことが、地方では当たり前じゃないんだよというその感覚も描きたかったんです」
こだわり2:本物の女子高生をVineでキャスティング
キャスティングにももちろん監督のこだわりがある。
「女優さんは使いたくなかったんです。知っている女優さんが出てきただけで、映画を観る同世代の人たちが自分たちの物語じゃないと思って、作品を客観的に見ちゃいますからね。だから4人のうち、文子を演じてくれた三浦透子さんだけは女優のキャリアがあるけれど、そのほかの3人は演技経験もほぼゼロ。ただし、撮影当時は全員現役の女子高生で、そこにはこだわりました」
オーディションもしたようだが、中にはいまっぽい出会いをした子も。
「さっつんを演じた大関れいかさんですね。僕が普通にネットサーフィンしていて、Vine(6秒ループ動画を投稿できるアプリ)で見つけた彼女が単純に面白かったんです。女優さんじゃない方がいいなと思ったときに、Vineの存在に気づいて、当ってみたんですよ」